2013.03.30「東京タンバリン 札幌公演 彼岸花」感想

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東京タンバリン 札幌公演

彼岸花

作・演出:高井浩子

2013年3月28日〜30日
ターミナルプラザことにPATOS

 

 

グレーが重なる日々。

鮮やかな赤色のひと。


 

会場はライブハウスとしても使われる座席のないフラットな空間。中心に舞台セットとしてテーブル、椅子、照明だけでカフェの空間がつくられ、それを囲むように観客席がある。客と役者の距離がとっても近い。



人生30歳むかえるあたりから、何が事実で嘘なのか、良いか、悪いかわからなくなる。20代までのシロかクロかという価値観から、薄い〜濃いグレーのグラデーションの中で泳ぐように生きている。それはそれでいいと。意外と生活は不便にならない。グレーを少し彩る花、つまり、はかなくても信じられる美しいことがあれば、いいやと思う。もやもや、しながらも「まぁ、いいか」で1日が終われれば僕は生きていける。

 

東京タンバリンの公演 彼岸花 の舞台は「結婚式の2次会の打ち合わせ」という遊びのような仕事のようなグレーな集まりの3人。それは仕事ほどマジメさはいらないし、まったくやらないわけにもいかないコト。時間は当然、深夜の入口もみえる夜となる。場所も打ち合わせ仲間の営業中カフェというリラックスできるけど、しきれない場所。彼らしかいなカフェで、今日やっても、やらなくてもいい打ち合わせ。当然、話は脱線していく。

 

彼らの意識は、かつて同じ道を目指そうとしていた過去から、想い出、今のプライベートまですすむ。お互い知っているようで、知らない事。想い出に浸ってもいられない次の予定。彼らのぼんやりしていてシリアスな人生は山も谷があるが、止めることなく進んで行く。この瞬間にも。

それは僕が生きてる感覚に似ている。基本、居心地が悪いことなんだけど、そこに居心地があることが人生の実感なのかなと思う。人生を計る複数のスケールを持つことは、逆に楽になることかもしれない。視界はグレーになるけど。

 

いよいよ打ち合わせというところで、男が中座してしまう。

 

残された女性2人のは話はますます雑談になっていく。
そこに鮮やかな赤の服の女性が登場して、話はグレーに彩りをつける花となる。

 

本作の男女2人が歩くラストの流れはとても美しく、深いシリアスが横たわったまま、終わっていくのが素晴らしい。終わりの瞬間のポップ。人生を知れば知るほどグレーを理解するユーモアも必要だと心にしみる。

 

来年も彼らはまたこのカフェに集るかと思う。人生の居心地の悪さをそれぞれ抱えながら。
でも、それが人生だと彼らは知っているのだから。


花を大事にしよう、と思う。

 


Text by 石川 伸一(NUMERO DEUX)

 

「彼岸花」
作・演出:高井浩子
出演: 森啓一郎・青海衣央里・大田景子/屋木志都子
照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 宣伝美術:清水つゆこ
制作:一般社団法人ロゴス 東京タンバリン
当日運営:横山勝俊
主催:Real I's Production
助成:公益財団法人北海道文化財団

 

 

 

 

 

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2012.11.09-12.01 「クスミエリカ個展『白の虚像』」

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-----  札幌アート&カルチャー 行ってみて話をきく。-----

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クスミエリカ個展「白の虚像」 にて

「いろいろ想像するのが好きです。街を歩いていても非現実的なことをよく想像します」

2012.11.09札幌は冬の入口のはず。そぐわない暖かさの中の雨…今の季節がわからなくなる。そんなズレから現実感を失うことがある。

市内在住のフォトグラファー、クスミエリカの個展に夕方いってみた。感想を展示と彼女の話から書いてみようと思う。

フォトグラファーの個展というと、人物や風景を捉えた「写真展」をイメージする。しかし、会場に入るとその予想は心地よく裏切られる。 目の前には白を基調としたフレームの中で大胆な写真のコラージュ。無機物とも有機物とも、とらえきれない未知な光景が表現されている。アバンギャルドではあるが、そこには不安や暗さは感じられない。軽やかな明るささえも感じる。ベースとなる写真はすべて彼女が撮影したもの。フォトグラファーらしいこだわりだと思う。

彼女の作品は、とても自由で楽しげだ。作品自体の印象は非常にクールだが、制約のないイマジネーションの中で制作しているのが観る側にも伝わってくる。そんな「自由」さが観る側に楽しさや安心感を伝えている。クリエイティヴとしての苦労はあると思うが、好きな発想から生まれていると感じる。凄くファインなアートである。

会場では、佐々木恒平(not/c)の音楽が流れ、木村綾子(Gravel)による植物のオブジェもディスプレイされている。これは平面作品に感じる限界から、空間をつくるインスタレーションとしての試みだという。

彼女の表現活動のこれからに興味が出てきた。早々だと思ったが、次の個展の取り組みについて聞いてみた。「また個展はやりたいですね。何年後、とか決める感じではなくて、思ったらやりたいと思います」 とのこと。楽しみだ。

展示会場を出ると、雨がより強くなっていた。
でも、少し暖かい。より暗闇の中の帰路は楽しくなった。
それは彼女の作品のせいかもしれない。

Text & Photo by Shinichi Ishikawa(NUEMRO DEUX)

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クスミエリカ個展「白の虚像」
会 期:2012年11月9日(金)~12月1日(土) 14:00~22:00(日・月休) 
PARTY:11月10日(土)19:00~
会 場:salon cojica ( 北3東2中西ビル1階)

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美術展「Born in HOKKAIDO」Interview.

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美術展「Born in HOKKAIDO」大地に実る、人とアート
 今年30周年を迎える北海道立近代美術館にて、北海道の美術の「現在」と「未来」を考える美術展が開催された。
 企画・制作を行なった学芸員の浅川さんにインタビューを行なった。学芸員(キュレーター)という仕事に興味のある方にもためになる内容になっている。(2007.11.3)

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Interview With Maki Asakawa
浅川真紀(北海道立近代美術館学芸員)

ー学芸員になるまでのプロフィールを簡単に教えてくれますか?

私は学芸員として美術館に勤めて16年になります。札幌出身で大学も札幌です。特に美術のある環境で育った訳ではなくて、家には美術全集があってパ ラパラめくってみる程度でした。本格的に好きになったのは大学生になってからです。専攻は英文学だったのですが大学に通いながら美術館に行ったり、海外に 旅行しているうちに、美術のおもしろさを世の中に伝えていきたい、美術と人々の間をとりもつような仕事がしたいと思うようになり、大学卒業の翌年にあった 募集にて採用されました。

ー学芸員とはどんな仕事なのでしょう?

私の学芸員としての仕事は欧米のキュレーターのように完全に専門化している訳ではなくて、展覧会企画から雑務を含めて、あらゆることをしています。脚立を上って会場の電球替えもしてます(笑)。

学芸員の仕事の核となるのは、博物館学的にいうと3つあります。優れた美術作品を収集・保存して後世に残していくとともに調査・研究し、さらにそれらの美術作品を展示・教育というかたちで人々に還元していきます。

昨今、美術に対する意識はだいぶ変わってきているとは思いますが、みる人はみるし、みない人はみないという構図がまだあると思います。私の仕事は、 美術にふれる最初のキッカケづくりというか、美術の世界へのドアを開けてあげることだと思っています。ただし、ひとたび中に入ったら、あとはみる人自身が それぞれに作品と対話し、関係を築いていくものだとも思っています。美術と人々の間に、よりいきいきとした対話が生まれることを願って、私たち学芸員は作 品をなんらかのテーマや切り口を設けて紹介していきます。そのテーマや切り口は、なるべくみる人の日常に近いほうがいい。入りやすくなりますから。入口は 広く入りやすいけれど、入ってみると奥が深い。そんなふうに美術の世界を提示していく…そういう仕事なんだろなぁ、と私は解釈しています。

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真砂雅喜 出品作品

ただ、学芸員というのは人によって指向する方法というのはいろいろあると思います。私は研究肌というより、作品をどのようにみせていくかというほうに興味が強いタイプですが、研究はそのベースとなる、とっても大切なことです。

