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映画レビュー「聯合艦隊司令長官 山本五十六」

Yi

映画レビュー/
「聯合艦隊司令長官
山本五十六」(封切作品)

Story:太平洋戦争での日本海軍の山本五十六。あくまで開戦には反対だった聯合艦隊司令長官山本の生涯を描く。

● 山本五十六に当たりすぎる光。そこには影も。

毎年、仕事納めが終わると僕は街をあてもなくフラフラする。ソンビのように。12月31日のお昼ごろ今年は札幌ファクトリーに行きました。するとテナントはほとんど閉店。「ファクトリーは休業しております!」と実況放送をしたいくらいです。きっと1日から営業するのでつかの間のお休みなのかな。

個人的にはデパートとかは年末年始思いっきり休んでもらっていいと思う。働いている方々のことを考えれば。デパートが1/3まで閉店しても基本困らないのですけどねぇ。デパート好きの僕がいうのから間違いないです。昔はそんな感じだったでしょう。4日に福袋でいいんじゃない。買ったことないけど。

さて、ファクトリーはユナイテッドシネマをやっておりました。映画館についてはすいませんが年中無休でおねがいしたいです。いつでもいける場所であったほしい。いつまでも。さて、観る作品はミッションイッポシブルか迷うところですが、ここは大晦日は日本映画ということで本作となりました。お客さんは年配の方も結構いました。それはそうでしょう。

レビューの前に僕の立ち位置を説明しておくと、僕は現代史が好きで太平洋戦争の主要な海戦やそれを指揮した司令官や参謀の知識はあります。そのあたり知っていたほうがより楽しめる作品です。なくても大丈夫ですけどね。

説明として映画内で人物の説明のテロップを出すとか、ナレーションを加えるのがもっとあってもいいと思いました。ここは意見としてこだわりたい。なぜかといえば、一般的な戦争映画は、そんな司令部のお偉いさんの人物知識がなくても、名もない一兵隊のドラマを展開させて、誰が観ても感情移入できる軸も作ります。しかし、本作ではいわゆる、無理に戦場にかり出される「いち兵隊のストーリー」がほとんどありません。

基本は大日本帝国海軍という組織の一員であった山本の人物像が中心なんで、まわりをとりまく人物の説明が欲しかった。劇場で上映前に海軍の基本人物関係図を配ったほうがいいくらい。冗談ですが、そんなチラシがあったほうが本作をずっと楽しめると思うなぁ。パンフレットはいろいろ書いてあるのかしら。

山本と機動部隊司令 南雲の確執を中心に描いてましたが、宇垣参謀、源田参謀、黒島参謀のあたりももっと描いてくれると山本の立ち位置や、ミッドウェー作戦もひろがりがでたと思うのです。時間的に無理な話かなぁ、やっぱり。それにしても、阿部寛の山口多聞司令はルックスは全然違うけど雰囲気が出てた。山本の数少ない理解者として南雲と同じくらい描写されてたな。カッコ良かった。

本作では、いち兵隊のドラマも、山本をとりまく将官も描くのはアッサリすませて、山本の人物描写に完全に力点を置いてる。表現される山本は、戦争には反対、甘いもの好き、気取らない、誰にも優しい、視野も広いという人物像。つまり誰にでも愛される人物。

そんな明るい描写の中で、僕が暗に感じるは、軍人のトップとしては本当にこれで良かったのだろうか?、と思うところがある。例えば、最終的に現場にまかせてしまうところ、失敗者に対して、まったくその責めを問わないところ、これでいいのだろうか。

思うのは山本五十六は開戦が決まった時点から、大きな気持ちの転換があったのではないか。そこが大事な作戦中も将棋を指すというところが表しているのか。職務は全力で尽くす。でも、断固反対していた開戦が不回避になった時、開戦時にはどこか達観した気持だったのでではないか。

戦闘シーンは予想よりいい出来なんですが、あくまでドラマのを補佐する一要素という感じ。それだけで名シーンが成立してる訳でもない。ただ聯合艦隊が海を進むところや砲撃良かったなぁ。

逆に本作で山本五十六に興味を持った方は、関連書籍を読んでもらうといろいろ映画の中のシーンがわかってきていいかもしれない。

Text Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX


















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映画レビュー「トゥルー・グリット」

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映画レビュー/「トゥルー・グリット」(2011)
Story:ガンマンの時代。父をおたずね者に殺された14歳の娘。彼女は保安官を雇い父の仇をうつ旅でる。それに同じおたずね者を追跡するテキサスレンジャーも加わる。


