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壊滅というテーマ

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FilmReview
「合衆国壊滅 / M10.5 」(2004)
 

    世界が壊滅、というテーマの映画が好き。正確にいうと、壊滅しつつある状態ですがね。完全に壊滅しちゃうと映画にならないか。どうだろう、完全な壊滅を描いた映画。人影はなくアンビエントな光景が広がっていく。それはそれでアリだと思うがドラマがないとね。

    そういえば、少し前にヒストリーチャンネルで、現代から突然に人だけいなくなったどうなる?みたいな番組があって断片的に観たけどおもしろかったなぁ。結局、人間のためのものは人がたえずメンテンナス的なことをやっているから、成立しているのがわかる。手入れがなければ、あっという間に崩壊していく。弱いものなんだとわかる。

    さて、本作は、TV映画なので大作な作風を期待すると肩すかし。しかし、それは聞いた事のないタイトル。ハッタリ感満載なパッケージデザインで悟っておこうよ。逆に低予算でアメリカの壊滅という大テーマをどう演出していくかが監督の腕の見せどころ。

 本作では冒頭のシーンでまずビジュアル的に力をいえて(なかなかインパクトがある)。後はドラマ中心に切り替え。そのドラマもごくごく絞って、壊滅の危機の一部分としてうまく描いているとは思う。対策チームの活躍、巻き込まれた家族の人間ドラマなど、ありきたりだけど手堅い。SFXはなくても緊迫感は画面に伝わってくる。さすがにスゲーおもしろいまではいかないけど、平日の夕食後にちょこっと楽しむ良作という感じです。

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10.07.09-07.14「日常をARTする。」

■公共の場に発表される、社会を良くする方法としてのアート。

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「日常をARTする」
会   期:2010年7月9日(金)~7月14日(水) / 10:00-19:00
会   場:
紀伊国屋書店 札幌本店(北5西5)

参加アーティスト:川上りえ/阿部寛文/erica*/大泉力也/大澤夏美/聡(sou)/中村絵美/能和暁/倉本祥平/鈴木真帆/ニシダヒデミ/福田翼/渡辺沙織/広沢聡史/Blue Raven/clover/G.B.E/43°/北大落語研究会/裏セブン/ALOHA! ORCHESTRA PROJECT

 札幌駅前にある大規模書店、紀伊国屋書店 札幌本店は、豊富な書籍だけではなくDVDやCD、カフェもある。そのため、通勤、通学帰りに毎日のように、足を運ぶひとも多いかと思う。1Fにイベントスペースや2階にギャラリーもあるのも魅力的。 その2つのスペースを活用して「日常をアートする」という3回目を迎える美術企画が開催された。

 内容は若手アーティストを中心に、1F入口ホールでは、音楽、お笑い、落語などのパフォーマンス。2Fギャラリーでは、平面、オブジェ、映像作品に加えて、紀伊国屋書店のブックカバーを8人のアーティストがデザイン。感想のメモを書くと、好きなカバーがもらえる嬉しいプレゼントもあった。

  以下レポート写真をはさみながら紹介しよう▼

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 在廊していた本企画を主催のアート系NPO法人「h.i.p-a」の理事 濱口翼さんにお話を聞いた。濱口さんは、本NPOのキュレーターであると同時にオリジナル・ブランド、PATANICA(パタニカ)を主催。平面作品やアパレル・グッズの発表をしているグラフィックデザイナーでもある。

 「h.i.p-a」は2008年より活動を開始。去年よりNPO法人となり活動幅を広めている。市内各所で多くのアート性の高い企画を主催・協力をしている。その理念は「芸術を通して社会貢献」をすること。日常生活にアートを浸透させていくためにアート作品の展示やパフォーマンスを、中島公園、札幌時計台、札幌市資料館、豊平館など公共性と歴史ある場所で行ってきている。

N2

 普通、アート展示というとギャラリーや美術館で行うのが一般的だが、そういった場所はあえて避けているようだ。

 その理由を聞いてみると、大きく2つあるという。ひとつはギャラリーなどの美術施設は、展示をする環境としては良いが、どうしてもアート好きな一部の人しか来てくれない。本NPOの理念「芸術を通して社会貢献」することからいうと、この地に住む方から、訪れた方まで、さまざまな人に観て欲しい。そのため誰もが足を運びやすい馴染みのある場所で開催するそうだ。

