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映画コラム。撃った男の思考とは

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Film Review 「ジョン・レノンを撃った男」(2007)

ジョン・レノンの殺人というテーマだけあって「なんて悪いヤツ!」という視点で描かれているのかな、と思えばそうでもない。

主人公の犯人は、冴えない人物かもしれないが、仕事もあり、(理解のありそうな)妻もいる。自宅も日本の住宅事情を考えればほどほど良い感じのアパートメント。ハワイに住んでいて、その明るい日差しがとってもきれい。楽園に住んでいるように思える。少なくても、主人公は食うのに困るような生活ではない。最高に幸せではないかもしれないが、自暴自棄になるほど不幸ではないようだ。そういう人ってたくさんいるよね。僕もそうかもしれない。

自暴自棄になるほど不幸でない者の、何の罪もないジョン・レノンへの殺人というところに本作のやりきれない部分がある。まぁ主人公の頭の中ではレノンを殺す理由はあったのである。しかし、それは常識ではまったく理解できるものではなかった。さすがにその部分は僕は理解できない。殺人を妄想する部分まではできるかもしれない。しかし、実行するのは無理だ。なぜかといえば、そこに何の価値も見いだせないからだ。

これが完全に、生活も人生も詰んでしまった人間の行動なら、まだ理解の余地がある。しかし、本作に描かれる犯人は決して殺人をするほどの不幸ではないように感じる。でも、それは所詮、他人の意見なんだろなぁ。犯人にとってはすべてが選択の余地のない行動だったに違いない。それしか、なかったのだ。

 人間に思考というのは、素晴らしい芸術も生み出すし、救いのない不幸も生み出す。そう考えると犯人の行動は決して人ごとではないように思えてくる。すべては個人の思考によって決まるのだ。

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映画コラム/男のヒーロー。

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FilmReview 「スーパーマグナム」(1985)

  男子にはヒーローが必要である。
味わい深いヒーローが。そうとくれば僕はポール・カージーである。全国に賛成者は文系の冴えない男子を中心に100万人いるに違いない。週末、ひとりパソコンにむかいながら…生協で買ったおせんべいを食べるよ。

 ポール・カージーとは名優チャールズ・ブロンソン演じる映画「DEATH WISH」(原題)シリーズの主人公で、僕のヒーローである。カージーはもともとはニューヨークで設計士をしていて、愛する妻と娘がいる暴力とは無縁の生活を送っているニューヨーカーでした(ブロンソンって、それっぽくみえないけど)。しかし、1作目「狼よさらば」(邦題)で、妻を殺され、娘はレイプされ植物状態に。警察もあてにはできず、設計士から拳銃を握る復讐の男に変貌していく。派手なアクションよりも、その変貌の過程がリアル作品だった。実行する時はドキドキしたりね。次作「ロサンゼルス」を経て3作目が本作。

 本作になると、なんだか1作目にあった世の中の理不尽に狂気を持って対抗する主人公というフォーカスがなくなっきて「ひたすら悪人を撃ち殺す仕事人」的キゃラクターとしてカージーが登場する。一応、古くからの友人を殺された復讐というストーリーはあるものの、それはキッカケとして軽く流されている感じ。話としてはストリートギャング団によって無法地帯と化した町をとり返すためカージーは立ちあがる。その方法が通販で買った(?)44マグナムのオートマチック拳銃「44オートマグ」でギャングを打ちまくるという大変シンプルな方法。

 拳銃やサブマシンガンを持ってるギャング団(後でバイク軍団も加勢)を、ひとりで立ち向かうのはまったくリアリティはゼロなのだけど、革ジャンを着込み、マグナムをゆっくりと構えてギャングを撃ち殺す(当然、その間のギャングの発砲は一発も当たらず)カージーの貫禄たっぷりの演技を、逆説的なリアリティによって「嘘の世界の強力なリアリティ」を与えてしまうのが不思議だ。それが、ブロンソンの魅力なんだろうな。本作は彼がいないとまったく成り立たない。

