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めがねとプール

Pool

Film Review
「プール」(封切作品)

「かもめ食堂」「めがね」のスタッフが再結集した最新作。キャストは小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮、伽奈。最初の3人は前作「めがね」から続いたキャスト。伽奈はモデルから、はじめての女優としての出演作品である(以下、内容の核心に触れますので注意)。

 僕は、本作の他は「めがね」しか観てない。そして、比較するなら「めがね」のほうがいい作品だと思う。監督も作品傾向も違うので、良い悪いで比べるのはやや乱暴だとは思う。それでも、僕は「めがね」のほうが良作だと思う。小林聡美も、もたいまさこも実はもうこういう傾向の役をやるのはうんざりしているのではないだろうか。

 小林聡美は「プール」では「ねがね」と180度違う役を演じている。「めがね」での小林は観客の感情移入すべきキャストであった。典型的な現代人である小林が、ある島の民宿を訪れた時、そのスローペースの世界に、戸惑い、そして慣れていく、そして元の社会に戻るストーリーは、ただただゆるいだけ、と批判をされたとしても、ある程度「こんな夏休みもあるかもしれない/過ごしたい」というリアリティのある話であった。劇中のエピソードもいろいろあっておもしろかった。

 しかし、「プール」での小林は「タイで民宿をやりたい」と思い、娘の伽奈を自分の母親に預けて日本を離れタイで民宿をやっている。そこに、訪ねて来た伽奈に「自分は好きなことをやる」と語る。それに対して「自分のそばにいてほしかったのに、なぜ行ったの?」という質問に小林は答えない。ラストまで観てその答えがわかるとかと思えば、僕は鈍感なのかその疑問についての答えはいっさいわからなかった。

 さらに小林は母親が行方不明のタイ人の子供の世話をしている。その設定が何を意味しているかも最後までよくわかない。食事は前作と同じフードコーディネーターということで、おいしそう。でも、食事のシーンはほとんどないので、あまり印象の残らない。場面として、食事=コミニュケーションであるべきなのに、ほとんど機能していない。また、劇中エピソードも少なく、長回しの映像が続くのみ。それは悪くはないのだけど、楽しいシーン欲しかったなぁ。

 もたいまさこについては、前作でも浮世離れした存在だったが本作ではそれがさらに強くなっている。それは悪いことではないが、そこからエピソードが生まれる訳でもなく、ただの現実感のない存在として描かれていて魅力を感じられない。小林との関係性もわからない。

 本作の一番やっかいなのは「親子関係」とか「人間の死」というテーマが、ちらほらすることだ。それがなければ僕はもう少しは楽しめたが、そんな極めて重要なテーマが、思いっきり放り投げられていて、それがどこに着地もしないままま終っている。それがなんとも居心地が悪い。これが本作の世界観なら、かなりドライで刹那的としかいいようがない。もっと優しさが欲しいですよ。

 「めがね」をオシャレ雰囲気映画という批判もあるようだが、それはそうかもしれなけど、そんな映画もあってもいいじゃん?と僕が弁護できる。だって、そこにはひとつの幸せなイメージはあったでしょう。しかし「プール」の弁護はかなり難しい。だって、羨ましいシーンがひとつもないもの。

 小林の個性に対して、伽奈は初めての出演作品として荷が重すぎる。結局、彼女はこの滞在期間に、なにを感じたかは観客はサッパリわからない。劇中に「プール」があるものの、そこで泳ぐものはいない。そんな不自然さにあふれる作品だっと思った

 僕はこのキャスト、スタイリスト、撮影のセンスがあれば、趣味のいい作品になるのだから、もっと普通の話で良かったんじゃない、と思った次第でございます。なんか、悪い話ばっかりですが、小林がギターを弾き語りのシーンは良かった。エンドクレジットで小林が作詞・作曲と知ってびっくり。才能あるなぁ。













 

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