凛々しい
DVD REVIEW「フリーダムランド」(2006年・アメリカ)
世の中、普通に暮らしていくのも大変なものです。本作のジュリアン・ムーアの演じる女性は、自分がシングル・マザーになることによって、生まれてはじめて自分に自信がついたような気がした。
でも、結局は子供と二人っきりの生活では満たされない彼女もいた。ダメな女性なのだが、なにか凄く特別な事があってダメになった訳ではなく、限りなく普通にダメなところがかなり観るほうにリアルに語りかけてプレッシャーとなる。人事じゃない。ダメとそうでない境界なんて薄皮一枚だ。僕はそう思っている。
ほとんどのシーンでただボーッとしている曖昧に不安定なだけのジュンリアン・ムーア。そのダメ存在感が凄い。それだけがやたら印象に残る。共演のサミュエル・L・ジャクソンの個性でなんとかバランスをとっている。
導入はオチが命のサスペンスふうだか、そこに人種問題、親子の問題、子供の失踪を探すボランティア・グループ、そして森の中の「フリーダムランド」。
これらが完成形が決まっていないパズルのピースのように出てきて、オチについてはわりと薄くなっていって、ポコポコと問題だけが答えもなく顔を出していく。そして静かに終演に向って行く。そんな中で失踪した子供を探すボランティア・グループの静かな情熱のようなものが凛々しくて印象に残った。