研究というのは机上で行うよりも、美術作品を直接みるのが基本です。それも、まずは自分のフレッシュな感性でみるというか、学芸員である以前に、人 として自分がどう感じるか、という視点を忘れちゃいけないと思っています。学問的に美術史という枠組みの中でみることはもちろん必要なことなんだけど、自 分自身が人間としてどう感じるのか、というのも大切にしないといけない。

美術展に足を運ばれるお客さんも美術史という枠組みとかにこだわりすぎちゃうと、その人自身の瑞々しいリアクションが閉じこめられてしまうことがあ ります。といっても、感覚だけでみるのも偏りが生じるので、作品の背景や作家についての知識をある程度持ちながらバランス良く作品と向かい合うのが良いと 思います。

私は美術鑑賞において、みる人自身のもつ感性や創造性が、作品と向かい合うことを通していかにして引き出されていくか、というところに関心があるので、そのあたりに趣旨を置いた展覧会は企画してきたつもりです。

美術展の企画というのは、いろいろ大変な部分もありますが、自分の頭の中に組み上げたものが現実のものになって、お客さんが来てくれるのをみると無上の喜びを感じます。

美術作品といえばキチンと額に入った絵、という固定観念を持ってしまうと、現代美術は難解なものになってしまいます。美術というのは作家がみたもの や感じたことを純粋に表現したいというところから始まっているのですから、いろいろなパターンがあってもいいと思います。そこは伝えていきたいですね。既 成の美術観から自由になることが、現代美術を楽しむ第一歩だと思います。

5rimg0124毛内やすはる 出品作品

ただ、作家のテクニックは大事だと思います。美術作品がモノである以上、コンセプトだけではいけない。コンセプトもテクニカルなことも、バランス良 くあってこそ、作品としてビジュアルが立ち上がってきます。人がつくっているという温度が感じられたり、素晴らしい技術だなぁとリスペクトできる気持ちが みる側に生まれてくる作品って、力があると思います。

現代美術といっても一発芸的に思いつきだけでやるのではなくて、その人自身の技術的なトレーニングの積み重ねや思考の深まりがあって、そうした中で最終的生まれてきた作品であるべきだと考えます。みる側に働きかける力、本当
の強度を持っている作品というのは、背景につくり手の努力なり想いが詰まっていると思います。そういう観点で作品をセレクトしています。

ー今回の展示の内容(コンセプト)について教えていただけますか?

北海道立近代美術館が30周年ということで、自主企画展の枠がありまして、館全体の取り組みとして、北海道の美術をみつめる、捉え直す展覧会という 大命題がありました。結果、常設展では、北海道美術の歴史的代表作を、私の担当した特別展では現在の北海道美術と未来をになう子供たちの作品を展示するこ とになりました。

この2つの展覧会を通して、北海道の美術を過去から現在、そして未来へという時間の流れの中でとりあげていく。具体的にいうと、館のコレクションの 中で北海道の美術というのは約3分の1を占めているのですけれど、それを活用しつつ、他館からお借りした作品も加えて、まずは北海道美術の過去から現在を みせていく、これが常設展ですね。

一方特別展のほうでは、現在から未来を紹介していくことにしました。現在としては、16人の多様な現代作家の作品を展示しました。さらに、8つの小 中学校との連携授業から生まれた子供たちの作品を未来と位置づけることで、特別展にひとつの文脈ができたと思います。常設展と特別展を併せてみていただけ ると、北海道美術の過去、現在、未来の流れを一望できることになります。

子供たちの作品については、ただ展示をするだけでは位置づけとして甘くなるので、出品作家のKinpro(新矢千里)さんとのワークショップを3つの小学校と行ない、その結果出来上がった作品を展示しました。今まさに活躍中の作家さんと、未来をになう子供たちの交流ということですね。作家さんにとっても子供たちと接することによって得るものがあると思います。

7rimg0127朝地信介 出品作品

加えて、館の北海道美術コレクションの中から明治の日本画家の掛け軸を先生と相談して選び、収蔵庫で子供たちにみせました。古い掛け軸、という宝物 気分も手伝って、子供たちは興味津々といった感じでみてくれました。そうして子供たちとその作品について対話する鑑賞授業を行いました。小学4年生が対象 だったのですけれど、子供たちはとても純粋な目でみてくれました。みせ方を考えれば、ちゃんと子供でも理解してくれます。その後の学校の授業では、子供た ち自身が北海道をテーマにした掛け軸を作りました。それが今回展示されています。子供たちの作品を展示するというのは美術館ではイレギュラーなことなんで すが、社会のニーズや、学校と美術館の緊密な連携を目指す機運も高まって実現できたことです。

美術館も学校と組むことによって、より多くの子供たちに足を運んでもらえます。美術の好きな親御さんが、子供を美術館に連れて来るのは当然ですが、 親御さんに関心がなければ、その子供は美術館に来られないかもしれない。そういう意味では学校というのはすごく機会均等というか、いろいろな家庭の子供が 美術館に行く機会をつくれるというのは最大のメリットだと思います。

展覧会場は16の作家を、「感覚の実り」「想像の実り」「対話の実り」というキーワードにもとづき、ざっくりとした空間に分けました。最後に「実りゆく未来」という位置づけで子供たちの作品を展示しています。

11rimg0147高橋喜代史 出品作品

ー美術展を企画するということについて,企画制作の流れを説明していただけますか?

まず、企画書をつくり館内で検討します。今回の企画については、先ほど話したようにベースとなる理念は30周年に何を提示すべきかということでした。それを具体的にどうかたちにしていくのか、というところから企画を立てました。準備がスタートしたのは1年ぐらい前です。

展覧会によっては、例えば外国から作品を借りるような企画の場合は、2~3年以上前から準備することになります。今回は国内でしたから1年前からの 準備になりました。作品が他の美術館やコレクターの所蔵の場合、出品交渉に時間がかかることがありますが、今回は作品がほとんど作家蔵でしたので、そのあ たりは比較的スムーズでした。

今回の企画は、北海道に生まれ、育った方に出品していただいています。去年の年末には企画が固まってきて、後は作家のリサーチですよね。もちろん、 企画を立てる段階で、何人かは出品して欲しい作家さんのイメージはあります。その段階では具体的な交渉はまだできないですが、企画書が通り、依頼できるメ ドが立ったら、実際にお会いして話を聞いてもらい、一方で新たな作家もリサーチしていくことになります。

今回、ナウな作家を紹介するということで、多様性が重要ではないかというのが館全体にあって。16人というのは多い方だと思います。通常グループ 展ってマックスでも10人くらいです。でも、今回はいろんなタイプの作品をみてもらいたい、という全体方針があったので16人となりました。

8rimg0131鈴木涼子 出品作品

正直、展示空間的にはキツイ部分はありました。大抵のグループ展の場合、ひとりの作家さんごとにパーテーションをつくるのですが、今回はひとつの空 間に2~3人の作家さんの作品を展示しています。ただ、同じ空間にいろいろな作品が同居することによってみえてくるものもあると思います。

作家さんのリサーチ、出品交渉を進めていって、開催の半年前くらいには出品する作家さんはほぼ決まっていました。交渉もあちこちに出張をして、いろ いろな方にお話を聞いていただきました。道内もありますし、道外もありました。作家の方に納得して出品してもらうのが大切です。趣旨を説明して、出してい ただける作品があるかどうかをお聞きして打ち合わせを進めていきます。その中で作品の内容も決まっていきます。それと同時平行で、設置の仕方を考えます。 常に図面とにらめっこです。作品は平面も立体もありますし、作家によって空間のニーズもさまざまです。それぞれに作品のヴォリュームや展示条件の聞き取り 調査をし、意向も聞きながら図面を示して展示場所を決めていきます。この人は真っ暗な空間でないと展示できない、とかいろいろな条件が出てくるので、その つど図面を引き直しては最終形に近づけていくんです。

そして、広報も大事です。ポスター・チラシについては大体、開催日の1ヶ月前にはできているのが目安です。ほか、雑誌などのメディアに告知をお願い する場合も、それぞれ締め切りがありますので、それらに気をつけて、プレスリリースなどを手づくりしつつ、広報印刷物の作成も進めていきます。

