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10.06.26-07.10「安藤文絵 個展 The water clock」

■ 「水」「血」「命」そして「人」を考える。

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「安藤文絵 個展 The water clock」
会   期:2010年6月26日(土)~7月10日(土)/13:00~23:00 /日・祝休館
会   場:CAI02(大通西5丁目昭和ビル地下2階)
主   催:CAI現代芸術研究所 

 安藤文絵は、札幌に生まれ、 武蔵野美術大学大学院美術コース修了を終了後、2000年から2年間シンガポールに滞在・制作。現在は札幌を拠点に国際的に活動している新進のアーティスト。その個展が行われた。今回の作品は本年度4月30日に亡くなった一人の女性へのオマージュとなっている。

 会場の中心にはベッドが置かれ、その上には無数の輸血パックがぶらさがっている。在廊していた安藤文絵に話を聞いてみると、パックには平均的な成人女性の水分と同量の液体が入っているという。水は命であり、命は人であり、人は人とかかわることで人生ができあがる。聖書では血は命を表すことを語ってくれた。

 「水」「血」「命」そして「人」。僕は普段これらの関係性を考える機会は少ない。本展示はこのシンプルで不可欠なことが人生を考えるのに大切だと気づかせる。とらえやすいようにも思えるし、考えるほど深い。作品を目の前にして想いをめぐらせる貴重な機会。ぜひ足を運んでいただきたい。

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Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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地味なときに必要なモノ

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Film Review 「裏切り者」(2000)

あらすじ:主人公(マーク・ウォールバーグ)は友人をかばって刑務所に入り、出所してきた。友人らと再びヤバイ仕事をすることになるが、事件が発生する。

 
 ウォールバーグって女性から見てモテる感じなのかしら?本作ではシャーリーズ・セロンは友人の彼女なのだけど、でもウォールバーグとも仲も良くてという距離感が甘酸っぱいヤキモキ感に、僕はひとり悶えるのです。こは萌えかしら。

 本作「裏切り者」というサスペンス臭たっぷりな邦題がついておりますが、原題は「THE YARDS」。訳すると駅構内という意味かしら。まぁ、たしかに本作の舞台は駅は関係する。でも、このタイトルでは地味地味なんで、誰も買ってくれない、借りてくれないと思って邦題を訳アリふうに変えたのでしょうね。でも、なかなか「駅構内」というのも良い感じだと思うですが。

 なので、本作はサスペンスというよりも、ずばり「ドラマ」というジャンル。例えるなら単館系の映画館でレイトショーで上映されそうな作品。地味地味映画は、恐怖とかアクションとか、わかりやすい盛り上げ要素がないので、出演者の演技が一番ポイントになってきますね。

 本作の演技に関しては、マーク・ウォールバーグの存在感はどうも微妙。この人演技って、どうも感情移入しにくい。なんか、フィルターがかかった感じで、いろいろな大切なシーンで何を考えているかわからない。達観したような雰囲気があってトラブルに巻き込まれた状態があんまり不幸に見えない。まぁ、そのわからなさがラストの妙味にもなってるのかしら。

 でも、まわりの脇役陣はウマいので、楽しいことも、悲しいこともない時に観ると、丁度いい感じ。

 

 

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10.06.05「北大祭 ニコニコ ボカロ鼎談」

■ メディア・テクノロジーによる奇跡の組み合わせの3人。

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「北大祭 ニコニコ ボカロ鼎談」
2010年6月5日(土)14:00-16:20
会 場:北大工学部オープンホール

出演:川上 量生((株)ドワンゴ  代表取締役会長) /伊藤博之 (クリプトン・フューチャー・メディア(株) 代表取締役/野尻 抱介(SF作家)


  今月のはじめ北大の学祭が行われた。広大な敷地の道に露天がならび、建物のいろいろな場所でイベントや展示が行われていた。敷地の緑の中で、休みながら露天のフードを楽しんでいる方もたくさん見られた。  

   みどころはたくさんあるのだけど、全国的に注目を浴びていたのが「ニコニコ ボカロ鼎談」ではないだろうか。これは、SF作家の野尻抱介、動画投稿サイトである「ニコニコ動画」を運営する(株)ドワンゴ の川上会長、爆発的にヒットしたボーカル生成ソフト「初音ミク」で知られる、札幌のクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤代表の公開トークイベントが開催されたことだろう。その様子を紹介していこう。  

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▲ 会場は満員であった。年齢層は、やはり学生ふうの年代の方々が大部分をしめる。8割くらいは男性だったかと思う。

   会場は中ぐらいの大きさの講堂だろうか。教壇の後ろに巨大なスクリーンが設置されていた。そして、一番左から司会進行の渡辺保史・野尻抱介・川上量生・伊藤博之が座って並んだ。渡辺は、北大で科学技術の専門家と市民との橋渡しをする人材を育成するCO-STEPという講座を担当する客員準教授である。

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   今回のイベントがいかに実現したのか? そのプロセスがおもしろい。野尻抱介はSF作家であり、上記の「ニコニコ動画」「初音ミク」の熱心なユーザである。野尻がTwitterでつぶやいたことが、今回のイベント実現につながった。そのやりとりはhttp://togetter.com/li/15791で読むことができる。これはTwitterがなければ実現されなかったことだなぁ、としみじみ思う。さらには3人のスケジュールが空いていたことが奇跡ではなかったか。