 ヒロインとの大人な一夜の過ごし方も素敵なんだよなぁ。なぜかヤル気まんまんな知性的な美女に自宅に夕食を誘われたのに「遅いから、そろそろ帰るよ」なんてあっさり言うなんて、まさに男の中の男。そこでまたヒロインが燃え上がる訳です。悪人はひたすら悪人で罪悪感の必要ありません。悪役は悪人というより更正不可な異常者な感じて、殺すしかありません。オールクリアーです。

 しっかし、よく考えるとカージーに都合の良いことばっかりなんだけど…それはいわない約束でしょう。本作はシリーズを重ねることごとにリアリティがなくなったというけど、主人公が殺人に対して単なる「業務」のようになっていくのは、ある意味リアルなんじゃないかなぁ、と思ったり。考えすぎかしら。

 



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映画コラム「ウォンテッド」

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FilmReview
「ウォンテッド」(2008)

冴えないサラリーマン主人公が、実は天才的な暗殺者として才能があり、父の復讐をするという、主人公はいわゆる「マトリックス」型のパターン。手ほどきはジョリー先生がやってくれるという。校長先生はモーガン・フリーマンという優良校の雰囲気。織物工場を隠れ蓑に1000年以上続いた暗殺機関によって、この世の秩序は守られるという設定。暗殺者のリストは織物の中にある暗号というのがやや不安な感じなのだけど、傷がすぐ回復させるお風呂や、弾丸を曲げて発射するテクニック等、オカルトな組織なのね、と納得する訳である。

上記DVDジャケではまったく無視されてますが、主人公はマカヴァイ君ですから!ハリウッド的にはまだ無名だけど、本作ではなかなか良い演技を見せてくれる。冴えないリーマンと超人的な暗殺者を同時にやるのは演技力がいると思います。ジョリーはいつものジョリーですから。

主人公の修行シーンは少したるい。まぁ、ここはラストを盛り上げる伏線ということか。一人前になるとジョリー先生と走る電車の上から暗殺試験。無事合格。どうも、主人公が暗殺者というのが、感情移入しにくい。父親のカタキをとる!という部分だけならいいのだけど織物リストを盲目的に信じて実行するのにためらいはないのかしら。それがあったら話が進まないのか。

まぁ、大事なのはアクションシーン。弾丸を曲げたり、敵の弾丸を弾丸やナイフで防いだり…現代劇のなかで、適度なバランスでオカルト的なアクションが展開されるのは小気味良い。後半になんだか「カサンドラクロス」みたいな列車シーンがあって、これもまた壮絶アクションとなります。それで解決とおもいきや、これらはラストの大アクションの伏線であるのです。

前半ややタルかったですが、後は一気に楽しめまた。オチもいいと思う。全体の荒唐無稽な雰囲気をマカヴァイくんの現実感がうまくカバーしていると思う。なのでDVDのジャケットにもマカヴァイ出してあげなよ。 








 

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札幌ビエンナーレ・プレ企画 実行委員インタビュー008
沼山 良明(ぬまやま・よしあき)

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札幌ビエンナーレ・プレ企画
実行委員インタビュー008

実行委員:沼山 良明(ぬまやま・よしあき)


札幌初の国際的な芸術祭「札幌ビエンナーレ」を2014年開催実現のために有志による「札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員会」が結成され、第一弾として、今年4月に北海道立近代美術館で9日間(4/2-4/10)展覧会が開催された。道内にてNMAという名義で、28年間前衛的な音楽のライブをプロデュースしてきた沼山良明。札幌ピエンナーレ・プレでは音楽系企画の実行委員として活躍した。NMAとしての活動のキッカケから、その内容、行政と音楽活動のかかわりあい、そして札幌ビエンナーレ・プレとお話を聞いた。

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『私は楽しいことや豊かな生き方はすべて人のつながりから生まれると思います。行政も、アーティストもプロデューサーも、もっと人としてつながれば豊かな表現活動ができんじゃないかな』Interview with Yoshiaki Numayama

NMAのはじまり

私は実行委員として音楽関係のプロデュースを行っています。個人では本業の傍らNMAという名義で北海道にて28年間、前衛的な音楽をライブを通して紹介する活動をしています。そのあたりのキッカケ、活動をしながら考えたこと、札幌ビエンナーレ・プレについてお話しようと思います。