12rimg0128Kinpro(新矢千里)出品作品

広報印刷物のヴィジュアルはとっても大事だと思います。それをみて美術館に足を運んでもらえるようなキャッチーなものでないといけない。今回、デザ インを考えたとき、16人の中からひとりの作品だけのせるのではイメージが十分に伝わらないし、かといって16人の作品をモザイク的にのせても、ちまちま してよくないと思いました。そこで、展覧会そのもののイメージイラストでいこうと決めたんです。

出品作家のひとりであるKinproさんは、木や動物などの自然をモチーフとしたのびやかでヴィヴィッドなイラストを描かれています。その作風がこ の展覧会全体の雰囲気にも合うと考え、イメージイラストをお願いしました。このビジュアル・イメージを説明すると、これは北海道の大地に根をはるアートの 木なんです。幹には先人たちのアートがあって、そこからのびた枝の先には、今を生きる作家たちのアートがさまざまな実りを結んでいる…そういうイメージを 新矢さんにお伝えしてイラストを描いてもらいました。イラストは洗練された中にも温もりやかわいらしさがあって、若い人からお年寄りまでアピールするもの になったと思います。このKinproさんのイラストを生かしてロケットデザインの菊池さんが全体をデザインしてくれました。このお二人の組み合わせは絶妙だと思います。タイトルの絵文字っぽいのは菊池さんのアイディアで、イラストにもマッチしているしタイポグラフィとしても魅力的です。

その後は実際の空間づくりですね。これも計算機とにらめっこです。今回は展示のために仮設壁面を結構つくっています。会場は、まず四方の壁面があっ て、そこにLパネルという既存の可動壁面を組み合わせてパーテーションをつくります。ただ、作品によっては空間を暗転させないといけないものがあって、既 存の壁だと高さが天井までないので不十分なんです。それを仮設壁面でつくるんですが、その値段が高い。暗転の空間をつくりつつ裏側では別の平面作品を設置 したりもするので強度も必要です。過去の展覧会で使ったものをうまく再利用して組み合わせてもいます。11月1日からの展覧会ですが、ほぼ1週間前には会 場の造作を済ませ、作品の展示にそなえました。

14minnoriyukumirai市内の小学校生が作家とのワークショップにて制作した作品。

壁に貼る作家紹介パネルもつくります。どんな内容を盛り込むかというのも重要です。今回はひとりひとりのプロフィールと、自作や北海道に対して寄せ てもらったコメントを掲載しました。一方、お客さんに配布する出品リストには学芸員の書いた作品解説があってマップがあって、それをみながら展示をまわっ てもらうとか、それぞれの役割を考えます。すべて予算も決まっていますから、その中で収まるように判断していくのも大切なことです。これら諸々の準備を、 今回は4人の学芸員の共同作業で行いました。

ー今回の企画をおこなってみた感想などを教えてください?

みえてきたものはいろいろあります。16人の作家の作風は一見バラバラのようにみえるのだけど、どこかその中に通底するものが浮かびあがってきたと いうか。当初、何をキーワードに作家を選んでいくか、というのを考えて思ったのは「透明感」みたいなもの…北海道ってものすごく空気も澄んでるし、光とか 水とか透明なものに育まれた、鋭い、澄んだ感性があるのではないかと。例えば、目にみえない生命の営みであるとか気配であるとか、澄んだ感性があるから捉 えられるんじゃないかと思いました。また、都市化は進んだとはいえ身近なところにワイルドな自然が体感できるこの風土だからこそ生まれてくる、想像力の豊 かさというのもあるのではないかと思いました。

もうひとつは、他者や外界としなやかに対話していける力ですね。北海道って日本の中で最北で歴史も浅い土地ですが、さまざまな地域との交流もあって 開けたところで、その分しがらみもなくて、他を受け入れやすい風土ですよね。対話の力は、この土地の発展の原動力になってきたもので、それは今でも生きて いると思うんです。

全部の作品をみてもらうと、従来のステレオタイプな北海道のイメージとは一味ちがった、「今」を生きる私たちにとってリアリティのある北海道らしさのようなものを感じてもらえる展示になったと思います。

ー最後に読者にむけて今回の展示の一言PRをおねがいします。

今回の企画は、北海道で生まれ育ち、同時代を生きる作家たちによるアートですから、きっと身近に感じてもらえるだろうし、共感できる部分がほかの展 覧会以上にあるのではないかと思います。この地に育まれた創造の実りであるアートをみんなで共有して欲しいという願いがあります。私の中では共感と共有と いうのは大切にしたいですね。どの作品も瑞々しくてユニークですので、そういった作品と出会うことによって、みる人の日常生活にもきっとプラスになると思 います。ご来場を心からお待ちしております。

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「Born in HOKKAIDO」大地に実る、人とアート

会期:2007年11月1日〜2008年1月24日
会場:北海道立近代美術館
開館時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(ただし、11/5、12/24、1/14は開館)、12/25、12/29〜1/3、1/15
出品作家:青木美歌、朝地信介、池田光弘、貝澤珠美、Kinpro (新矢千里)、毛内やすはる、鈴木涼子、諏訪敦、高橋喜代史、端聡、野上裕之、伴翼、福井路可、真砂雅喜、松永かの、盛本学史


…取材を終えて…
学芸員というのは知的な作業でありながら、同時のとっても体力もいるお仕事だということが 浅川さんのお話でよくわかりました。美術展に行ってみてアーティストの作品を鑑賞すると同時に学芸員の作品を見せるためのさまざまな工夫や、コンセプトを 考えてみるのも美術の楽しみだと思います。

Interviewer & Phtograph by Shinichi Ishilawa(NUMERO DEUX)

 


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SPEICIAL LIST

インタビューのコンテンツです。過去のアーカイブを少しづつアップしています。新規の取材も近日行なう予定です。

058 シンガポール飲食店「KOPITIAM 」(2006.1.21)
057 カフェ「DESTIJL」(2005.11.21)
056  [Yoshiki boutique][hamonica bld.](2005.5.29)
055 アーティスト 高木正勝(2004.11.22)
054 美術系私設図書館「think garden」(2004.09.16)
053 はぎれ・リサイクル着物のお店「まめぐら」(2004.05.22)
052 イギリスアンティーク雑貨「THE DECOR SHOP」(2003.12.22)
051 サウンド・ユニット「JA-woodoo」(2003.10.31)
050 カフェ「miel」(2003.09.04)
049 スープカレー「CooDoo」(2003.07.26)
048 札幌のクリエイター交流会「ライフ」(2003.07.02)
047 札幌市内ポップで深みのあるバンド3組にインタビュー(2003.05.01)
046 カフェ&カレーのお店 「ouchi」(2003.2)
045 映像とナレーションのステージ 加賀城匡貴(2003.2/1)
044 田中智人(TVh) (2002.12/23)
043 グラフィックデザイナー 鈴木直之 (タイクーングラフィックス)(2002.9)
042b アーティスト ミヤタケイコ&ハマサトケンタロウ(2002.9)
041 Cafe de biz Cube(カフェ)(2002.8)
040 Power Mate(FOCAL POINT CUMPUTER,inc)(2002.7)
039 Takahiro Akiba(weird-meddle record)(レコードショップ)(2002.6)
038 とり・みき 「WXIII」機動警察パトレイバー(2002.4)
037 電子ブロック(リバイバル電子玩具) (2002.4)
036 Stilly(セレクトショップ) (2002.3)
035 ニッキニャッキ (アンティークショップ) (2002.2)
034 インターオフィス札幌支店 (輸入オフィス家具) (2002.1)
033 miki(イラストレーター/デザイナー) (2001.12)
032 SOSO CAFE(カフェ) (2001.11)
031チェブラーシカ / (2001.10)
030 ミニキュート(インディ・ポップバンド)
029 フラボア /Eri Utsugi(ファッション・デザイナー)
028 エアロステッチ レコード  (テクノ・レーベル)
027 TATAMIX & TIGER FANG(札幌のフリーペーパー調査)
026 アメリカン・ショート・ショートフェスティバル
025 タイガーマガジン(スタッフインタビュー)
024 「贅沢な骨」行定勲/つぐみ (夕張映画祭)
023 押井守 ( 映画「アヴァロン」監督)
022 TMVG (常磐響 + 水本アキラ)
021 佐々木大輔 (セレクトショップKi:n%Hz )
020 高田理香 (イラストレーター)
019 須賀大観 (「ブリスター!」監督)
018 永野善広 (札幌ゲンズブールナイト主催 /フランス語スクール代表)
017 ケン・イシイ  (テクノ・アーティスト)
016 塚本晋也 (映画「バレットバレェ」監督)
015 FUSE /(VJ GROUP)
014 アメリカン・ショート・ショートフェスティバル (映画祭)
013 PROJECT CAD2 (VJ)
012 LOVE IS ALL ( PARTY)
011 VOGUE (PC)
010 PROJECT CAD (VJ)
009 CAI (現代美術研究所)
008 シアターキノ (ミニ・シアター 映画「POLA X」について聞く)
007 あぐら家具 (オリジナル家具制作)
006 DO夢 (マッキントッシュ専門店)
005 ファブカフェ (CAFE)
004 タイプレコード (レコードレーベル)
003 「アベック モンマリ」
002 橋本洋輔 ( シンガーソングライター)
001 kawai hiroyuki (コンディション)(ファッションデザイナー)

