白夜夢
コーヒーのカップを傾けた。その中の黒い液体が静かに流れた。
こぼれなかったのは幸いだった。こぼれてソーサーに流れるのがひどく嫌だ。
そのゆらぎだけで僕には十分だった。今日のことから明日のことまで自分の思いや考えは及ばなくなることがある。
そういう時は、僕はカフェに行く。そしてケーキセットを頼む。ケーキはチーズケーキで。ここにくる前に足を運んだBOOK・NET・ONEのことを思い出した。
そこの店内は空いていて、学校帰りらしい高校生が制服姿がひとり、ジャージ姿が一人立ち読みをしていた。店内の蛍光灯はとても明るく感じられた。その明るさが目に少し刺さる感じがした。書棚をひとまわりしてお店を出ると隣のお店からは蛍の光が流れていた。左手にはパチンコ屋と、居酒屋のネオンが見えた。
そこで携帯電話には着信があって、どうやら留守電も入っているようだった。そこで現実に戻される。いつも、現実に戻されるのはコミュニケーションなのだ。
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