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映画レビュー「ムカデ人間」(封切作品)

Mn

Filem Review
「ムカデ人間」(封切作品・ディノスシネマズ 札幌劇場)


● スタンダートな構成に好感が持てる。

    監督よりホラーを愛する気持ちを感じた。

本日7月23日(土)より札幌では封切り作品。ひさびさに上映をワクワク楽しみにしていた作品。このワクワク感をうまく説明できるだろうか。なんというか、どう解釈してもアカデミー賞捕りそうな作品でもないし、かといって人生が嫌になるほど凄まじくマニアックな作品でもない。ちょうどいい感じなのだ。そこが素敵。

ごはんでいえば、ちょうどいい料理。ほど良いデザート。明日、また食べてもいいよ、という感じかな。凄いごちそうって、明日また食べようって感じではないでしょう。そんな感じ。わかってもらえると嬉しい。

ストーリーはシンプル。ドイツの森で隠遁生活をしている医者。静かで品の良い住まい。でも、地下にはしっかり研究室があり手術もできる。医者の夢は生物を3つつなげた生物を作ること。最初は飼い犬3匹で実験してみたけど、どうやら失敗。自宅の庭にお墓をたてました。次は人間でやりたいもんだと、もんもんとしているとついにチャンスが訪れる、というお話。気になるつなげ方は上の写真を参考。簡単な感じで、いろいろ心配になります。

捕われる男1人ひとりと女性2人。ムカデ人間が完成して「私は新たな生物の創造主だ!」なんて、ひとり正装して祝杯をあげてご満悦。でも、博士それは創造とは違うような…と心の中でひとツッコミ。そんな中、ムカデにされた人間は必死の抵抗や脱出を試みる訳です…

俳優はマッドサイエンティスト役の医者は、かなりいい感で、その動きもひとつひとつはみどころ。見逃さないでいただきたい。でも、その他のキャストはそれほど魅力を感じなかった。男役が日本人の俳優でヤクザという設定から終始怒鳴っているのだけど、あまりそこに面白みがなかった。でも、ではどういったキャスティングがいいのか?と考えてみると、案外この配役のおかげで、他の部分のコワさが引き立っていたかもしれないね。男の最後のセリフはなかなか作品をオシャレなものにしている。

ホラー映画だからSAWみたいな感じを期待した人には肩すかしな作品かも。それほど残酷シーンや、意外な展開もない。撮影も凄く普通な撮り方でアートな感じはないし、構成も凄くスタンダート。

でも、そのスタンダードな展開が素敵なんだよね。道に迷った女性2人が雨の中、医者の家にたどりつくとか、刑事の行動パターンとか。起承転結という感じでうまくまとめてある。もっと、おもしろくできたのではないか、とも思う。でも、やりすぎず控えめにフェードアウトする部分が好感がもてる。「ごちそう」になりすぎないところが僕はとっても好き。これなら、明日また観たくなる。

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11.06.24-06.26 「Candle MOTHER個展『真夜中ガーデン』」

NEWS / REPORT 札幌アートシーン 札幌で起こっているリアルなコト。
ニュメロデューが現場に出かけてレポートします。
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NUMERO DEUX Report.2011.07.04
「キャンドルを使ったインスタレーション
 幻想のガーデン」

Candle MOTHER個展「真夜中ガーデン」

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▲キャンドルによるインスタレーション。ガラステーブルに上に置かれている。前日のすべて溶けきったキャンドルも展示されていた。


札幌では2004年より「さっぽろキャンドルナイト」というイベントが開催されている。これは『1年中で一番昼が長い夏至の日、夜8時から10時の2時間、みんなで一斉に電気を消して、スローな夜を過ごそう。』というコンセプトに学校、飲食店、ホテル、アートスペース等で電気を使わないライブ、展示等が市内およびその近郊で多数開催される。