学生のころから音楽が好きでロックのコピーバンドをやっていました。その後調律学校を卒業してピアノの調律師になりました。仕事をしていて考えたのは音楽で食わせてもらっているんだから、なにか音楽で社会にお返しができないかな、と思いました。それで最初はクラシックのピアニストやジャズのコンサート企画などを始めました。

それが、今のNMA(Now Music Arts)名義で前衛音楽のライブを企画するようになったキッカケは、副島輝人さんとの出会いによります。この方は前衛ジャズシーンでは世界的な音楽評論家・プロデューサーで、ドイツの「メールス・ニュー・ジャズ・フェスティバル」に行って取材してきて、撮影した8ミリ映画を全国行脚し上映会をしていたのです。札幌では「アクト」というジャズ喫茶で上映会をやっていて、そこで副島さんと知り合いました。上映会を観たら自分でも行きたくなって、83年に副島さんと一緒にそのフェスに行ってみたのです。

「メールス・ニュー・ジャズ・フェスティバル」は世界中の新しいジャズを紹介する音楽祭です。このフェスはもともとは個人の企画でスタートしたのですが、2年目から開催地のメールス市から資金を出してもらっているそうです。フェスは8千人くらい入るサーカスのテントで昼から夜まで4日間行われます。メインステージのほかに実験的なライブをやる小屋もあります。

このフェスで、ジョン・ゾーン、アート・リンゼイ、ビル・ラズウェルといった、当時ではまったく日本では知られてない素晴らしいミュージシャンが出演すると、むこうのお客さんはみんな彼らを知っていて、ワーッ!となるんです。それを見て日本でなぜこんな凄い人たちが紹介されないのかな、と疑問に思いました。それがNMAをはじめたキッカケになっています。

83年から副島さんや、知り合いのミュージシャンを通じて前衛音楽のライブを年に5~6回企画をはじめました。私がミュージシャンを選ぶ基準は、お客さんに新しい表現を紹介できるか、という点です。そのミュージシャンと知り合いだとが親しいとかでは決めない。そこはシビアに判断していく。去年、この人に来てもらったから来年も同じ人で、という決め方はしない。同じ人でも次回はお客さんに違う表現をみせてくれるなら、おねがいするでしょうね。

● 単独のライブから「ナウミュージックフェスティバル」へ。

そして、発展させた形として1986年から「ナウミュージックフェスティバル」という複数のミュージシャンが登場するフェス形式のライブ企画をやることにしました。その理由は今までの単独の企画だと、お客さんが「これは知らないから、行かない」という感じ勝手に判断されてしまう。でも、フェス形式で56組のライブをやれば、違ったタイプの音楽を一度に聴けるから「この音楽は知らなかったけど、いいな」と気がつく人もいる。そうやってNMAのファンを増やしたい、と考えました。

会場は大谷会館や道新ホール、札幌芸術の森ができてからは、素晴らしい環境なのでそこでやっていました。2日間ぐらいの日程で、1日目にゲストを招いたワークショップやレクチャーもやりました。フェス形式にして、今までと違う手応えは感じたし、NMAのファンも増えたと思う。出演した東京のミュージシャンが「これが札幌で、できるのになぜ東京でできないんだ」と感じてくれて東京、神戸と連携で2年くらいやっこともありました。

でも、フェスは正直赤字でしたね。赤字を出してそれを返して、またフェスをやるという感じです。フェスをやってると税務署の人も来るんですよね。どれだけ儲かっているかと勘違いして。毎回赤字だと知ってびっくりして聞かれます「なぜ、儲からないことをやるんですか?」ってね。僕は「別に赤字にしたくてやっている訳じゃない、トントンでいいから、という思いでやってる。現実はそうはいかない、だから赤字が出てるんだ」と説明する。でも納得してくれない。最後に「男には赤字になるとわかっていても、やらなきゃならないことがあるんだよ」といいましたね(笑)。

96年くらいにいよいよ資金繰りがダメで次のフェスは無理かな~と思った時に、 東京の知人から「オマエの活動に100万出してもいい、という人がいるから会うか?」という連絡があって、行きましたね東京(笑)。帝国ホテルのロビーで、女性の方に100万円いただきました。それで97年は開催できたのですが、それ以降はフェスという形では頓挫しいます。ライブの企画自体は定期的にやってます。

