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映画コラム「バルジ大作戦」戦争娯楽作!、という構造。

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FilmReview「バルジ大作戦」(1965)
Story:第二次世界大戦末期。敗北の濃いドイツの大反攻作戦を描いた作品。

● 戦争=娯楽作品になるのか?

正直、「戦争娯楽作品」と書いてみて抵抗を感じた。戦争が、娯楽なのか?と一歩、気分が引いてしまう。でも、それを考えると、人が死んだり、傷ついたり、ケンカしたり、いやいや失恋したテーマでも、それを「娯楽作品」として説明していいのか。そんなことを急に気になる、気にしすぎる時代なのかなと思う。こんな傾向、いつまで続いていくのだろうか。

で、結局、本作は「娯楽作品」として紹介したい。

作品の性質としてもそうなのだ。本作は史実をベースにしているものの、作戦の流れよりも、そこで繰り広げられるドラマのエピソードが中心。複数のエピソードがそれぞれ魅力的だ。そこにスペイン軍協力によるという迫力あるリアルな戦車シーンが加わる。つまり、本作の背後にある史実というのは、どちらかといえば「借り物の設定」であり、話のメインは、「人」であり「戦車」である。

まず、人。いくつかのエピソードがあり、ありがちなんだけど、そのお約束具合が楽しませてくれる。例えば、執拗に敵軍の動きを予想し警告する米軍参謀。恋人の敵討ちに燃える米軍戦車兵。この反攻作戦にすべてをかける戦争に取り憑かれた独軍戦車隊将校、青二才から立派な指揮官となる米軍将校…などなど。個人的には、最後に紹介した米軍将校のエピソードが好き。ベテラン兵士からバカにされ、すぐ「降参しよう」というキャラクターが、困難を突破していくうちに立派な指揮官になるところが心に残る。そして、ラストの重要なところで活躍するしね。

そして、戦車。残念ながら、当時の戦車に似せよう、というのはまったく無視なので、戦車ファンには残念だと思う。しかし、まったくCGなしで現実の戦車が多数動き回るところは、まったく力強くリアル。今のCG技術でもなかなか再現できないのではないだろうか。ラストはスカッと連合軍の勝ち!というにも、それはそれでいいと思う。

考えさせる映画もあってもいいし、考えさせない映画もあっていい。また、考えさせるシーンもあってもいい。本作は反戦映画ではない。だけど「戦争って嫌だな」と思わせるシーンはある。でも、それは作り手のメッセージとかではなくて、状況の中で、当然戦争を嫌だと考える人間もいるだろう、というバランス感覚だと思う。

史実にこだわらない結果、誰もが楽しめる映画になっているのはポイント。
映画の表現は幅広いほうがいい。
こんな戦争映画の新作も観たい気がする。


 

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