前半のディテールが欲しかった。
FilmReview 「地獄の警備員」(1992)
あらすじ:主人公はある会社の絵画関係部署に新入女性社員として雇われる。社の警備員のひとりは元相撲取りの殺人者だった。その魔の手が会社の従業員にむけられていく…
CSで監督 黒沢清の映画の放映プログラム(ディレクターズカンパニーの特集で)があって、以前から興味のある監督だったので録画することにした。
本作はホラー作品。舞台は会社。そのセットがいまいち。何千万という絵画を取引する部署のある企業ににしては、ちよっと「会社感」が薄いなーと思う。自分が勤め人だから余計気になると思う。「12課」なんて部署名からして、それなりのスケールをもつ法人だと思うのだけど、描写では10人くらいのちいさな会社のような感じで、なんかそこがとっても残念。
多分、女性主人公の雰囲気から、芸術的分野の部署というイメージで設定を作ったと思うのだけど、そのあたりもっとビシッとできなかったのかしら。部署の机の配置も少し変な感じもする(それは、構図の確保のためかもしれなけど)。給湯室に置いてあるものの描写とかも、もう少し気の利いた小道具のならなかったのかしら。そんな昔の作品でないのだから。
主人公の仕事内容も、具体的な描写があったほうが作品世界に入り込めた感じがする。なんか、文句ばっかりですいませんが、それら会社描写がリアルだったら、もっと後半がおもしろくなった感じがするので、残念で書いてみた。前半のリアル度が高いほど、後半の世界が活きると思うのだ。
後半「地獄の警備員」が動き出す。その雰囲気はなかなかいい。その狂気についてわりと、すんなり受け入れる会社員たちも良い感じ。それぞれの俳優の個性が発揮されてきて躍動感が出てくる。ラストシーンのエピローグも良い感じ。
おそらく十分な予算や時間で作られた映画ではないと思うのだけど、おもしろいし、センスはそのままで予算をかければ、もっとおもしろくなる可能性のあり作品だと思う。
まずは、初めて観た黒沢清監督作品の感想でした。