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2017.06.06映画の琴(コト)『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス 』

2017.06.07

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー- リミックス
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』(2017年)

主人公は地球生まれだが、父親は異星人。子供のころ宇宙海賊に誘拐される。今は銀河で、ならず者異星人たちとチームを組んで物騒な何でも屋家業。チームの破天荒なキャラクターの魅力に70年〜80年代カルチャーの雰囲気を反映させたコメディ色の濃いSF冒険作品である。主人公の母親の形見の「カセットテープ」から流れる名曲ポップミュージックも本作のとてもいいアクセントになっている。本作はガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014年)の続編。

SF作品であるので、ビジュアルは魅力のひとつ。全体的にコテッとした過剰な感じの美術は 新しめ(70年台〜80年代)のレトロ風味で楽しい。基本コメディ・タッチなので安心して観ることができる。会話の応酬もおもしろい…ただ、それだけけではただのおバカ映画で終わってしまう。本作ではキャラクターたちにに「人と人」の関係性(つながり)というのを、(過剰なほど)繰り返し語らせることによって、考えさせるフックを作っている。それは、あまりにも「正論」なのだけど、それをどこまでもおバカなコメディな中に入れることのよって、印象に残ることに成功している。そこには、人生を笑い飛ばしながら「正しいことをしよう」というメッセージを感じる。正直、僕の感想は大傑作とまでいえないけど、また観たくなるのは本作の根本にある「生真面目さ」を味わいたいのだと思う。

ishikawa  Text by アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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2017.06.04映画の琴(コト)『スター・トレック ビヨンド 』

2017.06.04

startrek
『スター・トレック ビヨンド 』(2016年)

1960年代の傑作SFテレビシリーズ。「スター・トレック」その人気から劇場映画も作らている。本作は、オリジナルを新キャストで制作したリブート版の3作目。一作目は、新キャストによる導入編として及第点+アルファな仕上がり。そして、2作目はカンバーバッチという実力派が、ノリノリで敵役を熱演。新キャストの定着もあって、なかなかの傑作になったと思う。さて、問題は3作めの本作目である。以下、重要な内容に触れますのでご注意を。

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まず、結論からいうと、3作目の中で一番つまらなかったな、というのが素直な感想。なぜか、というところを書いていく。まず、スタートレックのキャスト以外の大きな魅力となっている主人公らが乗り込む宇宙船エンタープライズ号。これが早々にほぼ完全に破壊されてしまう。破壊される自体は別に悪くないし、リブート以外のシリーズでは何回かあった。でも、それは大活躍後のこと。本作のようにほとんど活躍しないまま破壊されてしまのはがっかり。やっぱり、エンタープライズ号は本作の「主人公」だし活躍を観たかった。また、その中でしか描けないキャストのドラマもあると思う。

次に本作は、宇宙船を失った結果、ほとんど場面は敵惑星の場面となる。これもなかなかアクションが中心で見応えがある。ただ、キャストがはなればなれになっていて、どうもテンポが良くない。分かれることによって、エピソードを分散させて見どころ作っている。でも、悪くはないのだけどそんなにも良くない。スポックとマッコイのエピソードもいい感じ。これも古くからのファンには楽しいけど、はじめて観た人には感じるものは少ない感じじゃないかな。

アクションは、CG等を駆使。きっと劇場で見ればかなり迫力があるかと思う。これが本作の最大の見せ場だと思う。つまり、スタートレックを知らない人にもしっかり楽しめるというのは本作のコンセプトか。

今回の悪役について。前作(カンバーバッチ)と比べるのは酷なんだけど、それにしても魅力に乏しい。ほとんどまるごとの造形メイクで、魅力ある悪役というのはなかなか難しい。よほど、ドラマを重ねなければ。それで、ラスト近くでまぁ、悪役なりの「理由」は明らかになる。それは、本作のテーマにもつながっているのもわかる。でも、なんか弱いよななぁ。キャラも動機づけも弱い。

そう、今回のテーマ。まあ、作品の緊張感を持たせるためか、カークとスポックに「今の仕事への疑問」を持たせている。これも僕には「えっ、もう飽きたの?」という感じで唐突だった。うーん、以上辛口でした。でも、リブートのキャストはとてもいいと思う。メカニックデザインや美術もやや過剰だけど悪くない。次回はぜひぜひ「エンタープライズ」の活躍を期待したいです。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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2017.06.1 映画の琴(コト)『人生フルーツ 』

2017.06.01

人生フルーツ
『人生フルーツ 』(2016年)

本映画で、僕は一番印象に残っているのが、主人公夫妻の夫で元建築家である津端修一のもとで働いていた部下のコメントである。その内容は「なんでスローライフという方向にいってしまったんだろうね。ほかにも方法はあったと思うけど…」という内容を話していた。この人物は本作品で一番感情移入しやすい人である。「(津端修一が)勝手に職場に来なくなるので困った」という話も僕にはうなずけた。

本作に描かれた津端夫妻の生活は本当に素晴らしい。高齢で元気なのも、この生活スタイルが関連していると考えると、自分の生活に危機感も生まれてくる。

戦後、大きく新しい豊かな住宅地のグランドデザインを手がけ、それが意に反して結果的に「豊か」がすっぽり抜け落ちた時に、その地に家をかまえスローライフ決意したひとつの夫妻。正直「そこまでしないといけないのだろうか?」と感じる自分もいるのである。疑問が湧き出る。本作はどういう気分で鑑賞すればいいのだろう。多分、選択肢は2つ。自分に関係があるか、ないかでわけることである。

「ない」で考えると気持ちは楽になる。「あぁ、こういう人もいるんだ。こういう人生はいいな」で終わることができる。そして、変わらない日常に戻る。これはいい。「ある」と考えたときが苦しい。では、自分もこの夫妻を見習わないといけないのだろうか。スマートフォンを捨てて、劇中に出てきた黒電話にしないといけないのだろうか。ハガキでコミニュケーションしないといけないのか。一軒家をかまえ庭で100種類の植物を育てる。でも、TVはあってもいいのだな等と考える。これは息苦しい。つらい。

そして、この文章の最初に触れた、かつての部下の人のコメントを思い出すのである。「ほかの方法はなかったのか」。この夫妻は現代の特権階級である。誰よりも豊かな生活をしている。そして、誰もが真似のできない生活をしている。勤め人という立場で豊かな住宅地をデザインして、それができなかった時に津端修一は「自分の家」で理想の家をデザインし、豊かな生活の実践をはじめた。そして、それは誰もが羨む人生(フルーツ)となった。

しかし、同時にそれをドキュメンタリー映画の中に理想を眺める僕達はどうすればいいのだろう? 僕はここの少し突き放された気持ちになるのだ。この夫妻に続いて行動しないといけないのか。それは多分、僕には無理だと思う。僕ができるのは、この夫妻の物語を美しい理想と記憶にとどめながら「ほかの方法」を模索するぐらいである。津端夫妻の豊かで美しい生活を横目で嫉妬し「他の方法」も考えてよ、と思う弱い自分を確認するのである。
本作は現時点でシアターキノで延長上映中である。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

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