●行政とのかかわりについて

私は行政が音楽や芸術にお金を出す場合は、プロデューサーの「人」としての技量を見極めて、信頼関係ができたらすべてまかせる、というスタイルをとって欲しいと思う。今の日本では、行政がお金を出す場合は行政自体に悪影響を及ばさない予防策のためか制約や取り決めが多くてプロデューサーの自由な発想で企画を進めることができない。申請自体も面倒だと思う。そういった細かい部分は、お金を受け取るプロデューサーを信頼できればまったく不要だと思う。

日本ではまだ人ではなくて肩書きや状況でしか判断していないと感じる。ヨーロッパの行政のほうが、生まれた時からアートや音楽にいろいろ触れる機会が多いため、人を信じて行政が協力をしている。だから、最初にお話した「メールス・ニュー・ジャズ・フェスティバル」も、メーレス市はお金だすけど、口は出さないそうです。それはプロデューサーを信じているからなんです。

ヨーロッパのちいさな町に日本のミュージャンがツアーをすると、そこにはたしかなプロデューサーがいる。その人は行政から信頼されてサポートを受けている。そういう町がたくさんあるから、しっかりとしたツアーができる。立派なコンサート設備があるとか、ないとかではないんですよ。一番大切なのは人。北海道なら釧路のthis isの小林さん、 苫小牧ならアミダ様の田中ツルさんたちのような熱い人がいればライブはできるんです。行政の人にもっとアートに興味や関心があれば、もっと変わっていくとは思いますね。

●札幌ビエンナーレ・プレ

札幌ビエンナーレ・プレ協力のお話をいただいて、個人ではできないことが、できるかもしれないと思いました。大友良英水戸芸術館「アンサンブルズ」展(昨年秋から今年1月)をやるのを見て、美術館で実験的な音の展示(サウンドインスタレーション)やライブパフォーマンスをやることに興味があった。それに札幌という都市ではひとつのジャンルだけに絞って集客するのは難しい。ビエンナーレ・プレのアートあり、音楽あり、パフォーマンスありといういろいろな表現を集めるのは、多くのお客さんが来る可能性が広がって、素晴らしい思います。

私は楽しいことや豊かな生き方はすべて人のつながりから生まれると思います。行政も、アーティストもプロデューサーも、もっと人としてつながれば豊かな表現活動ができるんじゃないかな。

Text&Photo by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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11.02.26-11.03.13「pistol3」武田浩志・齋藤周

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「pistol3」武田浩志・齋藤周
日  時:2011年2月26日(土)-3月13日(日)
会  場:ROOM11(北3東5)

市内在住の美術作家、武田浩志齋藤周による2人展”pistol”。その3回目が行われた。今回の会場はROOM11という札幌ファクトリーより5分ほど歩いたところにあるギャラリー。あまり行き慣れないエリアではあるのだけど、一度行けばすぐ憶えられる印象的な場所。記憶にとどまる。

本ギャラリーは格子上の窓があって自然光がよく入るのと、その窓から列車が走るのが見えるのも札幌のギャラリーでは珍しいかと思う。周辺には同じくギャラリーの「サロンコジカ」、カフェ森彦の3つめのお店でオリジナルのドーナツが楽しめる「D×M(ディーバイエム)」もあって、訪れるにはおもしろいエリアだと思う。2つのギャラリーを楽しみ、お茶を楽しむのいいかも。札幌ファクトリーも行けるしね。

会期のなかばの夕方、本ギャラリーにて、二人に話を聞いてみた。その中の話をピックアップして紹介しながら展示の様子の写真を紹介していこう。

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▲ Shu Saito

●2人の出会い

2人は出会ってから10年目だという。はじまりは武田がまだ学生だったころにアートの企画のため市内の高校を訪ねたところ、そこに齋藤が勤務していた。武田が20代前半、齋藤が30代前半の時だという。2人が気が合って交流を持つようになる。齋藤は「作品のつくっていく中でCAIやプラハなど活動の領域が重なっていたことと、知り合ってみると 同じ大学の研究室という共通項があった」からと回想する。