● 持ち味は隠し味になった。

Story:ガンマンの時代。父をおたずね者に殺された14歳の娘。彼女は保安官を雇い父の仇をうつ旅 でる。それに同じおたずね者を追跡するテキサスレンジャーも加わる

 さて、今年のクリスマス・イブは映画を観ました。普通そうでしょう(!)。札幌駅北口の付近にある名画座、蠍座にて。駅から10分圏内ですが、ひっそりとした立地がいいですね。それにしてもひさびさでした。映画館内の素敵さは変わらず。木目を生かした落ち着いたインテリア。シネプレ系のモダンで楽しげなものとは違った大人な雰囲気。とりあえず、午後の紅茶(レモン)を買いました。本当は緑の無糖があれば良かったのですが。

 コーエン兄弟の新作。僕はこの監督といえば「バードンフィンク」「XYZマーダーズ」といってカルトな作品の印象が強い。もちろん、近作もいくつか観てる。でも、その2作の印象が強いのです。でも、それもそろそろ頭から振り下ろさないといけないね。今ではハリウッドの安定感あるベテラン監督という風格です。本作は西部劇。ジョン・ウェインがアカデミー賞をとった主演作品のリバイバルでかなり正当派です。

 男2人と少女を加えた追跡劇。少女の勝ち気で生真面目な感じがいい。それが本作の魅力の間口をひろめている。この役が成人女性だと違うんだろうな。この少女の前では2人のガンマンはとても素直だ。本音で話す。それが自然に感じられる。なんか男女の余計なモヤモヤがなくていい。自然の中を進んでいく道中は絵としても気持ちがいい。アクションは要所要所にビシッといれる感じなので多くはない。ドラマでみせる作品だ。そこに退屈はない。

 話的にそんなドンデン返しがある訳でもなく、お約束的な展開だともいえるのだけど、コーエン兄弟特有のポップな妙味は、隠し味としてはたしかにある。そこが本作を最後まで魅せる作品にしている。昔の作品は妙味が前に出ていたが、現在は隠し味になった。それがいい。僕はラストのクレジットまでテキサスレンジャー役がマッド・ディモンだとは気がつかなかった。いい役でした。今までのイメージとも違うし。

Text Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX

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11.12.10"John Cage 100th Pre-Anniversary Sapporo "

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SapporoArt Scene Repo Dec.2011
定まらない音楽の魅力



ジョン・ケージ生誕100周年記念プレ・コンサート@札幌
John Cage 100th Pre-Anniversary

2011/12/10/(sat) Open:19:00 Start:19:30
会 場:札幌大谷学園 百周年記念館同窓会ホール(北16東9) / 料金 2,000円  
出演:小山隼平(ピアノetc .)/向山千晴(コンピュータetc .)/前川原雄太(パーカッション)
/渡部倫子(コンテンポラリーダンス)



年2012年はジョン・ケージ生誕100周年だそうだ。ああ、そうなんだと思う。そういわれると凄い古い人みたい。だけど、良くも悪くもケージの提示した表現はまったく古くなっていない。ホントいつになったら古くなるのだろうと思う。古くならないとは確定しないということであり、それはゆらゆらしたもの。天国のケージもそんな状況を落ち着かないか、微笑しているだろうか。

ケージに対するゆらゆらをまだ僕らは捉えきれていないし、捉えるにはまだまだ時間がかかりそうだ。それまでは、ケージが考えた音楽を体験できる場をできるだけたくさん用意していくのが大事だろう。義務教育のカリキュラムにも取り入れて欲しいなぁ。ケージの思想は音楽だけでは納まらない、考え方の訓練になるのではないだろうか。

市内の大学のホールにて、ジョン・ケージの作品演奏が行われた。僕はケージのコンサートは初めて。ネームバリューの割にはなかなか体験できる機会は少ない。市内の大学内の会場は思ったよりちいさくて、心底「良かった」と思った。ケージの作品を遠くから眺めるの嫌だった。このあたりはロックのライブに似てる。ケージはロックだ、なんて語るの普通にカッコ良すぎるので書きませんが(書いているけど…)。

演奏が始まる。ピアノの鍵盤を閉じたままの曲、ラジオを使った曲、トイ・ピアノやベルを使った曲などなど。知識としては知っていた。重要なのはコンセプトなので、実践はどうなのかしら‥体験すると案外ガッカリ、というのも考えていた。だけどそんなヤボな予想は裏切られた。最後まで緊張感が続く演奏だった。ひとつひとつの演奏者の動作に緊張感が走る。それは予定調和から遠く離れた世界だからだろう。

実験的な表現は演奏者がより真面目にストイックに取り組む必要がある。その点、演奏者たちの好演によって成功していると感じた。そこから緊張感が生まれる。それがケージの音楽の肝だと思う。本公演はインディペンデントなものであり、その企画力にも拍手を送りたい。

来年1月21日、札幌コンサートホールKitaraにてジョン・ケージの作品公演、「ジョン・ケージ生誕100年 メタミュージック(超音楽)音楽を越境した音楽たち」が開催される。これはダンサーや映像表現、インスタレーションも含めた大掛かりな企画である。そちらにも注目して欲しい。来年はケージの年だ。

Text & Photo Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX

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