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038 とり・みき「機動警察パトレイバーWXII」


「機動警察パトレイバー」劇場版最新作「WXIII」の脚本とり・みきにインタビュー

「レイバー犯罪史上、空前の<悲劇>の幕が開く」。コミック、テレビ/ヴィデオ、そして劇場版とさまざまなヴァージョンによって「レイバー(人型ロボット)が存在する近未来にレイバー犯罪を取り締まる警視庁<特車二課>通称パトレイバー中隊の活躍を描いたアニメーション「機動警察パトレイバー」。その劇場版3作目「WXIII」が9年ぶりに発表された。「パトレイバー」の世界が、現実の世界により近づいている現在、「WXIII」のテーマは21世紀を生きる僕達のための切実なドラマとしてその姿をあらわした。去る、4月6日(土)舞台挨拶のため札幌を訪れた脚本のとり・みきにインタビューをおこなった。

text&Interview NUMERO DEUX

NUMERO DEUX SPECIAL 038 "ANOTHER" Interview With とり・みき
取材日時:2002.04.6(sat) 12:30-13:00 / 取材協力 バンダイビジュアル
Interview by NUMERO DEUX
Photograph by NUMERO DEUX Art Direction & Design:NUMERO DEUX
NUMERO DEUX Copyright.

1.もともと本作はヴィデオ作品として脚本をオファーされたそうですね。しかし、途中で劇場作品に変更して、それによって劇場作品の「1」「2」を意識したりしましたか?

    一番最初のオファーの時はオリジナルヴィデオで外伝というお話でした。その脚本があがるかあがらないかの頃に劇場映画になるという話になりました。劇場作品になると知って、まず内容的にというよりも映画としての雰囲気を意識しました。最初ヴィデオ用に書いていた脚本は全体的に軽いノリで、本道の怪獣映画してました。ヴィデオの番外編ならそれでOKだったんですが、「パトレイバー劇場版」ということになると前2作の雰囲気とあまりに違いました。高山さん(総監督)の演出もぼくの脚本も「1」「2」とは全然違う方法論でやっているんですが、劇場版の持ってた雰囲気は引き継ぎたいと思ってシリアスな路線に変更しました。脚本をビデオ版から劇場版に変えていく途中の作業の中で監督やスーパーバイザーの出渕さんとブレイン・ストーミングを繰り返しおこなったので、脚本を好き勝手に書いてバトンを渡すという感じではなく細部までああでもないこうでもないといいながら詰める作業は長い間やりました。

2.マンガと脚本では作っていて違いありますか?

    マンガを描いてる時はネーム(セリフ)と絵を同時に描いてます。ですので、絵で説明してるから文章を削ってもいいやと、作業を同時進行できます。しかし、脚本を書いてる時は文字だけで絵がないので、これだとちょっと説明不足になるかなあと感じて、最初は説明過剰というか長めのセリフになってました。普段自分が描くマンガより説明的なセリフになっていたかもしれません(笑)。

    3.本作の舞台の描き方に「1」と「2」とは、違いを感じましたがこれは監督の押井監督と年代的な違いからくるものでしょうか?

    年代というよりも、押井さんの場合は自分の育った東京に対する喪失感みたいなものがあって、まやかしっぽい現在の東京や日本のシステムを、フィクションの中で破壊というか解体してみせるようなところがある。自分も高山さんも九州出身なのでそういうのをやろうと思っても嘘になると思うんです。田舎から出てきて1人で暮している人間が感じている東京感もまたあるはずで、そういう意味では高山さんが考える現在の東京感が今回の映画によく出ていると思います。脚本の段階ではとくに意識して描写はしませんでしたが、絵の部分によくでてると思います。押井さんの場合はさらにそれを独特のレトリカルな長セリフで解説していきますが、今回は観念的なセリフは一切やめようということになって、ことさら言葉でそれをだめ押しするということは一切しませんでした。例えば、怪獣が出てきたら登場人物が指をさして「あ!怪獣だ!」とセリフでさらにだめ押しするのが親切でわかりやすい演出かもしれませんが、本作ではそういうことはしていません。川井さんの音楽もできるだけ刈り込んだ使い方をしています。結構アニメを観てる人でも実は絵を見てなくてセリフで話を追ってるお客さんが多いと思うんですよ。そういうことに慣れてると面喰らうかなあ、という気がします。

4.「1」と「2」は社会的テーマを感じましたが、本作はパーソナルなテーマを感じました。そして、登場人物はみな孤独感を持っているように感じました。

    それは高山さんの最終的には個人的な人間のドラマを描くんだという資質が大きいと思います。準備稿の段階ではそこまで踏み込んでませんでした。高山さんの最初の宣言みたいなものがあって登場人物は皆何らかの欠損をもった人間なんだと。久住は怪我をしてますし、離婚もしてます。主要の3人が皆良い人ではないんですね。秦も好青年だけども刑事として甘ちゃんな部分を持っています。だからといって久住が模範的な刑事でもない。キャラクターが出来上がっている後藤ですら今回は完璧な人間としては描いていない。全てそんな感じでキャラクターを描いているので感情移入しにくい人も出てくるかもしれませんね。その分等身大の人間のドラマを狙っています。また、東京に住んでいる人間がコミュニケーションが苦手というのは、マンガを描く仕事をしているぐらいですから、自分の中にももちろんあります。

5.本作はセリフが少なめかわりの東京の街の描写はキメ細かいですね

    高山さんが強く言っていたのはストーリーはもちろん大事なんですが、それよりも強いテーマとして現在の東京の持っている空気感や時代の雰囲気をフィルムに焼きつけたいということがあった。神戸の大震災やオウム事件が起きた頃のどんどん不景気になっていった時代の都市に住んでる人の倦怠感やストレスを作品に定着させたかったようです。例えば、早朝にカラスがゴミを漁っているシーンや深夜のコンビニとかラッシュアワーの電車、終電の酔っぱらいの光景…お客さんが現実社会でも毎日見てる光景の羅列こそ、高山さんがいちばんやりたかったことじゃないかな。それは見事に成功していると思います。脚本の段階ではなかなか描けない領域で演出の力だと思います。

6.読者の皆さんにメッセージをおねがいします?

    これまでずっとパトレイバーのファンだった方はいちいち僕が言い訳めいたことを言わなくても本作を見ていただければ、これもまぎれもなくパトレイバーがこれまで描いてきた世界観のうえに成り立っている作品なんだということは御理解いただけると思います。映画としては自信作ですし、決してパトレイバーの名のもとに恥ずかしい出来になってる作品ではないという自負はあります。1本の映画として見ていただければありがたいですね。



「WXIII 機動警察パトレイバー」
2002年/日本/35mm/ドルビーデジタル/ビスタサイズ/1時間40分
製作:バンダイビジュアル、東北新社 配給:松竹
総監督:高山文彦 監督:遠藤卓司 脚本:とり・みき 音楽:川井憲次
スーパーバイザー:出渕 裕 (C)HEADGEAR/EMOTION/TFC
http://www.bandaivisual.co.jp/patlabor

   





   

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