● 「pistol3」について

「pistol」は2006年にスタート、2007年に時計台ギャラリーで開催。そして、4年ぶりの3回目は昨年の春くらいよりやろうかと話していたという。テーマは「LIFE」としているが、あまり日常、日常という部分を強調はしないで、根底ではそういうのをおいたうえで、作ろうということだ。2人ともキャリアを重ねており、それぞれ個展の経験者であるが、2人展のシリーズをやるのはなぜなのだろうか。

武田:2人やることで、責任を分ける訳でないですが、良い意味で力を抜いた展示ができるのかな、とは思います。同時にこの企画は挑戦の場という気持がある。いつもできないようなことをやる。

齋藤:武田君とは本当に年齢差を感じさせずに、楽しくできますし彼の挑戦していく姿勢は僕も常に新しいことに挑戦していく気持になります。

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▲ by Shu Saito


●展示会場の「ROOM11」について

武田:いろいろ探していてこのギャラリーが気に入ってこの場でやりたいと思った。窓が特長的で自然光が入るのがいいですね。昼と夜で展示の表情が変ってくるのも新鮮。白い壁面空間がフラットでなくて入り込んでいるのもいい。

齋藤:僕は2年前くらいからこの場所は知ってはいた。僕も自然光が入るのがいいなぁ、と思ってました。でも、正直、立地で迷いあったのだけど、武田くんから話がきて、ああこのタイミングでやる場所なんだな、と思いました。この空間の良さを知っていたのでスッと賛成できましたね。

● 作品をつくる発想について教えてください。

武田:僕は展示したメインの作品は、ここ最近取り組んでいるポートレートシリーズといって、絵日記みたいな形の作品です。今、興味があるものや形、新しい技術の実験をひとつのキャンパスの上にどんどんもりこんでいって、わかりやすくするために抽象的な人型(ポートレート)にしていく実験的な作品です。

齋藤:僕は今まで線で人物を起こした作品というのかなりあったのですが、今回はできるだけ人物を描かないようにしてみました。後づけですけど、会場の格子上の窓を意識した作品作りをした感じかな。独立した作品を展示スペースにあわせてくっつけて展示したりもしてます。かわいい空間作りもやりたかったので壁面に直書きもやっていて、それは今までに近い作品ですね。    

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▲ Hiroshi Takeda

今回は、結果的に展示しない作品もありました。展示する作品が空間的に制限される場合、自分の作品に優先順位があるんだな、というのは発見だった。落とさなければいけない作品があって、取捨選択があからさまなって、コトバではうまくいえないけど、落とすものとそうでないものがあるんだなと思った。

武田:僕は、展示しなかった作品で実は当初これをメインにしよう!というが2枚あったんですよ。でも、実際展示してみて、作品に「ここじゃないよ」といわれた感じがして、展示しませんでした。

● 最後に展示の感想を聞いてみた。

武田:いつかは、と先延ばしにしていた大きいポートレートが描けた。今後につながる作品ができたと思う。今年はまだ始まったばかりですが、これで今年は軌道に乗れた感じがしますね(笑)。

齋藤:ひさびさなんですよね。2人という形の展示は。グループではなくて、2人展で見えてくることがあるんだなと思った。一緒にやらせてもらって、勉強になったし次の課題も見えてきた。これからいろいろな展覧会に出品していく中でためになったと思います。

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▲ by  Hiroshi Takeda

memo.
インタビューは30分程度コーヒーを飲みながらさせてもらった。その間も何組かのお客さんが展示を観に訪れていた。2人のお話を聞いてみた感想としては、「2人展」というのは、個展とも3人以上のグループ展とも違う、「やってみる魅力」があるのだと感じた。もちろん、それが有効に成立すのは、2人良好な関係性があるのと同時に単なる仲良し展にはならない距離感というか、一種の緊張感も必要なのだろう。個人的には2人展というのは、2人のアーティストの「対話」もあるのではないのだろうか、そんなことを感じた夕方から夜につながるひと時だった。

Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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11.04.07-4/26「チャリティ作品展 Piece of wishes」

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ESQUISSE GALLERY Vol.116  緊急特別企画
東日本大震災 義援金チャリティ作品展 「Piece of wishes」