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 もう一つは、観光都市として有名なところは歴史ある建築物が人気スポットになっている。札幌にも歴史ある建物がある。その魅力を知ってもらうために、北海道開拓時代の象徴である「時計台」や、元裁判所だった「札幌市資料館」等で、そこで働く市職員の方々と一緒にアートの企画を進めることは、魅力的な街作りに役立つことだと思うし、同時に楽しいことだという。

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 アーティストの選定は、これまでの本NPO活動の中で自然な形で知り合った人たちに出品をおねがいしている。アーティストの作品作りについて、個々に指示することはないが、ひとつだけおねがいしていることがあるという。それは、自分の作品に値段をつけてもらうこと。そのことで、アーティスト自身には作品に対して責任を持ってもらうのと、作品を観る方々にはアートもビジネスでもあることを知って欲しいということだ。

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 本企画の会場はギャラリーであるが、今回の展示でこのスペースを選んだ一番の理由は、ここが「とても人通りの多い場所」だからだという。

 今後の企画として、北海道庁赤レンガでの企画を考えているという。これからも「h.i.p-a」の活動に注目していきたい。

「h.i.p-a」ウェブサイト
http://www.hip-a.com/


Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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ブロンソン主義

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Film Review
「メカニック」(1972)

あらすじ:主人公は「メカニック」といわれる一匹狼の殺し屋。緻密な計画で殺しを実行する。ある時、自分がてにかけたギャングの息子を自分の弟子にすることにする…

 映画に騙される、というのはどういう気分なのだろうか。良い、悪いではなく、
騙されるということ。悪い作品なら、騙されるのか、それとは別になにかがあるのか。ひとつ、いえることは時には「騙されてもいい」という気分で映画を鑑賞する場合もあるということ。

 チャールズ・ブロンソンの映画はついつい観てしまう。

結構、駄作もあると思うだけど、あんまり気にならない。良い、悪いを越えた「騙されてもいいわよ〜」という気分になって許してしまう。結局、スクリーンでブロンソンが動いていれば満足なのだ。

 本作は、駄作ではなく良い映画だと思う。そのため、それまでに観たいくつかの作品が駄作であったことに気がついた。イタタ、痛し痒しな作品なのである。諸刃の剣というべきだろうか。

 古い作品だけど、アクションのキレもなかなかいい。特にオートバイの追跡シーンなど、シンプルだけど迫力がある。「メカニック」と称されるブロンソンの殺し屋の設定もいい。クールなんだけど、贅沢な暮らしを好み、高級コールガールと一夜を共にする。殺しの方法もムダに工夫がいっぱい。

 ブロンソンって、インテリの役も似合うなぁ、と思う。ニーズがあればどんな役でもブロンソン臭を隠さず、演じられるのは凄い。それとも、僕はやっぱり騙されているのかしら。弟子を演じる、ジャン・マイケル・ビンセントも、ブロンソンに負けないい味出してます。主演のTVシリーズ、エアウルフの最初の頃とか良かったなぁ。

 全体にオシャレ感のあるアクション映画で、ありそうでないブロンソン映画
ではありますね。ブロンソン映画をまず楽しむなら「狼よさらば」より、いろいろ含みがあって、いいかと思いますよ。

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前半のディテールが欲しかった。

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FilmReview 「地獄の警備員」(1992)

あらすじ:主人公はある会社の絵画関係部署に新入女性社員として雇われる。社の警備員のひとりは元相撲取りの殺人者だった。その魔の手が会社の従業員にむけられていく…

 CSで監督 黒沢清の映画の放映プログラム(ディレクターズカンパニーの特集で)があって、以前から興味のある監督だったので録画することにした。

 本作はホラー作品。舞台は会社。そのセットがいまいち。何千万という絵画を取引する部署のある企業ににしては、ちよっと「会社感」が薄いなーと思う。自分が勤め人だから余計気になると思う。「12課」なんて部署名からして、それなりのスケールをもつ法人だと思うのだけど、描写では10人くらいのちいさな会社のような感じで、なんかそこがとっても残念。

 多分、女性主人公の雰囲気から、芸術的分野の部署というイメージで設定を作ったと思うのだけど、そのあたりもっとビシッとできなかったのかしら。部署の机の配置も少し変な感じもする(それは、構図の確保のためかもしれなけど)。給湯室に置いてあるものの描写とかも、もう少し気の利いた小道具のならなかったのかしら。そんな昔の作品でないのだから。

