029 ファション・デザイナー「宇津木えり(フラボア)」
人間はつくづくメンタルに支配されていると思う。小さなことに悩んだり、いきなり自信がなくったりして、「何をやってもダメな感じ」になる時がある。そんな時に「良い服」(音楽、映画、アートでもありうる)に出会えると、急に「うまくいく!」と気分が良くなって、下らない心配事に支配されかかった自分を解放することに成功する。そんな服はもちろん、どんな服でもいい訳ではない。その条件は値段は関係はない、有名人が着ているものとも違う。そんなのむなしいだけだろう。「勝負服」というのも違う、それは服をツールにしすぎている。「良い服」というのは、生活をともにして気分よく過ごせる彼氏(彼女)といってもオーバーではないだろう。具体的には個人の好みになってしまうが、今回[FRAPBOIS」(フラボア)という、札幌にも出店したニューブランドには、長くつきあえる良い関係になれそうな「服」だ。デザイナー宇津木えりにインタビュー。「服」についていろいろお話をうかがった。みなさんも自分にとっての「ニュー・スダンダートな服探し」をしてみてはどうだろうか。
text by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)
NUMERO DEUX SPRCIAL 029
"FASHION newstandard" Interview With Eri Utsugi(FRAPBOIS designer)
取材日時:2001.7.28(sat) 17:00-17:30@FRAPBOIS sapporo
取材協力 : BIGI CO.,LTD/ TGER CORPORATION INC.
SHINICHI ISHIKAWA(NUMERO DEUX)
Photograph by Asami Hosino
Art Direction & Design:NUMERO DEUX
NUMERO DEUX Copyright.
INTERVIEW WITH Eri Utsugi[FRAPBOIS Desginer]
●なぜ、ファッション・デザイナーになったのですか?
私の母は洋裁をやっていたので、母は自分の作った服を着たりしていました。そのため家にも生地がたくさんあって、私自身の服もたくさん作ってもらいました。よく、母にこういう素材で、こういう形のを作ってと頼んでいました。そのうちに自分でも作るようになって、その辺が原点ですね。その頃から服を作るのが好きでした。それを将来の仕事にする、と考えたのは、漠然とですか私はなにか表現していく仕事をしたかったのです。それは音楽とかいろいろありますが、私は服を作るのが好きだったので、それを仕事として選びたいなと思いました。「服作りが」一番身近だったということです。それから衣服デザインの短大に進学して、そこではなにか物足りなさを感じて専門学校にも行きました。当時はもう突っ走っていたという感じで、毎日が勉強、勉強でしたが、がんばってましたね。
●フラボアのコンセプトについて、教えてください。
「フラボア」のコンセプトとして、自分が着たい服を作るというのがあります。私自身では色とか、存在感とかサイズなどの細かい部分で、自分が着たいなぁ、という服が少なく感じていたのです。特にサイズについては今は細くて丈の短いものが多くて、30代ぐらいなると着こなしが難しいのです。「フラボア」では30代、40代の方に着てもらっても大丈夫な服を作っているつもりです。同時に、10代、20代の方でも可愛く着てもらえる服だと思います。デザインについては抑え抑えやってます。シンプルにしたい気持ちとデザインしたい、という気持ちのバランスを取るのが難しい。でも、そういう時は自分が着ているのを想像してみて、それを基準にしています。なぜなら、服について自分と同じ考えの人がきっといると思うからです。
●服というのは何なのでしょうか?
服というのは、必要最低限でいい、という意見もあるかもしれないけど、やはりこの世の中を生きるパワーの源になるものではないのかな、と思います。この服はすごく着てみたいな、着たら楽しい、自信が出た、というのが絶対あると思うのです。自分にとっても、服というのは「ささえ」になるものだと感じます。服というのは着る人の精神的な部分に関わると思うし、着る人を表しますよね。だから、おろそかにはできないものではないでしょうか。
●デザインのアイディアをどのように生まれますか?また、トレンドについてどう考えますか?
私は日常から生まれます。例えば、電車に乗っていて、すれちがう、どちらかというと若者よりも、ずっと上の世代のおじさん、おあばさんの服装のほうが気になります。その中に意外な感じで可愛いい組み合わせを発見できたりします。新鮮でピーンときますね。日常の発見、出会いを大事にしています。世の中のトレンドについてはそれに合わせて同じものを作ってもしょうがない。でも、気にしない訳にもいかない。トレンドという時代の流れにそっていかないとダメな部分があると思います。それを無視して、ただ時代に逆行してもしかたがないです。
●服を作るという仕事を続けられたパワーを教えてください?
「好きだ」ということですね。作る楽しさ、できた時の喜び。また、思いどおりに行かなかったときに、なぜそうなったのか?と考えたりすること。「作る」ということを大事にやっていくことではないか、と思います。服を作る会社に入った時は、必ずしも最前線の仕事ができる訳ではないけど、それでも何らかには関わっている喜びというのを感じて、その中で「ものを観る目」を培っていかないといけないと思います。そういう下積みの仕事が、いざ自分自身が最前線に行ってときに作ったものの完成度に凄く影響を与えます。それは自分自身の経験で感じました。私は下積期間は長いですから。12年ぐらいありました。下積み期間はもちろん、大変な時もありましたし、くじけそうな時もありました。でも、自分はやっぱり「作る」のが好きなんだな、と実感できる時があって続けられました。自分にとって「作る」というのは自分自身の「宝」だと思うし、そして作ってたものが、人に共感してもらえて、着てもらえるのが自分の生きる喜びですね。ただ自己満足だけで作りたくないですね。
●着てもらい人
仕事でも、遊びでも、明るく、前むきで、思いやりのある人に着てもらいですね。そうなって欲しいし、自分もそういう人になりたいので。
●最後に今後の予定を教えてください?
来期ぐらいから、メンズを展開したいと思っています。来年の春夏ですね。あと、東京コレクションに参加します。
FRAPBOIS sapporo
札幌市中央区南2条西1丁目1番地11de9の中2階
TEL.011-218-1710
http://www.frapbois.jp
after hours
取材を終えて
慌ただしいオープン日の取材に対して、時間オーヴァー気味にもかかわらず快く取材に応じてくれて、しっかりとして答えてくれたことに感謝したい。FRAPBOISは現時点で、メンズはないのが残念ですが、一度、お店のほうにいって現物を見る価値はありますよ。僕の受けた印象は、ヨーロッパぽい感じで、シンプルなんだけど、細かい部分にデザインのエッジが利いていて、そこがカッコ良いなと思いました。カラーは淡い、シックな感じで統一されている(といっても、大人向け!、という感じでもない)。バックとかの小物は素朴&ポップなティストが可愛い。これからの秋物セレクトの候補にしてチェックしてみてはどうだろうか。
Shinichi Ishikawa(NUEMRO DEUX)
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