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058 シンガポール屋台料理 「KOPITIAM (コピティアム)」(2006.1.21)

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狸小路7丁目に円山から移転オープンした「This is Singapore Style KOPITIAM」。マレーシア語でコーヒー(コピ)を飲む(ティアム)という意味をもつ。 シンガポールではコーヒーショップは「大衆食堂」の意味合いでよばれて、とてもポピュラーな場所らしい。居心地がよく、シンガポールの屋台料理を満喫でき るKOPITIAM。店主の中川さんと司令塔の佐々木さんへインタビューさせて頂いた。Text by mato.

 

NUMERO DEUX SPECIAL 058 Singapore Night.
Interview with KOPITIAM (masatoshi Nakagawa,daisuke Sasaki)
取材日時:2006.1.21(Sat) 17:30-18:00
取材場所:This is Singapore Style KOPITIAM
Interview & Photograph by Aiko Yamamoto & Yoko Yoshioka (mato.)

● Masatoshi Nakagawa、Daisuke Sasaki
インタビュー: 店主 中川正敏、司令塔 佐々木大輔           

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----まずは司令塔の佐々木さん。佐々木さんはここの?

佐々木: 店が円山にあった時に、もともとは客だったんですよ。それでまあ、いまに至るわけです(笑)

----そうだったんですね。じゃあ店のオーナーというのは?

佐々木: マスターですね。マスターが16歳のときから2年間、シンガポールの日本大使館の厨房で働いていたんですよ。だからシンガポールが第二の故郷らしいです。それでこの店をやろうと思い、いまに至ると。

----はしょられましたね(笑)

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マスターこと店主の中川さん登場
----お店をやろうと思ったキッカケを教えてください?

中川: 以前住んでいたシンガポールに対する思い入れが強くて、それでお店をやろうかなと思っていました。それで2001年に円山(移転前)に店を、妻とふたりでオープンしました。円山が好きで、こじんまりやるのにいいと思ってあの場所に決めました。

----今回、お店の名称を少し変えましたよね?

中川: 「マレー半島的大衆食堂 KOPITIAM」から「This is Singapore Style KOPITIAM」に少し変えました。いままではよくマレーシア料理と勘違いされたんです。シンガポールもマレー半島にあるんですけど、マレーシア料理と いうのは、マレー半島の料理をさすので、勘違いをさけるために変更しました。       
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----KOPITIAMのコンセプトについて教えて下さい?

中川: ひとことでいうと、「シンガポールナイト」ですね。 お酒を飲みながら夜のシンガポールをイメージしてもらって。シンガポールでは大衆食堂に赤いちょうちんや飾りがぶらさがっていたりするんですよ。

----おすすめのメニューを教えて下さい?

中川: バクテー(土鍋で骨付き豚バラ肉を漢方で煮込んだ料理)と、ミーゴレン(マレーシアの焼きそば)と、サテ(マレー焼き鳥)ですね。
パーティプランでは、3000円、4000円の飲み放題付きコース、料理8品で2600円のコースがあります。

----狸小路にした理由ってありますか?円山から移転して、客層は変わったでしょうか?

中川: 初めから店をやるなら円山か、狸小路と決めていました。円山の方は店も厨房もちょっと狭かったんですよ。それで、移るのなら狸小路7丁目って決めていて、 以前からここがいい場所だと思っていました。客層はそんなに変わらないですね。30代くらいから、女性のお客様が7割くらいです。そうですね、移転してか らはサラリーマンの方も増えましたね。

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----1年のうちに何度かシンガポールに行かれますよね?

中川: 1年に2、3回料理の勉強も兼ねて、買い付けのためにシンガポールに行きます。だいたい10日くらい滞在して、食材と店内の飾りや食器を買い付けてきます。店内に貼っているポスターとかも、深夜に剥がして持ってきたものもあるんです(笑)。

----いつも接客の良さを感じますが、気を配っていることなどあれば教えて下さい?

中川: ありがとうございます。ここに来てくれたお客さんが、来てくれたら楽しんで帰ってもらえればといつも思っています。

----最後に、読者にメッセージをお願いします?

中川: シンガポールに行ったことがある方もない方も、シンガポールを体感しに来て下さい。


After Hours

賑やかな店内の装飾を目にし、耳慣れない言葉の音楽を耳にしているのに、居心地が良い。いつも、美味しい料理と気の利いた接客をしてくれるここのお店ではついつい長居をしてしまう。取材の日もあっという間に満席でした。

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This is Singapore Style KOPITIAM

場所:札幌市中央区南3条西7丁目5番地(狸小路7丁目内)   営業
時間:18:00〜2:00
定休日:火曜日

TEL :011-219-7773

 

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057 カフェ「DESTIJL」(2005.11.21)

札幌市中央区の円山は、ゆったりとした時間の流れを感じる、居心地の良いエリア。そのためか小規模でセンスの良いカフェやレストランも多い。

アンティークショップ「プランドゥ」の1Fにカフェがオープンした。モダンなインテリア、座り心地の良いラウンジチェア…ひとりでも、友人とでもリラックスできる空間。お店の名前は「DESTIJL(デスティル)」。オーナーの成田さんのインタビューしてみた

Text by Shinichi Ishikawa.

NUMERO DEUX SPECIAL 057 Lounge Chair.
Interview with Narita Daisuke(DESTIJL)
取材日時:2005.11.21(Mon) 18:00-19:00
取材場所:DESTIJL
Interview & Photograph by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX


Daisuke Narita(DESTIJL)
インタビュー:成田 大亮(デスティル)

     

----開店までのプロフィールを教えてください

1974年札幌生まれで、大学までずっと札幌です。英文学科を卒業して、業界紙の編集の仕事に就きました。そういった仕事を選んだのは、文を書いたりするのが興味があったからです。

----お店をやろうと思ったキッカケを教えてください?

卒業して、就職をしましたが、将来独立という想いはありました。僕は両親も自営業でして、その影響か、なんとなく自分も自営業になるんだろうなぁ、と思っていました。でも、お金がないと、お店はできないので、まず普通に就職して、お金を貯めようと思って就職したのです。いつの時点で「カフェ」をやろうと思ったかは忘れしまいました。かなり昔はクラブ・ジャズなどの音楽が好きだったので、レコード屋がいいかなと、思いました。でも専門性の高いレコード屋は札幌では難しいかな、と思ったり。いろいろ考えながら、カフェに落ち着きました。

     

----お店がオープンするまでのことを教えてください?

働いてお金を貯めつつ、独立の準備もしようと思っていました。マネジメント的なことや、経営者の理念といったようなことを本などで多少勉強しましたが、ほとんど内装やインテリアをどうするかなど、空想をもてあそんでいました。今から考えると本当に甘かったと思います。職場は7年働いて退職しました。その後は家具探しとか、メニューなどを含めたお店の内容を固めるのに半年ぐらいかけたと思います。

その後に物件探しをしました。ツテがあった訳でもなかったので、普通に店舗に強い不動産屋さんに行きました。出店したい場所の希望は、中心部周辺の西エリア、円山方面も含めて、考えていました。探してみると自分の希望する物件は、非常に少なくて困ってしまいました。なかなか見つからなくて。探しているエリアを自分の足で、空き物件を探しもしました。8月ぐらいに、お店の家具などでお世話になっていたプランドゥさんから、お話があって結果的に1Fをお店にしていただけることになりました。そして、10月まで工事、同月中旬オープンで現在にいたっています。急な展開でしたね(笑)。

     

----お店について、教えてください?