 主人公の仕事内容も、具体的な描写があったほうが作品世界に入り込めた感じがする。なんか、文句ばっかりですいませんが、それら会社描写がリアルだったら、もっと後半がおもしろくなった感じがするので、残念で書いてみた。前半のリアル度が高いほど、後半の世界が活きると思うのだ。

 後半「地獄の警備員」が動き出す。その雰囲気はなかなかいい。その狂気についてわりと、すんなり受け入れる会社員たちも良い感じ。それぞれの俳優の個性が発揮されてきて躍動感が出てくる。ラストシーンのエピローグも良い感じ。

 おそらく十分な予算や時間で作られた映画ではないと思うのだけど、おもしろいし、センスはそのままで予算をかければ、もっとおもしろくなる可能性のあり作品だと思う。

 まずは、初めて観た黒沢清監督作品の感想でした。

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美しき、「オドオド感」。

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FilmReview「運命の逆転」(1990)

あらすじ:主人公の弁護士は、妻殺しの容疑をかけられたイギリス人(ジェレミーアイアンズ)の弁護を依頼される。弁護士はチームを組んで、アイアンズの無罪の立証を考えていく。しかし、アイアンズは本当に無実なのだろうか?

 ジェレミーアイアンズといえば「ダイハード3」の悪役でタンクトップ姿のご披露の時はびっくり。似合わないよねなーこういった普通な感じの武装テロリストのリーダーは。「1」の悪役アラン・リックマンの兄という設定。リックマンはテロリストうまかったよなぁ。リックマンは地味めのドラマ系から、大作系まで幅広くうまい俳優さんだと思う。しかし、アイアンズは役柄が限定されると思うのですよ。

 

 なんて、NGばっかり書きましたが、本作ではアカデミー賞をとってます。アイアンズが輝いてます。その役とは、イギリス人。不倫で奥さんを略奪婚。元弁護士だが今は無職でヒモ状態。アメリカに住んでいてもヨーロッパ人臭プンプンで、紳士だけど嫌みたらしいユーモア。口は立つけど気取りすぎていてなに考えているかわからず…そしてその合間にみせる「オドオドした表情」。これだよ、これ。アイアンズにはこういう役が似合ってるよ。クロネンバーグの「戦慄の絆」に匹敵する、適役ぶり。

 裁判モノなのに、法廷シーンがほとんどないのも珍しい。サスペンス風味なんだけど、純粋なサスペンスでもない。真相が不明な実話をもとにした、ちょっと変ったドラマ。そこがアイアンズのつかみきれない個性にもやっぱりフィットしている。もやもやした時に観れば、さらにもやもやすること間違い無し。でも、アイアンズの挙動不審な「表情」を観るとすべてが許せそうだ。

 

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猫よりタクシー

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FilmReview 「ねこタクシー」(2010)
(封切作品・ディノスシネマズ札幌劇場)

 動物を使った映画とか本は注目される。その中でも猫は永遠のスタンダートな気がする。書店にいけば猫のスナップ写真集がベストセラーになることもよくある。これだけ流行廃りのある世の中で数少ない「たしかなもの」だなぁと思う。

 さて、本作はTVシリーズからの映画らしいが、知らなかったし、カンニング竹山についても名前を知っている程度。観に行った理由としては、週末、邦画を観たいと思ってネットで調べてみると、その中で一番興味をそそられたから。軽すぎず、重すぎず気軽に観られるかな、と。

 「猫」と「タクシー」という単語がタイトルな訳だけど、内容では比率的には「タクシー」のシーンのほうがずっと多い。これは意外だった。うんざりするほど猫のシーンがあって猫ファン大満足!かと思っていたのだけど、そこはポイント絞っている。その点はいいなぁと思う。

 話自体は再生の物語とテーマを説明をできるかもしれない。後半はやや駆け足な印象をうけたが、伏線もキチンと回収されラストを迎える。106分という長さも丁度いい感じ。もっと長くもできたとは思うけど、このテーマで2時間越えはツライと思うので、駆け足も良かったと思う。カンニング竹山の演技は、ウマイというところは感じないのだけど、雰囲気はあったと思う。元教師で今はタクシー運転手という設定は無理なく感じられた。