期 間:2011年04月7日(木) -  2011年4月26日(火)
[月〜土] 12:00〜24:00/ [日祝日] 12:00〜21:00 水定休・4/19臨時休業
会 場(主催):カフェ エスキス(北1西23)

協力作家: 【絵画】 小田啓介/果澄/國枝エミ/小坂英一/佐藤香織/高橋靖子/谷口真希子/ダム・ダン・ ライ/野口秀子/本田滋/前川アキ/ももいじゅん/山里稔【版画】 淺野由美子/彼方アツコ/戸山麻子/渡邉ひろこ 《写真》 伊藤美由紀/佐藤孝/菅原英二/廣島経明/森美千代/山岸せいじ/山崎陽一郎/LIO【立体・その他】 加藤祐子/Masato Sato/澁谷俊彦/中嶋幸治/山岸勉/山本祐歳【音楽】 kohei sasaki(not/c)
チャリティイベント:小野靖子チャリティライブ 4月26日(火)[開場]18:30〜 [開演]19:00〜 ◎料金:1ドリンク付 1,000円(税込) ◎予約優先 ※予約は前日までに店頭または電話で。

 市内のギャラリーカフェにて、東日本大震災の被災者支援を目的としたチャリティ作品展が開催される。本企画には32人のアーティストが賛同し本カフェにて、買いやすいチャリティ価格にて作品が展示&販売される。出品作品は絵画、版画、写真、立体作品、音楽、ポストカードなど幅広く、好みにあった作品がみつけやすい。そして、それが人々の役に立つことを願おう。

 タイトルの「Piece of wishes」は「願い」「望み」「祈り」の「かけら」。  みんなの小さな思いが、大きな力になるように願って」いるとのこと。また、piece には、「(芸術)作品」の意味もある。平日なら24時まで開いているお店なので、仕事帰りに週末にぜひ足を運んで欲しい。
http://www.cafe-esquisse.net/

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(初日)11.04.02-04.10 「札幌ビエンナーレ・プレ企画2011 美術館が消える9日間」

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「札幌ビエンナーレ・プレ企画 2011

—アートから出て、アートに出よ。― 美術館が消える9日間」

会 場:北海道立近代美術館 
会 期: 2011年4月2日(土)- 4月10日(日)休館日:4月3日(月)
開館時間: 9:30〜17:00(入館は16:30まで)

入場料:一般1000円、学生600円、 小中生、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方は無料
団体は10名以上
チケット販売:道新プレイガイド、大丸プレイガイド、4プラプレイガイド
主催:札幌ビエンナーレ・プレ企画 実行委員会
http://www.sapporo-biennale.jp/

【出品アーティスト】

石倉 美萌菜 / 磯崎 道佳 /伊東 篤宏/伊藤 隆介/梅田哲也/金子 良(のびアニキ)/黒田晃弘/contact Gonzo/鈴木 涼子/高橋 幾郎/トーチカ/初音“スクラッチ”ミク/結城幸司

● ついにはじまった札幌ビエンナーレ・プレ初日レポ。

4月2日(土)朝、窓から外をみると雪が降っていてびっくりしました。外出するのに冬のコートを着ようかと思ったり。午前9:30分ころには外出する理由があったのです。それは、本日からスタートする札幌ビエンナーレ・プレを観に行くためです。外出する時間にはちょうど雪は降っていない感じでした。それなら、春物のジャケットに一応、帽子を持って会場である北海道近代美術館に行くことにしました。

美術館の前に到着すると上の写真のとおり、サインボードがありました。白いバックのデザインがまだ雪の残る札幌にマッチした感じです。会場にはほぼ開館直後に入ることができました。初日だけあって、実行委員やアーティストの方等の関係者がたくさん来ていました。エントランスには実行委員の方々、展示室内にアーティストが作品のチェック?をしているのもみかけました。

展示空間は暗幕によって、いくつかのエリアに分けられていて、同時にいくつかの展示会に来ているようで得した気分になれます。暗幕を越えるごとに次の空間には何があるのかな?という楽しみでもあるし、暗幕によって分岐するところもあるので、一度戻ったりすると、方向がわからなくなって迷うのもそれはそれでおもしろい。展示場の出口をでると、関係者やアーティストがいたるところ立って打ち合わせをしてるのをみかけました。

