2012.11.09-12.01 「クスミエリカ個展『白の虚像』」
----- 札幌アート&カルチャー 行ってみて話をきく。-----
「いろいろ想像するのが好きです。街を歩いていても非現実的なことをよく想像します」
2012.11.09札幌は冬の入口のはず。そぐわない暖かさの中の雨…今の季節がわからなくなる。そんなズレから現実感を失うことがある。
市内在住のフォトグラファー、クスミエリカの個展に夕方いってみた。感想を展示と彼女の話から書いてみようと思う。
フォトグラファーの個展というと、人物や風景を捉えた「写真展」をイメージする。しかし、会場に入るとその予想は心地よく裏切られる。 目の前には白を基調としたフレームの中で大胆な写真のコラージュ。無機物とも有機物とも、とらえきれない未知な光景が表現されている。アバンギャルドではあるが、そこには不安や暗さは感じられない。軽やかな明るささえも感じる。ベースとなる写真はすべて彼女が撮影したもの。フォトグラファーらしいこだわりだと思う。
彼女の作品は、とても自由で楽しげだ。作品自体の印象は非常にクールだが、制約のないイマジネーションの中で制作しているのが観る側にも伝わってくる。そんな「自由」さが観る側に楽しさや安心感を伝えている。クリエイティヴとしての苦労はあると思うが、好きな発想から生まれていると感じる。凄くファインなアートである。
会場では、佐々木恒平(not/c)の音楽が流れ、木村綾子(Gravel)による植物のオブジェもディスプレイされている。これは平面作品に感じる限界から、空間をつくるインスタレーションとしての試みだという。
彼女の表現活動のこれからに興味が出てきた。早々だと思ったが、次の個展の取り組みについて聞いてみた。「また個展はやりたいですね。何年後、とか決める感じではなくて、思ったらやりたいと思います」 とのこと。楽しみだ。
展示会場を出ると、雨がより強くなっていた。
でも、少し暖かい。より暗闇の中の帰路は楽しくなった。
それは彼女の作品のせいかもしれない。
Text & Photo by Shinichi Ishikawa(NUEMRO DEUX)
クスミエリカ個展「白の虚像」
会 期:2012年11月9日(金)~12月1日(土) 14:00~22:00(日・月休)