店名を決めるのは、オープン直前まで悩みました。「デスティル」という名前はモダニズム期のアート系雑誌のネーミングからとっています。バウハウスやモンドリアンなどとの関連もあり、店の空間イメージとも遠くないと思いまして。語感も気に入っています。
メニューはコーヒーなどのお茶からアルコール、食事まで用意しております。夕方からは、お酒と相性が良く、シェアもしていただけるような一皿ものも提供しています。紅茶については、ブランドのアイテムよりも、こだわりを持った地元の茶葉専門店さんから新鮮なものを仕入れて、お出しするようなスタイルにしています。ブレンドやエスプレッソのオーダーを受けた時は、豆を挽くことから始めます。また、主な野菜やクスクス、ハーブティーなどで積極的にオーガニック素材を取り入れています。無線LANも設けておりますので、店内でお使いになりたい方は、お気軽にお申しつけいただきたいと思います。

インテリアとしては、50年代のフランスの家具が主で、非常にレアで日本では本当に少ないものも含まれていると思います。
椅子のほとんどが、ラウンジ・チェアなのは飲食店では珍しいと思いますが、お客様の居心地の良さを優先しました。今は新品でも同じようなテイストの家具が出回っているようで、それらを使えば簡単に雰囲気を作れると思いますが、そういうお手軽をしたくなかったので、照明、小物にいたるまですべて当時のものを使っています。

自分のお店は「カフェ」と呼んでいますが、そこに強いこだわりがある訳ではなくて、僕が一番にやりたかったのが、「気持ちの良い空間」作りなんです。ただ、それだけでは、お金をいただくことができないので(笑)、カフェ的な飲食店に落ち着いたというところです。空間といっても、提供しているものやサービスも含めたトータルとしてという意味で、インテリアはその一部分にしかすぎません。
テクニック的にはまだまだ課題が多いですが、血の通ったサービスをしていきたいと思っています。24時までオープンしているのも、いつでも来れて、お茶に、食事に、お酒にいろいろな楽しみ方をしていただきたいからです。

     

----最後に、読者にメッセージをおねがいします?

お店の雰囲気はカッコつけた感じかもしれませんが、私はある特定の方々のためのお店とか、そういう考えでやっている訳ではまったくありません。どなたでも近所の食堂のような感じで気軽に利用していただければと思います。
壁面で展示をしたり、パーティを行いたい、というご相談もお受けいたします。興味のある方はご連絡お待ちいたしております。


after Hours
店内に流れる音楽はセンス良く、さりげない。オーナーの成田氏は、以前はクラブ・ジャズのDJもしていたそうだ。店内のターン・テーブルまわりのレコードについて、聞いてみるのもいいかもしれない。

DESTIJL(デスティル)
場所:札幌市中央区南1西23丁目1-35
営業時間:11:30〜24:00(ラストオーダー23:30)
定休日:木曜(祝祭日の場合、営業)
Tel&Fax:011-616-1700

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056 [Yoshiki boutique][hamonica bld.](2005.5.29)

服はどこで買いますか?ここ数年、札幌の中心部はアパレルショップが急速に増えている。その大部分は道外ブランドを取り扱うセレクトショップ。その中で今回紹介する「ヨシキブティック」は札幌を拠点に服を作るアトリエと、ショップが同じ場所にあり、デザイナーの世界観を反映したシンプルで可愛らしい洋服を作っている。そして、このお店のDM、ウェブサイト等の販促関係は札幌のデザイン・ユニット「ハモニカビル」が担当。洋服のデザインと、それを支える販促デザイン。リアルな現場の話を聞いてみた。

Text by Shinichi Ishikawa.

NUMERO DEUX SPECIAL 056 Design&Design.
Interview with Yoshiki Satou(Yoshiki boutique)& hamonica bld.(Naoki Fujita & Kaori Kojima))
取材日時:2005.5.29(sun) 18:00-19:00
取材場所:Yoshiki boutique
Interview & Photograph by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX

Yoshiki Satou(Yoshiki boutique)
インタビュー:佐藤義喜(ヨシキブティック)

----現在までのプロフィールを教えてください

札幌の服飾の専門学校を出て、そして東京のアパレルメーカーに就職しました。そこは2年ぐらいは居たのですけど、違うことがやりたくなって札幌に戻りました。しばらく札幌でインテリア関係の仕事をしていました。でも、また洋服を作りたくなって、今度は独立することにしました。メーカーに勤めていると、自分の好きなものは作れないというのがあったので。それが現在のお店になっています。2002年のことです。

----お店のコンセプトを教えてください

最初は洋服を作りたかったので、お店をやるとは考えていませんでした。普通に考えれば、自分の作った服をセレクトショップ等に卸す形になると思います。でも、自分の作るものを目の届く範囲に置きたかった。服を売るというときに自分のコンセプトを全部あわせて売りたいんです。それによって、自分の世界をお客さんに提供できると思っています。
その結果として、自分のお店は洋服を作っている場所で同時にお店も兼ねているという感じになりました。お店の洋服を全部自分で作っています。特に手作りにこだわっている訳ではなくて、クオリティさえ確保できるなら工場でもいいのです。ただ、工場に頼むとなると、ある程度の数を作らなきゃならない。大量生産という形になると、売り方自体も変わってきてしまって、それは自分のスタイルではないのです。
札幌でやる理由として工場に発注しなくても、生産が追いつかない、ということもなく同時にビジネスとしてやっていける、というのがメリットだと思ってい ます。

----洋服について教えてください

シーズンことにはっきりとしたテーマで展開していく…というスタンスではなくて、基本的に定番モノを展開していって、少しづつ違うものを出しています。カジュアルでポップ、そして、ディテールにはこだわっていますね。カットソー、 シャツをよく買われる方が多いです。

----服のデザインのアイディアはどのようにして浮かびますか

お店にもディスプレイしていますが、レゴとかスヌーピーの世界観が好きなんです。具体的にデザインする時は「顔」からはいるんです。まず、女の子の、髪型とか顔の形、スタイルとか、イメージを作って、服のデザインを考えていきます。その女の子のイメージも、必ずしも現実的ではなくて、スヌーピーのようなビーグル犬だったりすることもあります。自分の作るものは、たとえばスヌーピーの世界にあってもマッチするようなものが作ればいいな、と思ってます。

----1日の生活はどんな感じですか

お店が12時からなんで、少し前に来てお茶を飲みます。その後はずっと仕事ですね。結構遅くまでやっています。自宅はここから近所です。

----お客さんはどのような方々が来られますか

いろいろなお客さんが来られますが、特に感じるのは20代前半の普通のOLさんよりも、デザインに興味があったり、実際にデザインの仕事をしている方々です。一度、お店まで来ていだけると気に入っていただける方が多いと思います。

----今後の予定など教えてください

札幌を拠点にしながら自分の作った洋服を全国的に展開していきたいなと考えています。今、そのやりかたをいろいろ考えています。

hamonica bld.(Naoki Fujita & Kaori Kojima)
インタビュー:ハモニカビル(藤田直樹+小島歌織)

----プロフィールを簡単に教えてください

藤田直樹:僕はデザイン系の専門学校を卒業して、現在デザイン会社でアートディレクターをしています。仕事の中心は平面中心です。仕事の合間に自主制作はずっとしていました。仕事でのデザインが制約が多い訳で、それからはみ出して広がった空想をプライベートな作品作りで解消していました。専門学校に進学した時点では、デザインの仕事についてそんなに深く考えていた訳ではなく、漠然とネクタイをしない仕事がいいな、音楽が好きだったのでレコードジャケットのデザインをしたいな、という程度の動機でした。

小島歌織:私は将来はまんが家かイラストレーターになりたいなと思ってました。でも、進学を考える時点で、それは難しいかな、と感じていて。そんなとき高校の授業でAdobe Photoshopに出会いまして。そのソフトでいろいろ作品を作るのが楽しくなり、結果、美大に進学しました。在学中にフリーペーパーの制作や、広告代理店でアシスタントなどの仕事をし、卒業して、現在はデザイン会社で制作の仕事をしています。藤田との出会いのきっかけは、以前に働いていた代理店で仕事上のつながりがあったのです。