 タクシーの夜走るシーンや停車するシーンがあって、これが良かったな。そういいうシーン大好きなんです。あと、竹山が運転するのを前方から撮ったショットが多くて、これも好きだった。タクシーのシーンが多いのは正しい方向性だと思う。

 作品内では大悪人は出ない世界観になっていて、殺伐てしてないのがいい。僕はごく普通のドラマで、やたら死があったり傷つく人がいるのはとっても苦手なんですよ。ドーンと気分が重くなる。

 本作はコメディではないし、過激な展開もないけど、しっかりみせてくれるドラマがあったし、タクシーのシーン等は映画じゃないとできないスケールがあったと思う。主題歌の水木一郎がチョイ役で出演していたのも楽しかった。主題歌もいい。

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10.07.01-08.01「jobin. 個展 [ まぶたの浦 ] 」

■ その場所にあるのは、夢の中での出来事

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「jobin. 個展 [ まぶたの浦 ] 」
会   期:2010年7月1日(木)~8月1日(日)/11:30〜23:30/月曜休
会   場:Oriental Lounge Insomnia(北10西16-1)

 市内在住の造形作家、jobin.によるエキビションが開催された。jobin.はモビールや照明を主に製作展示やイベント装飾を行っている。市内のライブイベント等で彼の作品を見かけた方も多いのではないだろうか。

 会場はJR桑園駅から歩いて5分ほどにあるカフェバー。このお店は古い建築物を利用している。インテリアも落ち着いた雰囲気があり、周辺も静かな場所なので時間の経過を忘れそうな空間。昼から夜まで営業しているので仕事後でも週末の日中にの訪れるのもいいかと思う。

 展示は2Fの天井をほぼ全部使っている。内容についてjobin.のブログに書かれた文章を紹介しよう。

不眠症という意味の店名の「インソムニア」さんで夢の中を表現できればと。はい。 期間が長いので増やしたり減らしたり変えたりと自分でも楽しめたらと思っています。 中心部から離れてますが落ち着いたお店です。良かったらいらしてください。

 期間も長めなのでお茶やお食事といっしょにぜひ足を運んで欲しい。また以下の展示にも出品しているので、情報としてお知らせしたい。夏の芸術の森もいいものですよ。

2010年6月26日(土)〜10月24日(日)*8/30〜9/6休業
会 場:札幌芸術の森美術館 ミュージアムショップ 
期間限定テーマ展示・販売 芸森・夏秋コレクション : お弁当 "Bento"
http://www.mocas.jp/museum.html

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Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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味わいの2人

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Film Review
「ナイトホークス」(1981)

 あらすじ:主人公(スターローン)はNYのおとり捜査官。爆破テロリスト(ハウアー)捜査のために特別任務に命じられることになる。


 スターローン映画というと「ロッキー」や「ランボー」のイメージ。だけど、そのくくりで考えてしまうと、この俳優の魅力を語るのはもったいない。アクションだけに注目するのはもったいない。そんなことを最近ふと思うのです。冷やし玄米茶を作りながら。過去に想いめぐらせます。

 ブーム当時はシュワルツネッガーのほうが好みでした。シュワは「ターミネーター」がなければ成功はなかったのかな、と思う。スターローンの場合、もし「ロッキー」や「ランボー」がなければどうなったのだろう。「ターミーネーター」がなかった場合、シュワは早々と映画俳優から足を洗っていた気がする。もともと強い俳優への意思はなかったように感じられるし。

 でも、スターローンはずっと俳優(映画界)で生きているようなタイプ。もし、2大ヒットがなかったら…それでも俳優をやっていたのでは。そんなパラレルワールドのスターローンをも観てみたい。脚本・監督もこなすタイプだから、目立たないけど味わい深い俳優(監督・脚本家)になっていたのではないか、どうだろうそんな印象を本作を観ながら思う。

 本作のスターローンは普段は時には女装して、ひったくりを捕まえる刑事である。別れた妻にも未練があって修正中。実はベトナム戦争では優秀な兵士である隠された経歴もあるだけど、それを元にスーパーヒーローにはなっていない。スパイス程度。

