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札幌ビエンナーレ・プレ企画 実行委員インタビュー007柴田 尚(しばた・ひさし)

Shibata

札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員インタビュー007
実行委員:柴田 尚(しばた・ひさし)

札幌初の国際的な芸術祭「札幌ビエンナーレ」を2014年開催実現のために有志による「札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員会」が結成され、第一弾として、今年4月に北海道立近代美術館にて「美術館が消える9日間」4/2-4/10)展覧会が開催される予定だ。

今回は実行委員の柴田尚に話を聞いてみた。柴田尚は20年以上前から、札幌の現代美術シーンのさまざまな企画に関係し、10年ほど前からS-AIRというアーティスト・イン・レジデンス事業(2005年よりNPO法人化)を行っており、その代表を務めている。これは、海外からアーティストを招聘・滞在させて作品を制作してもらうアート事業。自らを「自分は民宿のオヤジみたいなものですよ」と語るが、そのアートに対する知識は深く現場の感覚にも詳しい。今、なぜ国際美術展なのか、そして札幌での目指すべき方向性、4月の近美での担当企画について話を聞いてみた。

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『僕は北海道の売りは、食、温泉、人や風土だと思っていますから。東京では絶対できないことをする、ここを訪れる人に北海道まで来て観たいものをイメージして企画を考えるのが大事だと思う。』
Interview with Hisashi Shibata

国際美術展とは基本は国内外から作家を呼んで開催する大規模な美術展といえます。内容はいろいろですけどね。2年ごとに開催するのをビエンナーレ、3年ごとならトリエンナーレと呼ばれます。もっと長いスパンのものもあります。今、景気は低迷していますが、国内の国際美術展は増えている僕のようなオヤジの美術関係者には国際美術展は夢でね。日本では以前、日本国際美術展というのがあって、それが「東京ビエンナーレ」と呼ばれるようになった。1970年、第10回展「人間と物質」がピークで話題になったけど、結局続かなかった。国際美術展ではその後、韓国や中国などでも行われるようになり、他のアジア諸国に遅れを取るようになったのです。それを知っている世代が今の国内の国際美術展情熱を持って取り組んでいる場合が多い。だから、景気は関係なくて日本の美術史の流れで盛んになっていると思う。それに今は美術界が経済界と同じ土俵で話せるようになった。それは芸術文化も産業になってきて、企業も国際美術展に注目してお金を出すようになっている。

れから国際美術展をやるには「やり方」がものすごく重要になる。僕はここ10年の芸術・文化全般にかかるテーマはコミュニティとコミュニュケーションだと思う。その両方にまたがるインターネット上のツールとしてSNSとかツイッターがある。

今、地域とアートを考えると、現在はものすご細かい場所(地域)でアートができるようになってきた。昔はアートシーンとは都市のものだったけど、今は美術館のなかった島でも美術展ができて、そこには個性的なアートシーンが可能になった。僕はそれを「アートシーンの毛細血管化」といっている。札幌は10年前まで「地方の一地域」だったけど今は「大都市」として見られている。美術館はたくさんあるし、ICCのようなクリエイティヴ施設や、ほか文化施設もたくさんある。アートのイベントをやるなら「地域」発信というスタイルではなくて、そこからもう一段上のハードルを目指すべきだと思う。

北海道で国際美術展を開催するコンセプトとしては、なるべく幅はあったほうがいい。経済はもちろん教育、文化、福祉も独自の感じで混ざればおもしろい。北海道は札幌という大都市があって、そこから広大な自然につながっている、という世界にも誇れる絶妙なバランスがある。それが一番の売りになると思う。道内の広域に目をむけて市町村も結べる企画ができればいい。僕は北海道の売りは、食、温泉、人や風土だと思っていますから。東京では絶対できないことをする、ここを訪れる人に北海道まで来て観たいものをイメージして企画を考えるのが大事だと思う。おいしい食べ物、雪とかランドアートなどの自然をね。

4月の近美で僕が制作するアート企画を紹介すると、ひとつがワークショップの「観光大使はアーティスト」。これはコンテンポラリーダンサーの木野彩子と映像作家の石田勝也が道内を日帰り旅行をして、その過程で制作した映像スケッチ作品を最終日のシンポジウムで紹介します。このアイデアはね、4月の近美が基本館内中心だけビエンナーレのむかう方向はもっと外に目をむけているぞ、という意味で札幌と札幌ではない道内をむすびつけるワークショップを考えました。楽しい実験だと思ってます。タイトルにある「観光」というキーワードはおもしろい。その土地に住んでいない人の視点というのは、そこに文化や経済がからみつくイメージがあってビエンナーレのコンセプトにもつながると思う。

もうひとつは、最終日に近美の講堂でおこなうシンポジウム―札幌ビエンナーレはどうあるべきか?」では、札幌ビエンナーレという大きなプロジェクトの今後の方向性が出せればいいなと思っています。ゲストとしてお呼びする加藤種男さん(アサヒビール芸術文化財団事務局長)は、国内のさまざまなアートフェスに足を運んでいらして、「創造都市」をテーマに掲げる横浜市の文化行政にも関わった方。札幌市も同じテーマに取り組んでいるから、参考になる部分はとてもあると思う。」 
Text&Photo by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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