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012 ALL IS LOVE


012 Mar.2000."HOUSE MUSIC × SAPPORO ART WORKS SPECIAL ISSUE VOL1. ALL IS LOVE"

(INTRODUCTION SPECIAL 012)

    2月の某広告代理店にて。中野さん(後述)から手渡されたパーティフライヤーに僕の名がクレジットされていた。……? スペシャル・サンクス? 何もしてないぞ! あっ、でも、スペシャル・サンクスって、案外、何もしてない人、なんとなくそこにいたような人が、ほかにクレジットできるカテゴリーがない場合に載ったりするもんだし、まいっか。……でも、それにしても、ホントに何もやってないな。なんとなくもそこにいなかったよな。よし、取材しよう。N2の石川氏に企画を提案。「あ、次の特集、なにも考えてないから」なんて、逆にお願いされてしまった。てな経緯で、今回はN2をジャックいたします。

Text & Photograph by
MASASHI OSAKA(Absoulute 310kommunity)


    始まりは……そう、1月の某米風亭。というか、米風亭。「2月にね、パーティをやることになったの。プレシャスホールで」。白ワインをグイグイやりながら、中野さんが語り始めた。中野さんはいわゆる広告業界の人だ。もうちょっと言えば、コピーライターだ。ついでに言うと、美果さんだ。「エリーが言い出しっペで、写真のニシくんと、テイタテイトっていう、家具を作ってる2人と、モリモトっていううちのコピーライターと……」。ちなみに、「エリー」とは、 AIR-G'でおなじみのエリーさんだ。でも、僕にとっては「エッリーデスッ!」のエリーさんだけど……。とにかく、クラブという空間で、写真とオブジェと言葉と映像と、それにもちろん音楽がクロスオーバーするような場を作るということだった。

    手渡されたパーティフライヤーに、いちばん大きなサイズでプリントされていたフレーズが「All is Love」。これがパーティのタイトルだ。すべては愛? すべてが愛? ってことは、愛こそすべて? うーん、日本語ってのはまどろっこしい。たぶん、「All is Love」は、日本語にしても、「オール・イズ・ラヴ」なんだろう。「愛してるよ」なんてなかなか言えるもんじゃないが、「アイ・ラヴ・ユー」なら言えるような気がするし。でも、これ、今回参加している人それぞれに翻訳してもらうのは面白いだろうな、と思った。

    個人的な話だが、僕は広告が好きだ。「広告批評」とか「ブレーン」とか「宣伝会議」とか「広告」とか、その類の雑誌が、「スタジオボイス」の100倍好きだ。で、ほんの少しだが、広告関連の仕事をすることもある。札幌の広告業界にどれだけの業界人がいるのかは知らないが、その中でも、比較的見えやすいところで仕事をしている人を何人か知っている(存じあげている?)。向こうが僕のことを認識してくれているかどうかは、もちろん別問題だが。

    2000年2月22日。いっぱい「2」がある日。いっぱい雪が降った夜22時すぎ。ポータブルMDを鞄に忍ばせて、カメラを肩にぶらさげて、オレンジ色の扉を開いて、地下空間へ。「取材モードで来ました」と、迎えてくれた中野さんに告げた。人はまだ少ない。音量もまだ小さい。入り口付近はラウンジスペースといった感じか。壁には大きくプリントしたモノクロ写真が、スポットライトに照らされてならんでいる。女性の顔と海岸の顔。奥はダンスフロア。もちろん、ここにも写真がレイアウトされている。各写真には、5センチほどの間隔を空けて、透明のシート(OHPシートの巨大版?)が重ねられている。そして、そのシートに言葉(詩?)が赤く印字してある。

    ビールを飲む。中野さんにおごってもらったビールだ。言葉を読む。言葉の主は、中野さんと森本さん(後述)だが、どの言葉がどちらによるものなのか、クレジットはない。それがまた、想像力を掻き立てる。考えてみれば、俗に言う「クラブ」で、言葉に、正確に言うと、書き言葉に触れた経験って、酒を買うときのメニューくらいじゃないか? 音楽と写真と文字とビールが、ちょっと新鮮に僕の中で混じり合っている。そして、2缶目に突入。

    そろそろインタビューでも始めましょうか、と思ってたところで、今回、空間プロデュースをした2人組「WORKS SITO」の1人、所さんが帰ってしまうという。とりあえず、2人揃っての写真だけ撮らせてもらって、お話は小林さんに聞くことにした。