取材でいろいろ展示の写真を撮らせていただきましたが、これから行く人も多いのでここで紹介すると楽しみ半減かと思います。会期終了後にあらためてレポートを書く予定もあるので、以下ほんの少し紹介します。あえて作家名も紹介しないようにしますね。行ってからのお楽しみです!4月10日までなのでお見逃しなく。

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▲ エントランス付近。入ってすぐにただごとではない雰囲気があります。

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▲ これも作家と作品です。作家がいて成立する作品。

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▲ 個人的に好きな作品。クールでインタラクティブ。 

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▲これからのアートは参加型がたいせつかな、とふと考えました。

Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)

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Sapporo biennale-pre Artist Interview "Tochka"

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札幌ビエンナーレ・プレ招聘アーティストインタビュー
トーチカTochka)
ナガタタケシ&モンノカヅエ

札幌発の国際美術展を開催する試み札幌ビエンナーレ・プレ。それがいよいよ2011年4月2日(土)から同月10日(日)まで北海道立近代美術館にて開催される。道外招聘アーティストの中には早めに札幌入りして制作を行っているアーティストもいる。

ナガタタケシ&モンノカヅエのユニットトーチカTochka)もそのひとつ。3月27日(日)夜より来札して制作を進めている。その合間におこなわれた歓迎会の席にてトーチカの表現と今回の展示についてお話を聞いてみた。

2人はソフトな印象でわかりやすくトーチカの成り立ちや表現について話してくれた。話を通してアートのおもしろさやアートによるコミニュケーションのチカラ伝えたい、という想いを2人より感じた。ぜひ彼らの展示を観に行って欲しい。

Interview With ナガタタケシ&モンノカヅエ

●"PiKA PiKA"という表現とそれの生い立ち

------札幌には2日ほど前に来られたそうですね。週末の札幌ビエンナーレ・プレの開催のための制作をしている最中でしょうか?

ナガタタケシ:(以下N)札幌に来てからずっと制作をしてますね。今回は展示とオープニングパーティでのパフォーマンスとワークショップもあるのでやることは多いです。それぞれ準備は違うものなので。

------早速本題ですが「PiKA PiKA」についての説明とその成り立ちを教えていただけますか?  

僕たちのアート活動は、いろいろな人が参加してもらうワークショップを通して作品を作るスタイルをとっています。作品ごとに何十人、何百人という人がかかわります。「PiKA PiKA」は光をつかってみんなで落書きをやっていく表現です。これは言葉や文化や宗教を越えてコミニュケーションをとることが可能で実際、外国でもおこなっています。

モンノカヅエ:(以下M)「PiKA PiKA」は国に関係なくみんな楽しんでもらっています。この国だから、という反応はないような気がします。私たちは難しい英語はしゃべれませんが、それでも「PiKA PiKA」を通してコミニュケーションがとれるのです。

N:はじめたキッカケは神戸で子供も大人も対象にしたワークショップをやることになったときですね。それまでは子供むけにしかやっていなくて。

M:夏休みの企画だよね。2005年ですね。

N:夜にもやるものだったので、光で絵を描けないかなと思いました。僕は大学で実験映像を専攻していたので技法は知っていました。それを使ってみんなで共有できるアート表現ができないかな、と考えたのが夜にペンライトで空中に絵を描く表現「PiKA PiKA」です。実際やってみると、思ったより身体を動かすし、子供は原理がわからなくても、光をふりまわすのを楽しんだり、同時に大人も楽しめるのがわかった。そして、できた映像もおもしろかった。これは続けていこうと思って現在にいたります。

作品のつくりかたはいろいろありますが、ワークショップの場合は3〜4人でチームを作って、まず4コママンガを描きましょう、と教えて、紙にどんな話をつくりたいのかイメージを膨らませてもらいます。そして絵コンテを描いて、実際に描く分担を決めていきます。10秒間の中で一枚の作品を完成させるので、その点も打ち合せしていきます。でも、まったく即興でやることもあります。

