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映画コラム「マルドゥック・スクランブル 燃焼」

Ms

「マルドゥック・スクランブル 燃焼」
FilmReview

スガイにて鑑賞。冲方丁によるSF小説のアニメーション化作品である。OVAなんだけどリリースごとに全国の上映も行っている。3部作の今回は2作目。僕にはまったく馴染みのない作家なんだけど1作がおもしろかったので、今回の2作目も観ることにした。今回までに小説読んでおこうかな…と思いながら結局未読。でも、そのほうがアニメをより楽しめるでしょう、と自分に言い訳をする。

映画が始まる。前作ラストは絶対絶命状態のような感じだっのでワクワクする。そのあたりの展開は結構アッサリだが、十分に惹きつけるオープニングだった。ガッカリ感はない。イントロで緊迫感をみせてくれた。

昨年観た1作目は導入部。なので、世界観の説明、主人公の誕生、ラストあたりで主人公の目的がハッキリしてきて本格スタートというところだった。本作からラスト3作目のイントロという感じである。そのためか、今回は1作目より静的なシーンが多い。そこは意識的なことだと思う。アクションシーンは大好きだけど、あればいいというモノでもない。アクションにはカルシタスはあるけど物語の深さを出すのが難しい。来るべきラストシーン(当然、アクションを内包した)のための本本作を静的シーン中心の構成にしたのはいい決断だと思うし、成功していると思う。

本作前半は、主人公再生のもととなった「楽園」の描写があり、そこで少年的キャラやイルカとのやりとりは、外の街のなんともウサン臭い雰囲気とは美しく対象的で1作目との違いが出ているし、作品の世界観をあれこれ考えるにも意味深だともいえる。後半はは再び「カジノ」という胡散臭いイメージの象徴のようなところに場面は変わり、そこは大きな意味で主人公の「勝負」な場所となる。

そこで主人公は学ぶ、そして成長していく。そういう意味で「楽園」と「カジノ」というコントラストの中、ドラマ中心の構成は効果的となっている。女性ディーラーとのやりとりなんで、さりげない内容だけど、なかなか暗示的に魅せてくれるとは思う。

それにしても、この作者にはウィリアム・ギブスンあたりのオリジナルのサイバーパンクに対する「愛着」を観るごとに感じる。ギブスン好きの人にはぜひ観ていただきたい。これはオマージュとかではなくてもっと基本的な作者に身についた「愛着」だと思うのだ。

最後にちよっと、難点と感じたところを。僕は原作を読んでないで、今後の展開はわからない。本作は人間性のない娼婦として生きてきた主人公の少女。驚異的な力を持っていながら「有用性を証明しないと存在できない」という生物兵器。このふたつが、手をとりあって、自己のアインディンティを確立する物語、で終わるならら、ちょっと優等生的すぎる話かなぁと思った次第です。

それにしても、静から動へ展開しそうな次作も期待。
DVDもあるけど、劇場で楽しみたい。そのためにも小説も読まないでおこう。


本作の予告は以下から。
http://www.youtube.com/watch?v=-MXilz4VRGk&NR=1


 


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