 公演の内容については、ストリーミング放送やTwitterによる中継などで知っている方も多いと思う。「ニコニコ動画」では以下で観るとことができる。 http://www.nicovideo.jp/watch/sm10982896

 なので、以下は僕の主観的な感想を書いていこう。 3人の人物イメージを中心紹介していこうかと思う。

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▲ 司会進行の渡辺保史は、北大CO-STEP客員准教授のほかnextdesign.workshop主宰しており、札幌オオドオリ大学、サイエンスサポート函館にも関与。情報デザインについての著作もある。

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▲ 野尻抱介 は、SF作家であると同時にかなりの「ニコニコ動画」「初音ミク」のユーザーであることから、その視点での発言が多かったような気がする。スタート前の会場のお客さんに「この中でニコ動ユーザーの人いる?」と気軽に声をかけていて会場の笑いも誘っていた。本編では研究的なことにも「ニコニコ動画」も活用は可能であり、情報の質的な問題も、いろいろな人が見ることによって解決できるのではないか、と語っていた。

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川上量生は「ニコニコ動画」という運営サイトを考慮した実務的な発言が印象に残った。ネットメディアの双方向性を重視しているようだった。また、マスメディアを通した作られたキャラクターではなく、キャラ作りをしないメディア(発信者をそのままみせていく)ことが「ニコニコ動画」の魅力だと語っていた。「もっと動画のアップをやりやすくしたいですね」という発言にも、ユーザー主体の本サイトの方向性を感じた。

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▲ 伊藤博之は「初音ミク」の成功によるCGM(インターネットなどを活用して消費者が内容を生成していくメディア=生産消費者)の可能性について発言していた。

 プロ、アマ問わず、楽しんで音楽を作っていく環境作りについて、興味深い発言をしていた。そして、クリエイターの音楽がカラオケ等なんらかの形でビジネスで使用された場合は、対価は支払われる仕組について取り組んでいるようだった。

 ■僕も「ニコニコ動画」や「初音ミク」による「CGM」(消費者が同時に、商品のクリエイティブな部分に関与する)という視点はとても興味がある。もちろん、従前からある消費モデルの主流は続いていくと思うが、それに平行して「CGM」がすこしづつクリエイティブの世界に、さまざまなハッピーな可能性をもたらす予感がするのである。

Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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長いよ!と思ったらそうでもなかった。

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Film Review
「エグゼクティブ・デシジョン」(1996)

あらすじ:テロリストにハイジャックされた旅客機。4000万人の命を奪う神経ガスを積んでアメリカ本土へ自爆テロをしようとする犯人。政府の特殊部隊が旅客機に秘かにドッキングして機内に潜入。テロを防ごうとする。

 観る前にハイジャックもので2時間オーバーは長いじゃない?と思う。ラッセル(スネーク)とセガール(沈黙)がいれば、ハイジャック退治なんで余裕じゃん。でも、残念だけどラッセルの役は非実戦系の博士。セガールは当然、特殊部隊長。これ以外の役は考えられません。でも、セガールがね、いろいろあって驚きの展開。定石はずします。

 驚きはそこで終わり。後はわりと普通というか地味な展開。だってクライマックスまでは、潜入をさとられないように観察とガス爆弾の解体。ひっそりとしたものです。だけれど、飽きさせないシーンを重ねていくのはうまい。だから退屈はしないよ。その重ね方も、ありがちな旅客のエピソード披露などはなくて、あくまで特殊部隊とテロリストという関係性だけでみせるのがいい。ヌルくなくていいぞ。

 ヒロインCAはハル・ベリーが初々しく好演。強すぎず弱すぎず、緊迫感を盛り上げてくれる。この人脇役がいいかも。悪役については、リーダー役の人が良い。凶悪なテロリストながら、私欲のない潔癖な雰囲気。信念の人という感じや、ハル・ベリーに対する態度が深みを出していた。登場人物の描き方はラッセルと、ベリーとテロリーダーの3者に思い切りスポット絞ってますね。

 派手な動きは少なめだけど落ち着いて観せてくれるのが本作の魅力でした。









 

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職業紹介。

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FILM Review「ハッピーフライト」

あらすじ:舞台は空港と飛行機。そこで働くさまざな部署で働く人々。主人公は副操縦士から操縦士のテストも兼ねたフライトにてトラブルが発生する。

 昔、「はたらくおじさん」というNHKの教育番組があった。さまざまな職種のお仕事の現場を紹介していて、あんまり内容は憶えてないけど、自分はこの番組がとても好きだった。今でも、ヒストリーチャンネルで、そういった職場紹介番組があると、思わず観てしまう。自分の知らない仕事は何でも興味深く感じる。観ていて楽しい。

 僕は空港&飛行機好きです。エアプレーン系マニアでもないですが、好きです。みんな飛行機をとりまくものって好きじゃないかな。飛行機は旅だし、華やかな職場のイメージもある。今でも子供のなりたい職業はパイロットやCAなのかしら。