「PARTS HUNT」

----「ハモニカビル」ができたキッカケを教えてください

藤田:彼女に仕事の合間に僕のプライベートな作品を見せたら、親近感を持ってくれて。じゃあ、一緒にやってみる?ということになりました。それが「ハモニカビル」になったのです。半年前ぐらいですね、僕としては自分の活動の延長線上に彼女のセンスが加わってくるという感じですね。これからはもっと外にむけてやっていくためにユニット名を考えました。

小島:私にとっては「ハモニカビル」は仕事以外での新しいチャレンジです。誰かと一緒につくるというのが仕事以外ではじめてだったのですが、日々刺激があってとても楽しいです。

----「ハモニカビル」のネーミングの由来を教えてください

藤田:街を歩くのが好きで、ビルの狭間にあるような細長い雑居ビル、それをたしか楽器のハーモニカのようなので、ハモニカビルと呼ぶ、というのが記憶にありました。そこからとってます。デザイン・ユニットとしてのネーミングの意味とは雑居ビルにいろいろな人がいるというイメージで、今、「ハモニカビル」は2人ですけど、将来的にはライターさんや、モデルさんなどがメンバーになって、いろいろな人が出入りするフレキシブルな仕組みを持つユニットのにしていきたい。あと、言葉の響きの可愛らしさというもあります。細いながらも立っていこう!と思ってます。

----デザインに対する発想について教えてください

藤田:僕が目指しているデザインのテイストは、「キュートで、ポップで下品で、エロ」。「ハモニカビル」では、まだ最初の2つぐらいしか表現できてないですが、これからは後のふたつの異物感と、人をギョッとさせることができればいいな、と思ってます。

小島:私は流行にとらわれないけれど、どこかで流行は取り入れているもの。普遍的なものに育っていくようなデザインを自分の中で考えていきたいです。

藤田:そのあたりが彼女と意見がぶつかるんですけどね(笑)。

小島:ぶつかるところはあっても、目指すデザインに共感できるから一緒に出来るんだと思います(笑)。


「Yoshiki boutique collection DM」

藤田:僕はずっと、他のいろいろなデザイン作品をみないで仕事をしてきたんです。でも、最近それに限界を感じてきて、自分の作るものがつまらなく感じたり、飽きたりしてました。それで、いろんなデザインを見始めたらショックを感じて(笑)。2パーセントのものは見て安心できたのですが、あとは本当にショックを受けました。今、改めて勉強しつつ変わった感じのものを作っていきたくて迷走中です。 「ハモニカビル」の中で初心に戻りたいですね。

小島:私は、学生時代は3DやCGが自分にとって憧れが強く、手書きはなるべくしないでデジタルでやっていました。今は逆になんでも形にする前に手書きするようにしています。面倒に感じることも多いですがそのほうがデザインの組みたてもすごくスムーズなので。アイディアも思いついたらメモを残すかしています。忙しい時のほうが、アイディアが浮かびますね。オフだと体がリセットモードに入っているせいか頭がカラッポで…。でもものすごく楽しいときは、自分の状態に関わらず浮かんできたりします。

----具体的にお二人でデザインの作業はどのように進めますか

小島:おたがいにまずその仕事についてのラフを作ります。それを見せあって、どちらかが中心となり、まとめあげるという感じですね。そして、そのやりとりの中で必ず一回はお互いキレます。(笑)。

藤田:僕は争いはあっていいと思う。仕事としてやる以上、自由な発想だけでやってもよくないし、できるだけ客観的に、デザインは後に出した効果も考えな いといけません。彼女のアイディアが固すぎると思った時、僕がつついたり、逆に僕は歳ですから(笑)、若い彼女の意見も聞くのも大切だと思っています。手書き的なティストというのも彼女が担当しています。僕は全然できないので。


「Yoshiki boutique LOGO」

----「ハモニカビル」は札幌のアパレルショップ、「ヨシキブテック」さんのウェブ、DMなどを手掛けていますが、そのことについて教えてください

小島:ヨシキさんとは、ヨシキブティックのお店の客として知り合って、それをキッカケにロゴやDMのデザインの仕事をやらせていただくことになりました。

藤田:DMなど平面のデザインについては、お店のロゴのデザインの依頼があり、ロゴが確定した時点で、その後のデザインに関する方向性も決まった 感じですね。デザインコンセプトは、ヨシキさん持っている服に対する可愛らしいイメージを大事にしつつ、遊びのあるデザインしています。

小島:サイトのデザインについては、ヨシキさんのお店に来られるお客様は、インターネットのヘビーユーザーはあまりいないと聞いていたのでシンプルにわかりやすく、アナログ感があるもの、パソコンの環境を選ばないものにしました。春夏コレクションの部分は女の子がショッピングから帰ってきたあと、おうちにあったポラロイドカメラで買った服を着てうつす「モデルごっこ」の様子を描いています。

----サイトのデザインについては、ヨシキさんからはどんな要望がありましたか

小島:あまり複雑な感じにしないで、印象に残るものにして欲しい、というのがありました。ヨシキさんの服に対する世界観を、お聞きしてメモして、それからデザインのアイディアを考えて、それをヨシキさんに確認してもらいながら、進めていきました。

藤田:僕はウェブのことはサッパリですが、自由なようで結構制約があるのを感じています。ヨシキさんのサイトについては、最初はシンプルで見やすい形で 進めていきたいと思ってます。

----今後の予定を教えてください

藤田:将来的にはいろいろなことを、やっていきたいですが、今はヨシキブティックさんの仕事を中心にキチッと仕上げていきたいですね。ヨシキブティックの世界観は、自分たちの好きなティストでもあるしファッションの販促というのは、グラフィック・デザインの中でも、ある意味、最先端の場所にあると思うんです。多分ファッションには人を豊かにする要素が沢山盛り込まれているからだと思います。それを自分たちがやることに、やりがいも感じています。これからも、おもしろいものが作ればいいなと思います。


after Hours
佐藤義喜&ハモニカビル両者の雰囲気として感じるのは、静かな情熱。そして、インタビューをしてみると、発言に常識的な感覚とクリエイティブな発想が、交互に顔を出していくのが、心地よく感じる。そういった人々が作りだすものは、いつも品が良いものである。


Yoshiki boutique(ヨシキブテック)
札幌市中央区南1条西1丁目丸美ビル4階/12:00 - 20:00
注:2007年8月15日現在下記に移転

札幌市中央区南2条西4丁目COSMO3F/10:30〜20:00(不定休)
http://www13.plala.or.jp/yoshikiboutique/

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055 アーティスト[高木正勝]



最近では、デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーへの参加や、UAのミュージックビデオ制作、デザイナーの皆川明、ダンサーの上村なおかとのダンス作品を制作。そして、2004年9月、4年間のソロ活動の集大成的作品「COIEDA (コイーダ)」をリリースした京都在住の映像作家/ミュージシャンである高木正勝(1979年生)。11月「あけぼの美術企画」主催による「あけぼの土曜美術学校01」のレクチャー&パフォーマンスのために札幌を訪れた高木正勝にインタビューをおこなってみた。
Text by Shinichi Ishikawa.