今回紹介する「Candle MOTHER個展『真夜中ガーデン』 」も、その参加イベントのひとつ。市内ススキノ近くのアートスペースにて開催された。内容はキャンドルを素材にしたインスタレーション。具体的に説明すると、会場は照明を落とした暗い空間にてガラステーブルにたくさんの火をつけたキャンドルを配置。それを3日間にわたってインスンタレーションとして展示された。

いろいろな色のキャンドルが、炎とともに浮かびあがる空間は、外の喧騒とは遮断された、独特の時間の流れる空間になっていた。キャンドルがガラステーブルにのせられているのは重要な意味がある。その理由は観客が寝そべって、ガラステーブルの下からキャンドルを眺めるコンセプトとなっている。実際に寝そべって見てみると溶けたキャンドルの様子が、上から見るのとはちがった表情をみせてくれて、ちよっとしたサプライズがある。

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▲ ガラステーブルの下から観たキャンドルは幻想的なイメージに見える。

手作りキャンドルの販売、というのはそれほど珍しいものではないが、キャンドルを使ったインスタレーションは珍しいのではないだろうか。キャンドルの明かりの中でタイトルどおりの幻想的な「真夜中ガーデン」が作られていたと思う。

 


Text & Photo by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)



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「Candle MOTHER個展「真夜中ガーデン」 」
2011年6月24日(土)〜26日(日)   
場 所:ATTIC(南3条西6丁目 長栄ビル4F)
主 催: Candle MOTHER


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(映画コラム)『ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男』

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Film Revew
『ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男』(封切作品)

Story:実話をもとにした作品。1970年代、中年になり作品の売れない作家アーヴィングは起死回生のアイディアを思いつく。それは大統領にも影響力があるが変わり者で隠遁生活をしている大富豪ハワード・ヒューズのインタビューをねつ造して、出版することだった…


ひさびさにスガイシネマズ札幌劇場に行く。女性が多いな、と思ったらレディースディーでした。なるほど。自販機でカフェオレを買って席に座った。平日の夜なんで、ゆったりと座れた。いい感じ。

主演はリチャード・ギア。この俳優については「愛と青春の旅立ち」とブルース・ウィルスと共演した「ジャッカル」ぐらいしか知らないなーという知識のなさ。最近は忠犬ハチ公のハリウッド版にも主演したらしいですね。実は本作と監督が同じということ。

ギア演技の印象としてはやはりスターらしい「華」はあるかなという感じ。強いクセはないが、演技だけでひきつける魅力はあったと思う。本作はSFとかアクションのように特に映像的にみせつけるシーンがある訳じゃないから、俳優の演技はかなり重要になる。その点はギアは良かった。普通だけどひきつける。画面にいるだけで退屈はしない。魅力がわかるような気がした。

内容的に、出版社の裏側やニセ原稿作りのプロセスが深く描かれるかなと思ったら、そのあたりは意外にあっさりと肩すかし。そこは軽めにしておいて、その代わり、相棒とのやりとりや妻と愛人の関係についてのシーンを多く描いて、主人公の人間性について深みを持たせている。このあたりはどこまで事実に基づいているか不明だが、ドラマ的におもしろくしているのは確か。

作家として詐欺師であると同時に、プライベートでも詐欺師だったのかな、と思う。主人公が虚構を繰り返すことによって自分自身も虚構と現実の区別がつかなくなっていく雰囲気もいい。そのため出版とかに特に興味がなくても楽しめる作品になっていると思う。

あと、みどころは70年代のファッションやオフィスのインテリア等が良かったな。メインではないですが素敵なアクセントになってます。70年代って何でもオシャレに感じるなぁ。ファッションにしろ、アートにしろ。

なんか、みてくればっか書いたので、内面的な話を。嘘をつくと、さらに嘘を重ねることになる。本作は別に「嘘はダメです」という啓蒙的なところはないけど、嘘をつくと、嘘を重ねるしかない。そうしてすべては嘘になっていって、嘘を言っている本人も嘘と現実がわからななくなるのがこわい。これはきっと現実もそうかと思う。嘘って、危険だなと思いました。

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