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008 POLA X

Numero deux
SPECIAL


008 NOV.1999"LEOS CARAX(again)"
interview with Hiromi Nakajima THEATER KINO

(INTRODUCTION)

    レオス・カラックス。映画監督。1983年。22歳のデビュー作、『ボーイ・ミーツ・ガール』によって、「神童」または、「フランスの恐るべき子供」といわれ、2作目『汚れた血』をフェイバリットとする映画ファンも多いだろう。しかし、3作目である「ポンヌフの恋人」 (1991)の大幅な予算/期間オーバーによる危機と、一部の酷評により、沈黙の時代にはいる。だが、今年、カンヌ映画祭に新作「ポーラX」を持って復活。死にもの狂いで全身全霊をかけたというこの新作を札幌ではシアターキノで12月18日(土)より上映されます。支配人であり、カラックスのファンでもある中島ひろみさんにインタビューしてみました。

     


(INTERVIEW)

---中島さんの最初に観たカラックスの作品を教えてください。

    「汚れた血」です。あの作品は一般的には構成的なこととか、色彩的なことが評価されている訳ですが、私の感じ方は、何て孤独をかかえて生きているんだろう、と思いました。そしてラストに飛び立とうとする瞬間を観てしまうと、それですべてオッケーという感じでした。そして「汚れた血」を観た後、なにかのインタビューでカラックスの好きな作家がポール・オースターというの知って、この作家も内向的な孤独を描く人じゃないですか、そういう部分で、カラックスの作品は観ていきたいな、と感じました。彼のことをゴダールの再来とかという観方より、その心のなかにある根源的な部分が私の心にひっかかたのです。他の作品「ボーイ・ミーツ・ガール」や「ポンヌフの恋人」にしてもすべて彼が投影された映像じゃないですか……観ている私達がカラックスに出会っているように感じます。

---そして、最新作「ポーラX」について

    「ポーラX」は、凄い作品です。
    でも、カンヌ映画祭からは総スカンをくらって、フランスのジャーナリズムもまったくダメという評価なんですよね。でも、私が観た印象でいうと、どうしてこれが評価されなかなったのかなわからない。どうしてひとりの作家が心も身体もすべて捧げたものが評価できないのか、私にはまったくわかりせん!この作品はカラックスがもういつ人生にピリオドを打ってもかまわない、という覚悟で作ったものなのに…自分には映画しかないというところで作ってものです。本当に最初にこの映画を観た時は配給会社の人と「これでカラックス死んじゃうかもしれない」とも話しをしたんです。本当に彼のなかにある孤独な魂が浸っていくという感じなんです。人間の持つ暗い暗闇の世界。大多数の人が観たくないと思うことをみせますね。というか、それしかできない、という感じなんです。

---90年代、映画作家の不在のなかでのカラックスの強力な作家性、

    今世紀末とかいわれてますが、80年代にはまだ、映画作家というのがいたと思うのです。それは作品に監督の人格が出てくるということです。90年代に入ると、いろいろな趣向を凝らした…例えば編集の巧みさとかで人を楽しませてくれる作品は出ていると思いますが、純粋に自分の作品だ!といえる作家性を持つ監督は、今年1年振り返ってみても皆無だったのでは…と思います。そういう面では今の作家と呼ばれるひとたちは人間の内面というよりも、空虚さみたいなものをいろいろな過去の作品からリミックスするような形をとっています。それが悪いということではなくて、それが今の作家のスタイルなんです…ということが「ポーラX」を観て気づいたんです。あらためて、現代の作家性の不在を。だからこそ、(強力な作家性を持つ)「ポーラX」は90年代に上映しなければ、と思ったのです。ただ、お正月に上映する勇気はなかっですけど(笑)。

---「ポーラX」の美意識

    「ポーラX」は原作の要素とカラックスの世界観がいっしょになって、いろいろなカケラがたくさんあるんですよ。映画の暗さからいえば、とってもダークな映画ということになってしますのですけど、眼とか耳とか五感に対して訴えてくるものは凄いです。決して短い映画ではありませんが、目がはなせないです。今の若い人ではカラックスの作品はひとつも観たことがない、という人も多いと思います。そういう人にもいいカラックス体験になればいいなと思ってます。それで、どう感じるかは、もうおまかせするしかないですね。

---「ポーラX」上映についての関心

    前売りはですね、世代的には20代、30-40代ぐらいの人が買うのかな、と思っていたら高校生の方々が結構買っているんですよ。東京とかでも、高校生が前売りを買ったり、ポスターの人気があるみたいなんです。それに、パンフレットも出ているみたいなので作品に対する、満足度も高いのかなーと……だから、若い人でもハッピーだからいいという訳でもなくて、暗闇のなかを魂がさまようの感覚を、感じてもらえるんだなぁ、と感じましたね。「ポーラX」はカラックスの強力な美意識が出たものなので、もうこれを身近な、生活匂のある作品に落とすことは無理なんです!魂のさまよい、落ちていく感覚が普通ではないです。本当に真剣にカラックスが向かいあっているのがわかります。

---最後にひとこと

    私はこの映画を最初に観たときにカラックスは「ポンヌフの恋人」には不満足だったんだなぁ、と思いました。そしてポンヌフでできなかったことをやりきったな、と。そして、「ポーラX」を2度目に観た時は1度目と違ってカラックスは次につながる希望の光をみつけたようにと感じられたのです。

(THERTER KINO DATA)
札幌市中央区狸小路6丁目南3条グランドビル2F







   

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