美しき、「オドオド感」。
FilmReview「運命の逆転」(1990)
あらすじ:主人公の弁護士は、妻殺しの容疑をかけられたイギリス人(ジェレミーアイアンズ)の弁護を依頼される。弁護士はチームを組んで、アイアンズの無罪の立証を考えていく。しかし、アイアンズは本当に無実なのだろうか?
ジェレミーアイアンズといえば「ダイハード3」の悪役でタンクトップ姿のご披露の時はびっくり。似合わないよねなーこういった普通な感じの武装テロリストのリーダーは。「1」の悪役アラン・リックマンの兄という設定。リックマンはテロリストうまかったよなぁ。リックマンは地味めのドラマ系から、大作系まで幅広くうまい俳優さんだと思う。しかし、アイアンズは役柄が限定されると思うのですよ。
なんて、NGばっかり書きましたが、本作ではアカデミー賞をとってます。アイアンズが輝いてます。その役とは、イギリス人。不倫で奥さんを略奪婚。元弁護士だが今は無職でヒモ状態。アメリカに住んでいてもヨーロッパ人臭プンプンで、紳士だけど嫌みたらしいユーモア。口は立つけど気取りすぎていてなに考えているかわからず…そしてその合間にみせる「オドオドした表情」。これだよ、これ。アイアンズにはこういう役が似合ってるよ。クロネンバーグの「戦慄の絆」に匹敵する、適役ぶり。
裁判モノなのに、法廷シーンがほとんどないのも珍しい。サスペンス風味なんだけど、純粋なサスペンスでもない。真相が不明な実話をもとにした、ちょっと変ったドラマ。そこがアイアンズのつかみきれない個性にもやっぱりフィットしている。もやもやした時に観れば、さらにもやもやすること間違い無し。でも、アイアンズの挙動不審な「表情」を観るとすべてが許せそうだ。