NUMERO DEUX SPECIAL 055 New and is nostalgic.
Interview with Masakatsu Takagi
取材日時:2004.11.22(mon) 20:00-20:30
取材協力:あけぼの美術企画S-AIR
取材場所:旧曙小学校教室
Interview & Photograph by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)

● 高木正勝インタビュー

----イントロダクション/ライブについて

ライブという形式を採る際は、純粋なミュージシャンという立場ではなくて、あくまで自分のやり方で出来れば、と思っています。ライブの時は、その時の感情をそのまま出したいと思っているので、出来るだけ演奏する様にしています。ライブでは既存の曲の再現より、その場限りの即興をやりたいと思っているのですが、演奏、作業を僕一人でしなければならないので、完璧な即興ライブというのは、中々難しい状況です。予めプログラムを組んでいる部分もあります。今回の会場である旧小学校にはピアノがあるので、使ってみたいと思っています。ライブ中に新しい演奏の仕方等を発見をする事もあるので、楽しみです。

----写真から、映像そして音楽へ

ピアノを中学、高校と習っていました。当時は、音楽の仕事が出来たらなあ、とぼんやり思っていましたが、大学に入る頃にはすっかり忘れて、写真をやり始めました。ポーズをとっている写真が好きではなくて、日常の動きの一瞬が捉えたいと思っていました。自分が気持ちよく感じる一瞬を探すのなら、カメラよりもビデオで撮影して、そこから選んだ方が良いんじゃないかな、と思ったので、ビデオカメラを使い始めました。そのうち、色をいじったり、加工もするようになって、今の作品に繋がっています。そういう流れなので、他の映像の人とは映像作品の捉え方が違うんじゃないかな、と思う時はあります。基本的に、自分の望む「ひとコマ」のために映像を作り始めて、そこから全体の構成や動きを考える事が多いです。逆に動きで表現する所からスタートする場合は、ひとコマの見え方は考えないですが。

はじめの頃は、他の人の音楽を自分の映像に使っていました。そのうち、自分で音楽も作った方が作品の自由度が上がると思って、両方作る事になりました。いざ、曲を作ってみると、難しいと思っていた作業が意外と簡単に出来ました。最初の頃は、本当に映像と同じ方法論で音楽を作っていました。映像を作成するソフトで曲を作ってましたが、どちらも時間軸に沿って作るものなので、音も映像も一緒の感覚で作れたんです。最近は、音楽独自の方法論も出来てきたので、逆にそれを映像に活かせたりもしています。例えば、映像制作に煮詰まった時に音楽を作り始めると、新しい発見があって映像に活かせたりします。いつもひっきりなしに何か作っていますが、ひとつの作品が終わると、今度は違うタイプの作品が作りたくなります。以前は、どちらかというと映像に重点を置いていた気がしますが、今は、どちらかがリードしていく形で、止まっている方を引っ張ってくれている感じです。

自分の好きな映画とか映像で憶えているのは、ストーリーよりも、一瞬のシーンだったりします。それも、必ずしも映画の中で重要なシーンではない場合が多いです。エネルギーが伝わってくる様なシーンが好きですね。これは、激しいという意味ではなくて、たとえ静かなシーンでも、エネルギーが伝わるものが好きなんです。

----表現の姿勢について

個人的に、誰の作品に対しても、作者の思いや考えが感じられるものに出会いたいと思っています。ただプライベートな部分を外に出す、という事ではなくて、それも含めた世の中をどういう風に捉えているのか、というのを見たり聞いたりしたいと思っています。そういうものを求めているので、自分が何かを作る際も、同じ様な事が出来れば良いなと思っています。自分なりの考えや表現方法というものは突き詰めていくと、それが突出した個性になったりオリジナリティーになったりするのですが、それは他の人には理解が出来ないものではなくて、逆に多くの人と共有出来るものになると思います。そういうものに触れてみたいと思うし、自分でも生み出せれば、と思っています。

----表現へのアドバイス

今回の札幌でのイベントの様にレクチャーをする機会は結構あります。世代が近い方の中には、自分と同じ様にコンピューターを持っていて、何か作りたいと思っている方が多い様です。少しでも何かの役に立つと良いな、と思うので、結果の話だけではなくて、プロセスの話もする様にしています。

ものを作る時に、作品を見てくれる人を想定するのは、良い事だと思います。それは、100人とかそういった規模ではなくて、身近な人で、親とかでも良いと思います。それと、なぜ人に見せたいのか、というのを考えた方が良い気がします。自分で作って、それだけで満足出来るのであれば、見せなくても良いと思うんです。(そういうのに限って、名作が多いと思いますが。)もしくは、「自分はこんなに出来る」という思いが強すぎる作品は、見る人に不快な感情を与えてしまうだけだと思います。外に出すのなら、たとえ、クオリティーの部分で問題があっても、そういうものを通り越して、人に伝えたい、伝えるべきと思うものを作りたいと、僕は思っています。

----来年(2005年)にむけて

この2年('03-'04)はCDのリリースが相次いだので、ミュージシャンとして紹介される事が多かったのですが、もう一度、自分をリセットしたい気分です。なので、今までとは違った環境になったら良いな、と漠然と思っていたのですが、不思議な事に、自然とそういう環境が向こうからやって来たりして、心境、環境ともに整って来ている感じです。その中の一つには、自分の映像をもう一度美術館で見せたいな、というのがあります。単純に自分の作品を出したい、というより、自分の映像を美術の世界で見せる事に意味があるんじゃないか、と感じるからです。思い込みかも知れませんが(笑)。

after Hours
元小学校の教室という場所で、電源の関係で間接照明の中での取材は、なんとも不思議な体験だった。高木正勝は決して饒舌なタイプではないが、ひとつひとつの質問に丁寧に答えていただいた。終始、礼儀正しく、柔らかな言葉使いのなかのに時折アーティストらしい鋭さが感じられ、そして自然体であった。


INFO
高木正勝/COIEDA
2004/9/8 on sale/CD+DVD
\3,990(tax in.)MTCD-1042
W+K東京LAB WKM 005 / felicity cap-41
http://www.takagimasakatsu.com/


 

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054 私設図書館[think garden]



市電沿いの13丁目。情報発信の場として賑わうSOSO CAFE内に、「庭」が引っ越してきた。この庭は「思考の庭」という。足を踏み入れると、芸術書や山の本が一緒に並び、まるで私たちを待っていてくれるよう。堅苦しく考えないで、薦められた一冊を手にとってみるといい。きっとどこかへ連れていってくれる。自分はその庭の管理者だという、「think garden」代表の津田さんにお話をうかがった。Text by mato.

NUMERO DEUX SPECIAL 054 The janitor of the yard.
Interview with Tomoe Tsuda
取材日時:2004.9.16(Thu) 19:00-20:00
取材協力:miel
Interview & Photograph by Aiko Yamamoto & Yoko Yoshioka (mato.)

■ インタビュー 津田知枝(think garden)

----プロフィールを教えて下さい

1974年生まれ、出身は東京です。武蔵野美術大学建築学科を卒業後、数年たってからレントゲンというギャラリーで働き、その後P3という組織で働いていました。P3では2002年に帯広で開催された現代美術展「デメーテル」のスタッフとして参加しましたが、今年の春に札幌に引越してきました。

----『シンクガーデン』をはじめた理由を教えて下さい

「デメーテル」では200〜300人もの学生ボランティアとかかわっていましたが、催しが終わると、せっかく美術に興味を持っても、それを持続させるための環境に乏しいという問題がありました。今後の彼らとどうやって付き合っていけばいいかを考えた結果、本を通じて美術・芸術を教えていけるのではないかと思い、図書館をオープンすることにしました。「デメーテル」が終わってすぐに北海道で何かできないかな?と着想し始めたので、心の中の準備期間は1年ほどあったんです。2年くらいかけて準備していた美術展だったので、何度も北海道に来ているうちに縁も所縁もでき、全く知らない土地というわけでもなかったですし。もちろん、身近な友人との関係をどうしていこうか?という葛藤がありましたが、何かに引っ張られてこっちに来ちゃったものはしょうがない!と割り切りましたね。

----コンセプトを教えて下さい

コンセプトは『庭』です。場所が閉じていないということが大切。ちゃんと呼吸していて光を浴びている、その場所にいながらにして色々な場所に旅ができる・・・。私はそういった場所=「庭」の管理者だと思っています。

----『シンクガーデン』の機能について教えて下さい

芸術書、特に現代美術と建築に関する書籍を中心としたコレクションをしていますので、その専門性から、芸術分野に精通しているスタッフ=本のソムリエが積極的に書籍の紹介をし、必要に応じて利用者のあらゆる作業を助けていきます。
 「図書機能」…本の閲覧と貸し出しを行います。閲覧については誰でも利用でき、貸し出しを希望する方には会員となっていただきます。(年会費:3,000円)
 「パートナーシップ制度」…シンクガーデンを共有していくという機能です。(年会費:法人10,000円・個人7,000円)
場所がある・本がある・私がいる・情報があるというのを全て共有しましょう、という考えです。学校や会社等の単位でパートナーとし、そのパートナーには場所や情報の提供を行います。例えばシンクガーデンの場所を大学の研究室でオフキャンパスとし、ワークショップやレクチャーを行うことも可能です。蔵書の貸し出しも同時に行います。情報の共有という点では、いつ誰が来るという情報をパートナー内に提供していく等、パートナーになってくれた方には何らかの形で協力していきたいと思っています。

----『シンクガーデン』に訪れる客層に何か特徴はありましたか?

