森ガルよりの方向性
「食堂かたつむり」(封切作品・2010年)
なんの前知識も仕入れず観に行ってみました。
タイトルからして、森ガル臭たっぷりで、そんな作品で柴咲コウで大丈夫なのか?と心配した僕でした。ここで告白すると柴咲コウの顔、好きです。守るべき顔だと思います。そんな保護者的観点で本作品に接しました。
本作のポイントを説明すると、森ガルぽいのだけど、そうじゃない作品だね。そのため結果的に、間口の広い作品になっていると思う。こういった映画で出てくるのは邦画が以前に比べて好調だからかな。本作はミニシアター系でもないし、タイアップ大作でもない。そんな企画が通るのはいいことだと思う。
柴咲コウに「あなたはこの映画で森ガルをやりなさい」といっても乱暴なのである。無理なのである。だから、彼女の帰ってきた実家には「おっぱい山」があるし、彼女がリノベーションで作った食堂で作る料理は、やや脈絡を欠くのである。それでいいのである。主役は彼女。主役は料理ではない。そのことを観客にハッキリとつきつける。ついでにいうと、主役は食器でもない。だからハート型でもいいのである。
思わせぶりなアートなシーンはないが、映像はキレイだと思う。柴咲の「口がきけない」という設定もいい。そのおかげで、こころゆくまで彼女の目力を楽しめるのだ。そこもマニアなポイントだ。
ラストの流れは、やや冗長な感じもしたが、娘と母との関係性という部分で十分なボリュームがあるのは良かったかもしれない。そう、本作は、アート系の突き放しは不要だ。2時間かけてじっくり説明されるべき映画なのである。そして、すべてのことにキッチリ決着をつける気持ち良さが本作にはある。