09.10.28 - 10.02.11「これくしょん・ぎゃらりい『シャガールとパスキン 彷徨えるユダヤの魂』ほか
続・冬の中の美術館 3つのアートシーン。
● これくしょん・ぎゃらりい「シャガールとパスキン 彷徨えるユダヤの魂」 「ガラスの塊−キャスト(鋳造)による造形」「浮世絵美人画の世界」
会 期:2009年10月28日-2010年2月11日 9:30 -17:00(入館16:30まで)
会 場:北海道立近代美術館(北1西17) 料 金:一般¥500・中高大¥250
冬の札幌。2月には、いよいよさっぽろ雪まつり。寒さも最高潮となる。外を少し歩くのもおっくうに感じるけど、滑らない靴を履き、コートを着込み、フードや帽子でしっかり防寒して(そして、もちろん天気がよければ!)雪国の散歩も楽しい。これは素敵なホントのことです。
冬の中の美術館を求めて、また歩いた。北海道立近代美術館にを目指す。僕は西11丁目のほうから10分程度歩いていったけど、地下鉄東西線「西18丁目駅」4番出口から徒歩5分ほどだ。敷地内の美術館はすっぽりと雪に包まれていて不思議な印象をうける。そんなことを感じながらエントランスにむかう。入館して右に行くと特別展、左に行くと常設展である。2Fにはレストランもあるよ。
今日、むかうのは左側のほう。所蔵作品の展示を中心にした常設展示室「これくしょん・ぎゃらぃ」である。ここは1階と2階を使った展示室となっている。現在上記のとおり3つの企画展示がおこなわれている。一回の料金で、まったく異なる3つの展示を鑑賞できるのは魅力的だといえる。以下、それぞれの展示の様子を写真で紹介していこう。
▲まず、入ったところは、シャガールとパスキンの作品展示(86点展示)。20世紀初頭のパリでは自由な創造を求める外国人芸術家が集まった。これが「エコール・ド・パリ」と呼ばれている。その中の代表的な存在がシャガールとパスキンである。
2人の作風は共通点を見出すのは難しい。しかし、2人はともにユダヤ人という共通点があった。そこを意識して今回の展示を鑑賞してみて欲しい。2人の作品には同じバックボーンから生まれた、合わせ鏡のような関係を感じ取れるかもしれない。
加えて、他のユダヤ人およびフランス人画家の作品も紹介されている。1920年代~30年代のフランス美術界の側面を紹介している。1Fの本展示室をフルに使用した展示は見ごたえは十分。当時の空気を感じられるだろう。
▲ らせん状の階段を上って2階の展示室に向かう。最初の展示はガラスのオブジェの展示である(19点展示)。少し照明を落とした空間に、さまざまな形態のガラス作品が並ぶ。それらの作品はすべてキャスト(鋳造)とよばれる技法を作られている。
これは簡単にいうと型を作りガラスを流し込んだ作品。よく思い浮かぶ、吹きガラスの製法とは異なり偶然性を排して作家がゆっくり時間をかけて思い通りのイメージで作れるという特徴があるそうだ。たしかに展示されている作品群は、それぞれの作家性が発揮された個性の強いものとなっていて興味深い。そのバリエーションに驚く。飽きさせない。
本美術館は国内でも有数のガラス美術品の所蔵館だと知っていただろうか?その理由は北海道の冬から氷のイメージでガラス美術品を収集していたそうだ。
▲ 2階展示室の後半は、再び平面作品の世界となる。日本の浮世絵である(44点展示)。歌川国貞の連作による美人画が展示されている。歌川は幕末の歌川派の中心的人物でその作品は1万点を超えるといわれている。
多数なところから、その作品テーマは多様性があり錦絵における古典的なテーマから、歌舞伎などの主人公、遊郭や庶民の風俗と幅広い。それらの作品を眺めていると、余計なフィルターのかからない、江戸の当時のリアルな様子を想像できるのが楽しい。そこには新鮮な驚きがあるかもしれない。
以上、3つのまったく異なる展示を一度に鑑賞できるは、お得な企画展示だといる。そして、どれも「美術」なのだ。3つの展示のそれぞれを楽しみながら、あらためて「広い意味での美術」ということも考えることもできそうだ。週末の時間、少し早起きして足を運んでみてはどうだろうか。
Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)