M:クリエイティヴ系の仕事をしている人と一緒にやる時は、みんな好きにやっていいよ〜という感じです。

N:今お話したとおりワークショップから始まったプロジェクトですが、そのもとのようなことがあります。それは僕達が東京でテレビ向けのアニメーションやミュージックビデオを作る映像制作の仕事をしていて、その日々の中でだんだんストレスを感じていました。

M:納期があって、それまでに仕事をする。それは当たり前なのですけど「描きたい!」じゃなくて「納期があるからやらなきゃ」という感じになっていて…

N:この業界で働いている人はもともと、絵を描くこととかが好きでそれを仕事にしたのに、どこかで疲弊しているのを感じていました。クリエイティブの本当のおもしろさを思い出そうよ、ということで東京の同じような仕事をしている人や海外の知り合いにも声をかけてバーベキューを企画して飲んで食べて、そして「PiKA PiKA」のようなことをやって交流することをはじめたのです。

M:最初の1年はよくやってましたね。

N:交流のためのツールとして使って、そこでできたものをYouTubeで流したり。

M:ホント、お金がなかったから生まれた企画なんです(笑)。東京だと飲みに行ったら一回5〜6千円かかりますよね。飲んで働いて、飲んで働いてという感じになって。循環が悪いというか。それならコンビニでなんか買って、夜に公園とかで遊べることがないかな、というところから始まって。クリエイティブ系の人は夜元気ですし(笑)。楽しさが伝わる表現っていいなぁと思います。

N:根本にあるのが、アートや、クリエイティブのレクリエーションやリハビリテーションという発送です。創る楽しさや、子供心を引き戻していく場を作るというのがぼくらの使命だと思っいてます。

M:「ラクガキ」におもしろさを感じていて「PiKA PiKA」にはそういった表現の提案というのもあります。あと外でできるのもポイント。みんな外で遊ぼうよ!という想いもあります。

●今回の展示について

ーーー次に今回の展示について教えていただけますか?

M:今回の札幌での展示は今までお話したこととはまったく違う感じになります。

N:3月12日の東北地方太平洋沖地震の震災を受けた方々のために僕達はプロジェクト「きみでいて ぶじでいて × Safe And Sound Project」に取り組みました。それを今回の展示にしたいと思ってます。内容を説明するとユニクロのCMなどを手がける第一線で活躍する映像作家、CM監督である関根光才さんとのコラボレーション企画です。はじまりは関根さんのお知り合いであるサウンドクリエイターの菅野よう子さんから、関根さんにこの震災ために菅野さんが作った曲でなにか一緒にできないかという話があって、関根さんから僕達に話があって、関根さんと僕達で世界に被災地にむけたメッセージを募集して、それを発表するプロジェクトをやろうと。被災の日から一週間以内に。

僕達がなにか作品を作るのではなくて「PiKA PiKA」のやりかたをみなさんにお知らせして、それで被災地にむけたメッセージを入れた作品を作ってもらう。関根さんは写真を募集しました。それを素材にして最終的には菅野さんの音楽をつけたミュージックビデオすることにしました。ウェブサイトで募集して、被災地にむけてのメッセージを2日間だけ英語と日本語で募集しました。すると700枚くらいのメッセージが集まりました。それを今回、展示する予定なんです。

M:自分たちは募集や編集しただけで、作品自体は世界中の方々が描いてくれたメッセージなんです。こういった活動は阪神淡路大震災の時からおこなっていて、被災を受けた人にどうすればみんなの気持ちが癒えるのかなと考えました。義援金の寄付はもちろん大切なもだけど、お金やモノだけでは足りない気がしたのです。被災を受けた方々の気持ちを照らすような作品を集めて紹介したいと思っていました。

ーーー「気持」というのは大切ですね。最後にひとことおねがいできますか。

今回は制作して一週間で帰る予定なのですが、本来、僕らはひとつの場所に半年や1年をかけて作品を作るスタイルなんです。昨年は2年かけて愛知で作品を作りました。その前は1年近く金沢で。近々は九州に行く予定もあります。そういった制作場所のひとつとして、札幌、北海道で将来やりたいですね。今回の展示でここに来たのがその足がかりになればと思っています。

★トーチカのさまざまなアート活動はYouTubeで観ることができます。  

Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)  

 


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