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映画コラム。撃った男の思考とは

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Film Review 「ジョン・レノンを撃った男」(2007)

ジョン・レノンの殺人というテーマだけあって「なんて悪いヤツ!」という視点で描かれているのかな、と思えばそうでもない。

主人公の犯人は、冴えない人物かもしれないが、仕事もあり、(理解のありそうな)妻もいる。自宅も日本の住宅事情を考えればほどほど良い感じのアパートメント。ハワイに住んでいて、その明るい日差しがとってもきれい。楽園に住んでいるように思える。少なくても、主人公は食うのに困るような生活ではない。最高に幸せではないかもしれないが、自暴自棄になるほど不幸ではないようだ。そういう人ってたくさんいるよね。僕もそうかもしれない。

自暴自棄になるほど不幸でない者の、何の罪もないジョン・レノンへの殺人というところに本作のやりきれない部分がある。まぁ主人公の頭の中ではレノンを殺す理由はあったのである。しかし、それは常識ではまったく理解できるものではなかった。さすがにその部分は僕は理解できない。殺人を妄想する部分まではできるかもしれない。しかし、実行するのは無理だ。なぜかといえば、そこに何の価値も見いだせないからだ。

これが完全に、生活も人生も詰んでしまった人間の行動なら、まだ理解の余地がある。しかし、本作に描かれる犯人は決して殺人をするほどの不幸ではないように感じる。でも、それは所詮、他人の意見なんだろなぁ。犯人にとってはすべてが選択の余地のない行動だったに違いない。それしか、なかったのだ。

 人間に思考というのは、素晴らしい芸術も生み出すし、救いのない不幸も生み出す。そう考えると犯人の行動は決して人ごとではないように思えてくる。すべては個人の思考によって決まるのだ。

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