 スーパーではない、ところに本作の魅力はある。悪役はルドガー・ハウアー。彼といえば「ブレードランナー」である。本作では良くも悪くもブレランを引きずる感じでしたね。でも、彼は本作ではブレランのような超人ではない。彼女役のパーシス・カンバータとは良い組み合わせだった。

 本作はあえて控えめな2人。ニューヨークを舞台に地味めに活躍するのはなかなかの見所。最初の夜の追跡シーンが良かったなぁ。

 ラストは作品世界やハウアーの存在感が妙にこじんまりした気がしますが、若干のガッカリ感が味にはなってる。

 冷やし玄米茶は8時後にできます。楽しみです。そう、本作は僕にとって玄米茶かな。渋く味わい深い。だけど、とっても貴重という訳でもない。

 

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10.06.28-06.30「ATTIC全面展」

■「全面」のアート、そして3日間。

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「ATTIC全面展」
会   期:2010年6月28日(月)~6月30日(水)
会   場:
ATTIC(南3西6長栄ビル4F )

 札幌市立大学デザインを学ぶワタナベサオリによるドローイングのイベントが行われた。その内容は会場壁面に壁の大きさほどある板を何枚か置いて、3日間書き続けるという内容。同時に過去作品の展示やゲストによる音楽ライブも行われた。

 ライブドローイングは珍しくはないが3日間という長期のものはあまりない。初日にお邪魔した時には、まだほとんど描いていない板だけがあった。出直すことにして3日目の夕方に取材に訪れてみた。作品はかなり仕上がっていた。「今日はここに泊まる予定です」と話す、彼女にインタビューしてみた。

 今までA3以上のサイズの絵を描いたことはなかったという。今回はひとつの実験として「ATTIC全面展」を取り組んだそうだ。そのため作品完成のイメージはまったくないという。動機は「おもしそう」だから。
 
 実際に壁面ほどの板に黒マジックで線を書いていくと、線を描くキャンバスのサイズが大きければ大きいほど神経を使う。マジックは1日1本のペースで消費した。なぜ、黒一色描くかというと、彼女の考えとして色をつけると、なんとなく「絵」のようになってしまうから、と語る。会場には額装された過去のイラスト作品も展示されていた。また、紀伊国屋書店にて7月9日〜7月15日まで作品を使ったブックカバーが使用されるそうだ。

 ワタナベサオリは、イラスト制作のほかにさまざまな表現を行っている。今後の活動にも注目していきたい。

ワタナベサオリ  
http://www.creatorsbank.com/portfolio/index.php?id=0711082

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PS. 追伸。最終日翌日の夕方、会場行ってみるとワタナベサオリはまだ描いていた。以下の写真はその時に撮影したもの。取材後にカラーの作品も描いてようだ。「これも実験ですから」と彼女は笑って答えた▼

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Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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10.06.26-07.10 高橋 俊司個展「ステープラーワーク#2010/6」 

■ 文房具による再構築。意図される形、されない形。

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「高橋 俊司個展『ステープラーワーク#2010/6』」
会   期:2010年6月26日(土)~7月10日(土)/13:00~23:00 /日・祝休館
会   場:CAI02(大通西5丁目昭和ビル地下2階)
主   催:CAI現代芸術研究所 

 江別在住の美術作家 高橋俊司の個展が開催された。今回の展示はステープラーワークと呼ばれる手法で制作されている。それは8種類の写真をはがきがと名刺サイズに100枚単位で印刷。それを素材にステープラー(ホチキス)でとめてオブジェを作っていくもの。会期最初の3日間では公開制作が行われた。そこにお邪魔してみた。

 制作の手を少し止めていただき、高橋俊司にお話を聞いてみた。ステプラーワークは94年からはじめた手法だという。きっかけは作品を写真に撮ったとき、写真になることによって作品が別の質感を持つことに興味を持った、それをさらに再構築する方法をいくつか試した中で、しっくりきたのがステープラーでとめてオブジェを作ることだったという。

 今回は大通公園で撮影した8種類の写真を素材にしている。その理由は、本ギャラリーが大通地下にあるので、大通公園の「光」を会場にもたらしたかったそうだ。作品をステープラーを止めていく。すると意図されないゆがみもでてくる。そこが魅力だとも話してくれた。

 「大通公園の写真」という素材が「ステープラー」で再構築されていく。そこからできあがるものは、このふたつからは想像できないオブジェとなっていく。それをぜひ近くで実際にみて欲しい。

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Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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