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ダークサイドは正しいか?

Suri

洋画★シネフィルイマジカ
「 スリ[掏摸]」(1959)

 ロベール・ブレッソンの古典的名作。10年以上前に本作を観た時はピンとこなかった。それどころか眠たかったです。正直にいいますと。

 でも、今回はバッチリです!とまではいかないけど、前回よりずっと楽しむことができた。ストーリーは、ほとんど主人公の青年の独言で進んでいく。貧乏学生が独自の哲学で犯罪を肯定し、スリの世界にのめりこんでいく様子が描かれる。

 それを本当に微妙に僅かに描いていく。普通、人が犯罪者に移行して行くことはダークサイドに落ちるがごとく、「(観ている側とは)別の人間になっていく」として描かれる場合が多い。しかし、本作では実に淡々と犯罪者になっていく主人公を描く。普通はコントラストを出すべき犯罪者前と犯罪者後がほとんと変らない。主人公を驚くほど変っていない。犯罪者になったこと以外は。

 主人公は多分、貧乏でなければ犯罪者にはならなかったと思う。犯罪者とは環境が作るものだろうか?環境が犯人ならば、環境を作るのは誰なのだろうか?ダークサイドという「サイド」は明確なものなのだろうか。

 ヒロインの出番は控えめではあるが、さりげなく主人公とリンクしていく様子がとてもいい。彼女の存在は本作で実に大切だと思う。前回観たときはそのことは、まったく気がつかなかっのだけど。現在でも通用しそうな魅力的な女優さんです。これは個人的な好みかな。ブレッソンのDVDBOXセットが欲しくなりました。

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