SOSO CAFEへの移転前は、学生が多かったです。住宅街にあったので、ふらりと立ち寄ってくれる主婦の方も多かったですね。今後は以前とは違った客層になっていくのではないかと思います。

----『Round Table』について教えて下さい ※

「デメーテル」や東京でイベントを企画する仕事をしていたので、「イベントっていうのは、何のためにやっているのか?」と、イベント自体の意義を最近考えています。多額なお金が投じられてはいるけれど、実際その出来事がその場所に還元されていない、イベントと都市がつながっていないように感じます。もっと違う形でのイベントの落とし込み方があるのではないかと。
 そういったイベントを一番鋭く、一般の人よりも突っ込んで見て、批評しているのはメディアの人達だと思うんです。といっても、いきなりハードに新聞記者に話を聞くのではなく、1回目は入りやすいところからという事で、フリーペーパーの編集長に話を聞こうという公開会議です。来年の4月までに何回か開催する予定ですので、今後様々なメディアの方々と話したいと思っています。

----津田さんのプライベートな趣味や楽しみを教えていただけますか?

趣味はたくさんあります。音楽・映画鑑賞・旅行・スポーツ等、色々あります。ここ数年は毎朝走ることが日課になっています。札幌に引っ越してきてからも豊平川の横を走っていますよ。他にも色々なスポーツをやっていますが、クライミングも好きですね。時間があったら世界中の山に登ってみたいと思っています。走ること・登ること…とにかく動いているのが好きです。少しでも動いていたい。じっとしているのが嫌なんです。

----津田さんにとって、『シンクガーデン』とはどんな存在ですか?

『シンクガーデン』は私を抽象化したものですね。やりたいこともどんどん増えていくと思いますし、常に成長し続けたいので、今後も一人でやっていくかどうかは難しいと思いますが。

----今後どのようなことをしていきたいですか?

日本中・世界中のあちこちにコンビニのように『シンクガーデン』のような場所が広がっていって欲しい。『シンクガーデン』=『考える場所』が色々な場所にあってもいいんじゃないかな。それと、コンスタントに教育研究的なプログラムを入れていきたいと考えています。いいことを伝えられる人って、世の中にはたくさんいますから、寺子屋のような場所を作り、そこで様々なことを教えて行くのもいいですね。


after Hours
毎朝走っていたり、クライミングをやっていたり、津田さんの趣味の話はどんどん広がっていく。私の「芸術書を取り扱う図書館」のイメージはどんどん「庭」へと近づく。それは光を浴びた庭。眼や頭だけではなくて、五感をちゃんと働かせている人と話すと気持ちがいい、そんなことを考えていた。


「think garden」
住所_札幌市中央区南1条西13丁目三誠ビル1F
注:2007年8月15日現在下記に移転
札幌市中央区南2条西7丁目 エムズスペース右2F TEL/FAX 011-241-3165


※THINK GARDEN +「札幌フリーペーパー編集長会議」
日時:2004年10月8日(金)19:00〜
参加媒体:加賀屋 稔幸(complex編集長)、濱元 雅浩(ES編集長)、石川 伸一(MAGNET編集長)
司会進行:津田 知枝(think garden代表)、大口 岳人(SHIFT代表)
会場:SOSOCAFE
住所:札幌市中央区南1条西13丁目三誠ビル1F
入場:800円(1ドリンク付)
主催:シンクガーデン・プラス実行委員会
お問い合わせ:tomoe@thinkgargen.org

 

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053 アンティーク着物のお店[まめぐら]



大通公園のおしまいにある資料館の裏側仲通りに、なんだか気になる建物があった。14丁目にひっそり佇んでいるその臙脂色の建物には「まめぐら」と書いてある。扉を開けるとなんだかなつかしいにおいがした。そこには色とりどり、柄とりどりの着物や小物たちが出番をまっている。すこしだけ日常から離れた空間、アンティーク着物や小物をあつかう「はぎれ・リサイクル着物 まめぐら」の店長さんにお話をうかがった。Text by mato.

NUMERO DEUX SPECIAL 053 Wisdom and a margin.
Interview with Miho Koikawa
取材日時:2004.5.22(Sat) 16:00-17:00
取材協力:はぎれ・リサイクル着物 まめぐら
Interview & Photograph by Aiko Yamamoto & Yoko Yoshioka (mato.)


----お店をはじめるまでの簡単な経歴を教えてください

1996年、今から8年前に「まめぐら」をオープンしました。
実家が商家でしたので、小さい頃からお店を手伝っており、当時は朝から夜中までとても忙しく働いていました。短大卒業後はOLとして働いていましたが、結婚した相手の体が弱かった事を機に商売をしようと考えました。とにかく何か手に職をつけようと色々と習い事に行きましたが、どれも自分には合わないと感じて長続きせずにいました。

ちょうどその頃、友人のお母さんが和裁を教えていて、やってみないかと誘われた事が着物の世界に触れるきっかけでした。元々は着物に興味など全くなく不器用な私でしたが、和裁をやっていくうちに着物の奥深さを知り、どんどん好きになっていきました。そのうち、自然の成り行きでアンティーク着物の店を作りたいと思い始めて、すぐに物件を探し出しました。今の場所は新聞の広告で見つけて、実際に見に行って即決しました。大家さんがとてもいい人で、偶然が重なった出会いでしたね。

----どのようなアイテムをあつかっていますか?

扱っている商品の内容はどんどん変わってきていますが、現在はアンティーク着物(明治・大正・昭和前半)・中古着物(昭和後半・平成)・新品着物・帯・履物・小物・はぎれなどを扱っています。他に、着物や帯の生地を使った手作りのバックや小物も何点か置いています。
オープン当初は仕入れ先などもわからず、取引先のない状況でしたので、旭川などの地方に行って古着を購入し自分で洗い張り、仕立て直しをしたものが中心でした。当時はまだ反物を買う余裕がなかったですから。しばらくたってから、東京や京都に飛び込みで買い付けに行くようになりました。状態の良いものを揃えていきたいので、アンティークを集めるのはなかなか大変です。
また、商品販売だけでなくアンティーク着物のレンタル、着付けも行っています。最近はレストランウエディングで着ていただくことも多くなりました。ウエディングだけでなくパーティなどにも着ていける物もご用意しています。



----客層やよく出るアイテムを教えてください

学生さんからご年配の方まで幅広いですが、私と同じ年代、20代・30代の女性のお客さんが多いです。
小物や帯などを買っていかれる方がとくに多いですね。その方が持っている着物や帯を利用して、足りないものを揃えていって欲しいと思います。着物はとても高いイメージがあると思いますが、着物入門として安い着物からから買い始めて、そのあとで徐々に良い着物、高い着物へと移行していくといいのではないかと思います。


----店長さんにとって「着物」とはどんなものですか?

着物は「文化」だと思います。私は24歳で和裁を習い始めるまで着物という世界には触れることなく過ごしていましたが、こんなにも知恵がつまっている物は他にはないと思います。一枚の布から作られていて、適度に余裕を持たせている。そして最後にはハタキとして最後まで無駄なく使うことができる。着物の奥深さを知れば知るほど、日本人として生きていることへの誇りを持つことができました。他の仕事をしていたら、ここまで誇りを持てなかったと思います。

----最後に、今後の予定やお知らせがありましたら教えてください

6月にセールを行いますので、是非一度お店をのぞいて見てください。ウエディングやパーティの際に着ていけるアンティーク着物をご用意しておりますので、興味のある方は是非一度お店を覗いていただきたいと思います。


after Hours

店長さんは、いつ伺っても話しやすい空気感をもっていて、今日の取材でもそうだった。取材中もお客さんにやさしく目を配り、オススメしたり、その人に合わないものはオススメしなかったり、包容力のある信念を感じた。もっとサラリと着物を着て、どこかにおでかけしたい。そんな時にはまたフラリとまめぐらへ行きたいな、なんて思う。



「はぎれ・リサイクル着物 まめぐら」
住所_札幌市中央区大通西14丁目3資料館裏仲通り
営業時間_11:00〜18:00 / 定休_月曜日,第2・4火曜日 / 電話_ 011-272-6788
http://www.mamegura.com


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