 さて、本作をどう捉えるかでだいぶ印象が変わってくる。

 僕は本作はコメディであり、観ている時は「コメディなんだな」と終始思いながら観るべきだと思う。時任三郎やCAリーダのマジメさもコメディなのである。技術者の忘れ物トラブルも、工具を忘れたら大変なんだーというミニ知識程度のシーンなのである。そう観るべきだと思う。

 そういった作り事なコメディを通して、飛行機、空港にはいろいろな職種の人がいますよーという職業紹介映画だと思えばいい。最後まで退屈しないし、楽しめる。

 ただ「職業紹介」で終るため、ドラマとして印象に残るシーンがないのが残念。でも、こういった作品があってもいいと僕は思うな。

 

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続報・10.06.16--06.22 「湊谷夢吉とその時代展」

■ いろいろなものが見えてくる、考えさせる、たしかな「才能」。

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「湊谷夢吉とその時代展」
期  間:2010年6月16日(水)~6月22日(火)
場 所:TO OV cafe(南9西3 1-1・マジソンハイツ1F)

関連イベント ↓ 
「お神楽ビデオジョッキー&ライブの夕べ」6/20(日) 17:30 開場 / 18:30 開演 上記会場
・シンポジウム「1970年、80年代における札幌市のサブカルチャーシーンの再確認と伝承」
 6/19日(土) 17:00- ・ 6/20 (日)13:00-   会場:イベントスペースEDiT (南2西6)


 先日もお知らせした北海道マンガ研究会による「湊谷夢吉とその時代展」が6月16日(水)よりスタート。同日夜、オープニングパーティが開催され、多くの人がお祝いに訪れた。

 その中には、道外からかけつけた湊谷夢吉夫人の姿もあった。会場では、ドリンクやフードを楽しみながら、湊谷夢吉の曲が弾き語りライブも行われた。それらの様子を以下紹介していこう。また、今週末には上記のとおり関連イベントが予定されている。興味のある方は、ぜひ本企画に足を運んでほしい。

★ 本展示およびイベントについての詳細は以下のサイトより、
プレスリリースを読むことができる。

「湊谷夢吉とその時代展」http://hokkaido-manga.jp/minatoya/

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▲ オープニングには多くの人が出席。映画、音楽、デザインとさまざまなジャンルで活躍する人たちが集まっていた。

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▲ 展示スペースの様子。貴重な原画の展示から、ファイルで過去の作品が読めたり、パソコンで作品や関連資料が紹介されている。また、漫画本やCDの販売も行われている。

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▲ 湊谷夢吉の曲が弾き語りのライブで披露された。

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▲ 湊谷夢吉夫人からは、本企画についての感謝の言葉と、今の現代社会の様子を夢吉に見せたかった、というお話が印象にのこった。

 

■湊谷夢吉の作品は、シュールであり同時にポップな面をみせるユニークなものである。唯一無二の世界を観にいって欲しい。


Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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ありがた迷惑なのか。

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Film Review「たそがれ清兵衛」

「チャンスをつかまない人生」

あらすじ) 清兵衛(真田広之)はある地方の藩の下級武士。普段は食料を管理する仕事をしている。妻に先だたれ、幼い子供2人と痴呆が進んだ祖母の世話のため家計は大変苦しい。家に帰れば家事から、内職や農作業もしないと生活ができない。そんな中、幼なじみの女性との再会、果たし合いの代理をすることによって、彼の人生が変わっていく…

 時代劇でありながら、チャンバラのシーンはほとんどなし。主人公も貧しい生活ながらに、子供の成長を楽しみ、内職や農業を行なうシーンばかりが目につく。主人公は幸せだったのか、そうじゃなかったのか、さっぱりわからない映画である。いや、幸せではないと思う。

 いわゆる、カルシタスが不在であり、ラストの「ある事件」というクライマックスが用意されているものの、それも主人公にはありがた迷惑のようである。いや十分に迷惑か。きっと主人公にとって、友人も宮沢りえが言い寄ってきても迷惑なのである。それは、妻の葬式を出したときから、わかっていたにちがいない。

 本作の主人公は実は「そっとしておいて」欲しかったのだと思う。職場では仕事後の同僚の誘いを断り、家に帰り男手ひとつで家族の面倒を観る。そんな一生でよかったのだ。なのに、美しい女性が表れたり、剣の実力を発揮できるチャンスなど、すべては「迷惑」だったに違いない。そうでなければ、あんなナレーションで流すラストにはならないだろう。

 チャンスなんて無用の生き方もあるのだ。チャンスは同時にリスクを伴うものである。リスクの無いチャンスというのは「幸運」であり。チャンスとはいえない。それを理解しないで、チャンスばかりに期待してはいけない。

 今自分の手元にあるカードを大事にするのが一番いいのではないか?そんなことを思った。ここまで書くと随分ひねくれた感想だとは思うけど、ひどく主人公がまわりに巻き込まれていくのが、とても可哀想に思えた。きっと主人公はずっと「たそがれ」で良かったと思うよ。そんな生き方も十分あるのだ。


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