    なるほどー、「人」かぁ。そういえば、人が続々と増えてきた。入り口付近でのインタビューだったため、入ってきた人たちの顔が見える。「クラバー」なんて言葉があったが、まあ、そういう人たちが多い。が、ちょっと不思議な光景が目に飛び込んでくる。「オヤジ」なんて言葉を使ったら怒られてしまうが、そういう人たちがちょこちょこと地下空間に潜り込んでくるのだ。これはもう、現在のサッカー日本代表状態じゃないか。シュンスケからゴンまで、って感じで。(サッカー:N2辞書には存在しない言葉。世界一メジャーなスポーツ。あ、スポーツもN2辞書にない?) さて、次は写真を撮った西塚さんだ。

    酒井さんとは、40代(推定)の写真家だ。実は、西塚さんのインタビューをしている最中、その答えへのツッコミ役として?隣にいてくれた。「写真、ちょっと変わったんじゃない? 海の確信にふれてるような写真があるよね。ああいうのを撮るようになったのは、なんか共感するな」。西塚さんは少し照れながら、でも嬉しそうだった。写真で会話する2人。シュンスケからゴンへのスルーパス。世代の壁はない。

    フロアの音量が上がる。時計を見る。23時30分。明日の仕事は、8時20分にJR桑園駅に集合だ。僕にとっては、かなりのアーリー・モーニング! よって、地下鉄の終電で帰ろうと思っていた。終発を30分ほど延ばしてくれた札幌市交通局に感謝! というか、もっと延ばそうよ。ねえ? さあ、24時には地上に出なければ。インタビューを急ぐ。あと2人。次は、森本さんにしよう。おっ! 森本さんの隣に、デザイナーの寺島さんがいる。僕は寺島テイストが好きだ。さっきの酒井さんみたく、ちょっかい出してくれないかなぁ。と思ったら、逃げ去ってしまった。うーん、残念。でも、今度、飲みに連れてってくれるようなので、よしとしよう。では、森本さんに。

    ……やっちまった。トラック003。11分32秒。開始6秒後に無音、9分31秒後に復活。MICジャックの接触不良? とにかく、ほとんどRECされてなーい。印象的だったのは、「All is Love」とは?の質問に対して「出口と入口」と答えていたことだ。出口と入口……どうしてその順番? うーん、僕が今、出口を目指したいことは間違いないけど。ってどうでもいい。うん、どーでもよくなってきた。酔い加減もちょうどいい。交通局さん、やっぱもっと終発延長しましょうよ。僕は今夜はタクシーで帰りますけど。とりあえず、ちょうど隣にいた中野さんに話を聞いて、その後に森本さんにもう一度ご登場願おう。


    交流。ちゃんぽん。mixture。なんでもいいのさ。その言葉すら混ぜてしまえ! 交ちゃんture! うっ、ダサいので、この言葉はナシ。でも、混ぜてみなきゃ、わからんでしょ、いろんな可能性。表現のカテゴリー、別の場に生きる同世代、別々の世代。たまにはアウトドアライフ・イン・マインドを。N2石川氏にはホントのアウトドアライフを。ビールの次はウイスキーをロックでね。「交ちゃんture」で夜は深まっていく。25時40分。そろそろ森本さんを探そう。……いた。さっきとほぼ同じ場所にいた。「出口と入口」の話からリプレイ。

   「どこから入ってもいいし、どう解釈して出ていってもいいし」。例えば、僕の内外には、どれだけのドアがあるんだろう。よく出入りするドア、たまーにノックするドア、よく見かけるけど入ったことのないドア、まだ見知らぬドア。それらすべては、どこか1ヵ所につながっているんじゃないのか? ドアを開ければ開けるほど、自分の現在位置がはっきりしてくるような気がする。そして、その1ヵ所ってのは、現在の自分からの脱出口かもしれない。さあ、盛り上がりに別れを告げて、階段を上ろう。オレンジ色の扉を開こう。タクシーに乗ったときに理解した。出口から入口へ。僕はオレンジ色の手押し扉から出て、白い自動ドアから飛び乗った。そういうことだ。

    26時すぎ、それまでのクセが抜けない。タクシーの運転手にインタビューを開始。「この前な、狭い道でオレの車を勢いよく抜いていく車がいてな。なんだこのヤローって、追いかけて、その車を止めたのよ。そしたらよ、ウインドウ全面にスモークが張ってあってな。こりゃ、やばいことしたかなって。でも、ここまで来たら引き下がれないからよ。心を決めて窓をたたいたのな。そしたら、出てきたのが、かわいいおねえちゃんよ。許してやったわ」。僕にとっての「All is Love」とは、なんでも開けてみなけりゃわからない、ディスカバリーの精神、となった。






   

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